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43.元魔王と側近が配下になった?
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「いいえ。わかっていたのです。アスモデウスにもう……かつての力はありません。再生を始めてすぐ、ツノが足りないことに気づきました。それが原因だと思い取り返そうとしましたが」
「あげない」
きっぱり断る琥珀が握る腕に力を入れる。ちょ、そこ……また首絞まってるぞ!!
『琥珀、苦しい』
物理的に首を折られるわけじゃないのに、圧迫されると息苦しさは感じる。もしかしたら、人間だった過去のせいでそう思い込んでるけど、実際は痛みはない可能性もあるけど。この感覚も生きてる感じがして、嫌いじゃない。だが絞められて喜ぶ趣味もなかった。
「二度と取りません。安心してください。アスモデウスは優しい男です。魔王なんて向いてなかったんですよ」
辞める機会があってよかった。苦笑いして愛おしそうに石の棺を撫でる。それからこちらに向き直り、丁寧に謝罪した。
「あなた様を脅したこと、ツノを奪おうとしたことをお詫びいたします。魔王アスモデウスに代わり、側近の私がコハク様の勝ちを宣言いたします」
ベリアルは腹黒い策略をめぐらしたりするが、己の言霊には責任を持つ。強力な魔法を使うがゆえに、言霊を汚す行為はしなかった。きっちり見極める。甘い判断をして、琥珀を傷つけられるのは嫌だった。
『うん、大丈夫だよ』
ベリアルをよく知っている僕が保証したことで、ようやくシェンが表情を和らげた。降参の形を見届けたことで、代替わりが整う。
ほっと一息ついた。
「ところで、ツノは本当に話せるのですか?」
「魔力を込めて聞いてみろ」
シェンが何か話せと促すので、ひとまず彼らしか知らない話を口にしてみた。
『久しぶり、アスモデウスが倒れた日に折れたツノだけど……意識はずっとあったんだ。話しかけても誰も答えてくれなかっただけ。ベリアルが初めてアスモデウスとキスした日が雨だったとか……こんな話で証明になる?』
真っ赤になった様子から、ちゃんと聞き取れたのだと分かった。目を輝かせて続きをせがむシェンには悪いが、これ以上の情報漏洩はしないぞ。
『これ以上は絶対に話さない』
「……ずっとアスモデウスのツノとして、見ていたのですか」
『あ、あぁ、うん』
歯切れの悪い返答がすべてを物語っていた。閨の秘密も、二人っきりの甘い口説き文句も全部聞いてました。ごめんなさい。頭があったらさげていたところだ。居心地悪そうなベリアルが目を伏せた。
「シドウはもう僕の。シェン、お腹すいたから帰る」
自由気ままな子どもの言葉に、くすくすと笑いが漏れた。ベリアルは棺のあるこの場所を離れられない。シェンは人型にも関わらず、太く大きな尻尾を出して揺らした。あっという間にドラゴンの姿に戻る。天井が低いので、足や頭をぶつけてあちこち壊した。瓦礫がばらばらと落ちる。腹の下に琥珀を庇いながら、シェンはにやりと笑った。
「食料もねえし、帰るぞ。ああ、そうだ。元魔王は降参したんだから、コハクの配下だ。危険が及ぶなら連れて行ってやるぞ」
思わぬ申し出に、驚いた顔をするベリアルを石の棺ごと掴んだ古龍は、返事も待たずに空へ飛び立つ。掴まれたベリアルとアスモデウスは、琥珀の配下になったらしい。この世界の理とやらは、まだまだ僕の理解が及ばない存在だった。
「あげない」
きっぱり断る琥珀が握る腕に力を入れる。ちょ、そこ……また首絞まってるぞ!!
『琥珀、苦しい』
物理的に首を折られるわけじゃないのに、圧迫されると息苦しさは感じる。もしかしたら、人間だった過去のせいでそう思い込んでるけど、実際は痛みはない可能性もあるけど。この感覚も生きてる感じがして、嫌いじゃない。だが絞められて喜ぶ趣味もなかった。
「二度と取りません。安心してください。アスモデウスは優しい男です。魔王なんて向いてなかったんですよ」
辞める機会があってよかった。苦笑いして愛おしそうに石の棺を撫でる。それからこちらに向き直り、丁寧に謝罪した。
「あなた様を脅したこと、ツノを奪おうとしたことをお詫びいたします。魔王アスモデウスに代わり、側近の私がコハク様の勝ちを宣言いたします」
ベリアルは腹黒い策略をめぐらしたりするが、己の言霊には責任を持つ。強力な魔法を使うがゆえに、言霊を汚す行為はしなかった。きっちり見極める。甘い判断をして、琥珀を傷つけられるのは嫌だった。
『うん、大丈夫だよ』
ベリアルをよく知っている僕が保証したことで、ようやくシェンが表情を和らげた。降参の形を見届けたことで、代替わりが整う。
ほっと一息ついた。
「ところで、ツノは本当に話せるのですか?」
「魔力を込めて聞いてみろ」
シェンが何か話せと促すので、ひとまず彼らしか知らない話を口にしてみた。
『久しぶり、アスモデウスが倒れた日に折れたツノだけど……意識はずっとあったんだ。話しかけても誰も答えてくれなかっただけ。ベリアルが初めてアスモデウスとキスした日が雨だったとか……こんな話で証明になる?』
真っ赤になった様子から、ちゃんと聞き取れたのだと分かった。目を輝かせて続きをせがむシェンには悪いが、これ以上の情報漏洩はしないぞ。
『これ以上は絶対に話さない』
「……ずっとアスモデウスのツノとして、見ていたのですか」
『あ、あぁ、うん』
歯切れの悪い返答がすべてを物語っていた。閨の秘密も、二人っきりの甘い口説き文句も全部聞いてました。ごめんなさい。頭があったらさげていたところだ。居心地悪そうなベリアルが目を伏せた。
「シドウはもう僕の。シェン、お腹すいたから帰る」
自由気ままな子どもの言葉に、くすくすと笑いが漏れた。ベリアルは棺のあるこの場所を離れられない。シェンは人型にも関わらず、太く大きな尻尾を出して揺らした。あっという間にドラゴンの姿に戻る。天井が低いので、足や頭をぶつけてあちこち壊した。瓦礫がばらばらと落ちる。腹の下に琥珀を庇いながら、シェンはにやりと笑った。
「食料もねえし、帰るぞ。ああ、そうだ。元魔王は降参したんだから、コハクの配下だ。危険が及ぶなら連れて行ってやるぞ」
思わぬ申し出に、驚いた顔をするベリアルを石の棺ごと掴んだ古龍は、返事も待たずに空へ飛び立つ。掴まれたベリアルとアスモデウスは、琥珀の配下になったらしい。この世界の理とやらは、まだまだ僕の理解が及ばない存在だった。
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