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27.思わぬ反撃で覚悟が決まった
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「渡しなさい。その手を切り落としてもいいんですよ?」
「やだ」
再びの即答で拒否。子どもってのは怖いもの知らずだ。意外だったのはベリアルの反応だった。手を切り落とすくらいで許すのか? お前は肉片にする勢いでミンチ殺人した上で、死体から強奪するタイプだろ。
僕の声が聞こえたアルマが悲鳴を上げる。バルテルは隙を窺い、攻撃するチャンスを狙っていた。森人達も散開し、完全にベリアルと戦う気でいる。勝ち目は薄いんだけどな。
残酷なようだが物語やゲームと違い、初期の弱い主人公がラスボスに勝つ展開はない。どこまでも現実は厳しく、ベリアルが本気を出したら森人の集落は壊滅だろう。ただ盟約があるから手を出さないだけだ。
盟約という単語に反応したのは、数人。青褪めながらもアルマが首を横に振った。この話題は避けることにしよう。僕の思考がダダ漏れなのも、何とかしたいが……まず眼前の敵からだな。
「お前にツノは不要でしょう」
「シドウは大切な家族、渡さない」
人との交流で流暢になった言葉が、こんなところで炸裂してる。やばい、出来るだけ話すな。そう告げても、子どもは聞いていない。感情のままに暴走するのが幼子だった。
「シドウ?」
「シドウ、名前だよ。お前に渡さない」
袋に戻して抱き締める姿に、ベリアルの右手が変化する。剣の形になった。あの手で攻撃されたら……っ! 避けろ、琥珀!! 叫んだ僕の声に反応した琥珀だが、思わぬ方法を取った。ベリアルの足元から熱い蒸気が噴出したのだ。全身を包む熱に飛び退ったベリアルだが、蒸気はさらに襲う。誰が魔法を使っているのか判断できず、闇雲に攻撃しようとするが、蒸気に目をやられた。
「くっ、覚えていなさい」
完全に、負けた奴の捨て台詞だ。目の前にいる琥珀が使った魔法と気づかずに、ベリアルは撤退した。見えないせいか、ふらふらと遠ざかっていく。彼が見えなくなったところで、アルマが駆け寄って抱き締めた。
「よく頑張ったわ、偉い子ね。コハク」
「うん。シドウは家族だから渡さない」
可愛い琥珀の言葉に、僕は危機感を覚えた。このまま無鉄砲に振る舞ったら、この子は孤立してしまう。周囲を巻き込んで破滅するかも知れない。軌道修正を図るとして、今からどのくらいかかる? 琥珀が圧倒的強者なら方法はある。だけど、まだ僕の魔力を使いこなせないのに。魔族は誇り高いから負けたと吹聴することはないが、必ずやり返しにくる。
混乱する僕を宥めるように、琥珀が袋の上から撫でた。その上に手を重ねたのはアルマだ。
「今のコハクは上手に魔力を使えていたわ。だから訓練しましょう。当たり前に使えるように」
大急ぎで魔力の調整を叩き込む。そう言ったアルマが心強かった。僕は手足もなくて、琥珀を支えてやることが出来ない。魔力を供給して会話するだけの存在だった。
「それでも、琥珀にとってあなたは大切な家族でしょう?」
琥珀ではなく僕に語りかけたアルマは、琥珀と手を繋いで歩き出す。集落の人達はほっとした顔で待っていた。無事を喜ぶ顔に嘘は感じられない。バルテルが大きく両手を広げて琥珀を抱き上げ、肩の上に座らせた。
「きゃぁ!」
変な声を出した琥珀が笑いながら、バルテルの頭にしがみ付く。ずんぐりしたドワーフ体型の森人は力持ちだ。エルフのような知恵も持つ、彼らを守らなくちゃな。僕の魔力を使える琥珀なら出来るさ。そう告げて、僕は覚悟を決めた。
「やだ」
再びの即答で拒否。子どもってのは怖いもの知らずだ。意外だったのはベリアルの反応だった。手を切り落とすくらいで許すのか? お前は肉片にする勢いでミンチ殺人した上で、死体から強奪するタイプだろ。
僕の声が聞こえたアルマが悲鳴を上げる。バルテルは隙を窺い、攻撃するチャンスを狙っていた。森人達も散開し、完全にベリアルと戦う気でいる。勝ち目は薄いんだけどな。
残酷なようだが物語やゲームと違い、初期の弱い主人公がラスボスに勝つ展開はない。どこまでも現実は厳しく、ベリアルが本気を出したら森人の集落は壊滅だろう。ただ盟約があるから手を出さないだけだ。
盟約という単語に反応したのは、数人。青褪めながらもアルマが首を横に振った。この話題は避けることにしよう。僕の思考がダダ漏れなのも、何とかしたいが……まず眼前の敵からだな。
「お前にツノは不要でしょう」
「シドウは大切な家族、渡さない」
人との交流で流暢になった言葉が、こんなところで炸裂してる。やばい、出来るだけ話すな。そう告げても、子どもは聞いていない。感情のままに暴走するのが幼子だった。
「シドウ?」
「シドウ、名前だよ。お前に渡さない」
袋に戻して抱き締める姿に、ベリアルの右手が変化する。剣の形になった。あの手で攻撃されたら……っ! 避けろ、琥珀!! 叫んだ僕の声に反応した琥珀だが、思わぬ方法を取った。ベリアルの足元から熱い蒸気が噴出したのだ。全身を包む熱に飛び退ったベリアルだが、蒸気はさらに襲う。誰が魔法を使っているのか判断できず、闇雲に攻撃しようとするが、蒸気に目をやられた。
「くっ、覚えていなさい」
完全に、負けた奴の捨て台詞だ。目の前にいる琥珀が使った魔法と気づかずに、ベリアルは撤退した。見えないせいか、ふらふらと遠ざかっていく。彼が見えなくなったところで、アルマが駆け寄って抱き締めた。
「よく頑張ったわ、偉い子ね。コハク」
「うん。シドウは家族だから渡さない」
可愛い琥珀の言葉に、僕は危機感を覚えた。このまま無鉄砲に振る舞ったら、この子は孤立してしまう。周囲を巻き込んで破滅するかも知れない。軌道修正を図るとして、今からどのくらいかかる? 琥珀が圧倒的強者なら方法はある。だけど、まだ僕の魔力を使いこなせないのに。魔族は誇り高いから負けたと吹聴することはないが、必ずやり返しにくる。
混乱する僕を宥めるように、琥珀が袋の上から撫でた。その上に手を重ねたのはアルマだ。
「今のコハクは上手に魔力を使えていたわ。だから訓練しましょう。当たり前に使えるように」
大急ぎで魔力の調整を叩き込む。そう言ったアルマが心強かった。僕は手足もなくて、琥珀を支えてやることが出来ない。魔力を供給して会話するだけの存在だった。
「それでも、琥珀にとってあなたは大切な家族でしょう?」
琥珀ではなく僕に語りかけたアルマは、琥珀と手を繋いで歩き出す。集落の人達はほっとした顔で待っていた。無事を喜ぶ顔に嘘は感じられない。バルテルが大きく両手を広げて琥珀を抱き上げ、肩の上に座らせた。
「きゃぁ!」
変な声を出した琥珀が笑いながら、バルテルの頭にしがみ付く。ずんぐりしたドワーフ体型の森人は力持ちだ。エルフのような知恵も持つ、彼らを守らなくちゃな。僕の魔力を使える琥珀なら出来るさ。そう告げて、僕は覚悟を決めた。
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