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28.厨二詠唱が流行ってしまった
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僕は琥珀を侮っていたんだろうか。そう思うほど、琥珀の成長は凄まじい。乾いた砂が水を吸うように、アルマの指導を吸収した。真剣すぎて、夜中にこっそり練習しようとした琥珀を何度叱ったか。
ちゃんと寝ないと育たないんだぞ。大きくならないと僕を守れない、そう言い聞かせた。守られるだけのツノでいたくないから、僕もあれこれ挑戦している。まずダダ漏れの心の声を調整する方法を考えた。その結果、魔力に声が乗っているとわかり、魔力を絞る練習を始める。これで聞かせたいことだけ魔力に乗せれば、問題解決だった。
魔法が使えないと思い込んでいた僕だが、アルマに思わぬ指摘をされた。
「魔法は自我があり魔力があれば使えるのよ」
彼女の言葉通りなら、僕は魔法が使えるはず。思い込みが邪魔をしているのだ。ツノが魔法を使う概念がなかった僕の前世の記憶が原因だった。この思い込みが、いくら暗示をかけても消えない。自分で魔法を使おうとした途端、なぜかブロックされてしまう。魔力を変換できない回路内で、ぐるぐると魔力は渦巻いた。
『声は、ちゃんと届けられるんだけど』
やっと調整できるようになった魔力に乗せて、アルマに話しかける。彼女は頷いた後、不思議そうに尋ねた。
「どうして魔力が使えているのに、魔法にならないのかしら。どこかで魔法を否定していない?」
どきっとした。僕の前世に魔法はない。物語の中だけで存在し、概念も曖昧だった。存在しないと思っているから実現しないのか? ならば逆に映画や漫画のイメージを反映したら、現実にならないだろうか。
体を動かして動作で指示する魔法は、手足がないので難しい。魔法少女や杖を振る魔法使いのイメージはダメだった。次に選んだのは、ちょっと厨二臭い詠唱だ。これは声があれば問題ない。
『白き風よ、我が手足となりて花を狩れ』
こんな感じだ。内容が残念なのは、僕の知識量の無さなので仕方ない。普段と明らかに違う口調なら、詠唱っぽい感じが出て魔法専用のイメージが高まると思ったのだが。正直、かなり恥ずかしい。
咲き乱れる花を拾い上げた風が戻ってきて、アルマの前に落とした。彼女のやや皺がある手に落ちた花は、花弁の一部が切れている。力加減が今ひとつか。うーんと唸った僕に、アルマが目を輝かせた。
「成功したじゃない! やっぱり思った通りだわ」
手を叩いて喜んだ彼女の様子に、少し離れた場所で練習していたバルテルと琥珀が駆け戻ってくる。僕の魔法が成功したと聞いて、彼らも喜んでくれた。特に琥珀は大興奮だ。
「やって!」
やってみせろと強請る琥珀に負けて、厨二な詠唱を始める。
『清き水よ、青き流れをここに。漂いて舞え』
空中に現れた水の玉がくるくると踊り、それを追い掛ける琥珀は嬉しそうだった。ほっとする。
「なあ、それカッコいいな。真似するぜ」
え? その後、残念な僕の詠唱より酷い言葉の暴力が、しばらく集落で流行ってしまったのは……僕のせいじゃないよな?
ちゃんと寝ないと育たないんだぞ。大きくならないと僕を守れない、そう言い聞かせた。守られるだけのツノでいたくないから、僕もあれこれ挑戦している。まずダダ漏れの心の声を調整する方法を考えた。その結果、魔力に声が乗っているとわかり、魔力を絞る練習を始める。これで聞かせたいことだけ魔力に乗せれば、問題解決だった。
魔法が使えないと思い込んでいた僕だが、アルマに思わぬ指摘をされた。
「魔法は自我があり魔力があれば使えるのよ」
彼女の言葉通りなら、僕は魔法が使えるはず。思い込みが邪魔をしているのだ。ツノが魔法を使う概念がなかった僕の前世の記憶が原因だった。この思い込みが、いくら暗示をかけても消えない。自分で魔法を使おうとした途端、なぜかブロックされてしまう。魔力を変換できない回路内で、ぐるぐると魔力は渦巻いた。
『声は、ちゃんと届けられるんだけど』
やっと調整できるようになった魔力に乗せて、アルマに話しかける。彼女は頷いた後、不思議そうに尋ねた。
「どうして魔力が使えているのに、魔法にならないのかしら。どこかで魔法を否定していない?」
どきっとした。僕の前世に魔法はない。物語の中だけで存在し、概念も曖昧だった。存在しないと思っているから実現しないのか? ならば逆に映画や漫画のイメージを反映したら、現実にならないだろうか。
体を動かして動作で指示する魔法は、手足がないので難しい。魔法少女や杖を振る魔法使いのイメージはダメだった。次に選んだのは、ちょっと厨二臭い詠唱だ。これは声があれば問題ない。
『白き風よ、我が手足となりて花を狩れ』
こんな感じだ。内容が残念なのは、僕の知識量の無さなので仕方ない。普段と明らかに違う口調なら、詠唱っぽい感じが出て魔法専用のイメージが高まると思ったのだが。正直、かなり恥ずかしい。
咲き乱れる花を拾い上げた風が戻ってきて、アルマの前に落とした。彼女のやや皺がある手に落ちた花は、花弁の一部が切れている。力加減が今ひとつか。うーんと唸った僕に、アルマが目を輝かせた。
「成功したじゃない! やっぱり思った通りだわ」
手を叩いて喜んだ彼女の様子に、少し離れた場所で練習していたバルテルと琥珀が駆け戻ってくる。僕の魔法が成功したと聞いて、彼らも喜んでくれた。特に琥珀は大興奮だ。
「やって!」
やってみせろと強請る琥珀に負けて、厨二な詠唱を始める。
『清き水よ、青き流れをここに。漂いて舞え』
空中に現れた水の玉がくるくると踊り、それを追い掛ける琥珀は嬉しそうだった。ほっとする。
「なあ、それカッコいいな。真似するぜ」
え? その後、残念な僕の詠唱より酷い言葉の暴力が、しばらく集落で流行ってしまったのは……僕のせいじゃないよな?
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