33 / 82
33.バレるのは数十年後のはず
しおりを挟む
ツノが偽物だと飛び込んでくるベリアルの夢を見た。そう呟いたのはバルテルだった。意外と気が小さい。
『バレるとしたら数十年後だよ。魔王が復活した後だぞ』
「なぜ言い切れる?」
怪訝そうな彼に説明してやった。まず外見上区別が付いていないなら、そのまま魔王が復活するための繭に放り込む。再生中の魔王にツノが定着し、彼の魔力が満ちて目が覚めるのは50年以上先だった。その頃になって魔力が足りないとわかっても、もう手の打ちようがない。
『次の勇者に負けるのは確実だ。ベリアルが怒って飛び込んでくるとしたら、その頃かな』
魔力不足で勇者に魔王が倒される。そこまで事態が逼迫しないと、ツノのせいだと思わないだろ。もしかしたらツノが魔力の供給源だったと気づかないかも知れない。
『もし、僕の魔力の存在を理解してなかったら、ずっと来ないよ』
魔王の魔力の大半は僕が供給していた。だが魔力の鑑定をすると、魔王と一体化していた僕の魔力は、魔王の魔力に見える。だから僕が魔力の源だと気付きにくい。淡々と説明したら、目を丸くした後……バルテルが溜め息を吐いた。
「お前、本当に悪い奴だな」
『何言ってるんだよ。僕の魔力を無料で使い放題されてたんだぞ? 利用料を請求しないだけでも感謝してもらいたいね』
「そりゃいいや」
げらげら笑い出したバルテルの大声で、琥珀が起きてしまった。目を擦りながら身を起こし、ベッドの上でゆらゆらと左右に揺れる。前は寝起きが良かったが、最近は徐々に寝ぼけるようになった。それだけ環境に馴染んで、ここは安心な場所と理解した証拠だ。
「……お肉」
干し肉をくちゃくちゃと噛むニーの姿に、のそりと起き上がって近づいてくる。朝食はまだだと言ったのに、ニーから少し分けてもらった。そんなに腹が減ってるのか?
「早いが朝食にするか」
バルテルが準備を始める。後ろ姿を見ながら、手を伸ばした琥珀が僕を抱き寄せた。膝の上に置いて、よしよしと撫でられる。気持ち的には擽ったい。
『どうしたんだ? 琥珀』
「僕のシドウだもん」
お気に入りのおもちゃを取られた気になったみたいだ。そうだなと相槌を打って、琥珀の好きにさせた。まあ、逆らう方法もないんだけど。
全身を撫で回して満足したのか、首に下げた空の袋に僕を収納する。ちゃんと上下も確認して、少し先端が出るよう気遣ってくれた。
「大変だ! あの魔族がまた来たぞ!!」
ロルフの叫び声に、バルテルは作りかけのサンドを口に頬張り、半分を琥珀の手に握らせた。僕を服の中に隠した琥珀を抱き上げ、バルテルが一気にツリーハウスから飛び降りる。ぶわっと浮遊感が襲い、その直後駆け出した彼らの振動に耐えた。服の中だと何も見えない。
「何しに来た」
対峙するバルテルの威嚇じみた声に、ベリアルが傲慢さの滲む声を放つ。
「あのツノ、もう1本ありましたよね?」
『バレるとしたら数十年後だよ。魔王が復活した後だぞ』
「なぜ言い切れる?」
怪訝そうな彼に説明してやった。まず外見上区別が付いていないなら、そのまま魔王が復活するための繭に放り込む。再生中の魔王にツノが定着し、彼の魔力が満ちて目が覚めるのは50年以上先だった。その頃になって魔力が足りないとわかっても、もう手の打ちようがない。
『次の勇者に負けるのは確実だ。ベリアルが怒って飛び込んでくるとしたら、その頃かな』
魔力不足で勇者に魔王が倒される。そこまで事態が逼迫しないと、ツノのせいだと思わないだろ。もしかしたらツノが魔力の供給源だったと気づかないかも知れない。
『もし、僕の魔力の存在を理解してなかったら、ずっと来ないよ』
魔王の魔力の大半は僕が供給していた。だが魔力の鑑定をすると、魔王と一体化していた僕の魔力は、魔王の魔力に見える。だから僕が魔力の源だと気付きにくい。淡々と説明したら、目を丸くした後……バルテルが溜め息を吐いた。
「お前、本当に悪い奴だな」
『何言ってるんだよ。僕の魔力を無料で使い放題されてたんだぞ? 利用料を請求しないだけでも感謝してもらいたいね』
「そりゃいいや」
げらげら笑い出したバルテルの大声で、琥珀が起きてしまった。目を擦りながら身を起こし、ベッドの上でゆらゆらと左右に揺れる。前は寝起きが良かったが、最近は徐々に寝ぼけるようになった。それだけ環境に馴染んで、ここは安心な場所と理解した証拠だ。
「……お肉」
干し肉をくちゃくちゃと噛むニーの姿に、のそりと起き上がって近づいてくる。朝食はまだだと言ったのに、ニーから少し分けてもらった。そんなに腹が減ってるのか?
「早いが朝食にするか」
バルテルが準備を始める。後ろ姿を見ながら、手を伸ばした琥珀が僕を抱き寄せた。膝の上に置いて、よしよしと撫でられる。気持ち的には擽ったい。
『どうしたんだ? 琥珀』
「僕のシドウだもん」
お気に入りのおもちゃを取られた気になったみたいだ。そうだなと相槌を打って、琥珀の好きにさせた。まあ、逆らう方法もないんだけど。
全身を撫で回して満足したのか、首に下げた空の袋に僕を収納する。ちゃんと上下も確認して、少し先端が出るよう気遣ってくれた。
「大変だ! あの魔族がまた来たぞ!!」
ロルフの叫び声に、バルテルは作りかけのサンドを口に頬張り、半分を琥珀の手に握らせた。僕を服の中に隠した琥珀を抱き上げ、バルテルが一気にツリーハウスから飛び降りる。ぶわっと浮遊感が襲い、その直後駆け出した彼らの振動に耐えた。服の中だと何も見えない。
「何しに来た」
対峙するバルテルの威嚇じみた声に、ベリアルが傲慢さの滲む声を放つ。
「あのツノ、もう1本ありましたよね?」
0
お気に入りに追加
252
あなたにおすすめの小説
ダンジョンチケット
夏カボチャ
ファンタジー
1話5分のファンタジー。
ある少年の夏休みはふとした瞬間から次元を越える!
大切な者を守りたいそう願う少年
主人公の拓武が自分が誰なのか、そしてどうすればいいのか、力のあるものと無いもの、
その先にある真実を拓武は自分の手で掴むことが出来るのか
読んでいただければとても嬉しいです。((o(^∇^)o))

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

【完結】転生令嬢は推しキャラのために…!!
森ノ宮 明
恋愛
その日、貧乏子爵令嬢のセルディ(十二歳)は不思議な夢を見た。
人が殺される、悲しい悲しい物語。
その物語を映す不思議な絵を前に、涙する女性。
――もし、自分がこの世界に存在出来るのなら、こんな結末には絶対させない!!
そしてセルディは、夢で殺された男と出会う。
推しキャラと出会った事で、前世の記憶を垣間見たセルディは、自身の領地が戦火に巻き込まれる可能性があること、推しキャラがその戦いで死んでしまう事に気づいた。
動揺するセルディを前に、陛下に爵位を返上しようとする父。
セルディは思わず声を出した。
「私が領地を立て直します!!」
こうしてセルディは、推しキャラを助けるために、領地開拓から始めることにした。
※※※
ストーリー重視なので、恋愛要素は王都編まで薄いです
推しキャラは~は、ヒーロー側の話(重複は基本しません)
※マークのある場所は主人公が少し乱暴されるシーンがあります
苦手な方は嫌な予感がしたら読み飛ばして下さい
○小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる