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25.思わぬ魔族の登場で警戒心MAX
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楽しそうに魔法を覚える琥珀は、徐々に集落に溶け込んでいく。無邪気に笑い、子どもが少ない森人に可愛がられた。当初は警戒心の強い猫そのものだったが、今では人懐こく寄っていく。すっかり飼い猫だ。これはニーや子猫にも言えるけど。
「シドウ、僕と出掛けよう」
人との交流が増えることで、言葉も自然と達者になった。アルマが教えてくれたので読み書きも可能だ。今の琥珀を出会った頃の僕が見たら、別人だと思うだろうな。笑顔が増えて、とても楽しそうに毎日出かけていく。当然だが、僕を袋に入れて首から下げて。
「アルマのところへ行く」
わかった。昨日覚えた複合魔法に夢中なのだ。お湯を作る技術として認識する琥珀には悪いが、あれは十分過ぎるほど攻撃手段として有効だ。水の方が強ければただのお湯、火を強く調整したら蒸気が出来る。高温の蒸気を突然足元から噴き上げてみろ。大火傷だ。
アルマは危険性を理解していたため、最初に結界を教え込んだ。毎日毎日根気強く繰り返したおかげで、琥珀は薄い結界を日常的に纏っている。そこらの魔獣が突進したところで、弾き返せる程度の強度はあった。ようやく合格を貰って、複合魔法に入ったのが嬉しくて仕方ないらしい。
うきうきしながら足取りも軽く向かう先で、奇妙な気配を感じる。強大な魔力を持つ何かがいる。森人達の魔力を上回る存在だった。琥珀に注意するよう促し、慎重に集落へ近づく。バルテルのツリーハウスが離れていたため、気づけなかった。
裏から回り込んで、そうそう。ゆっくり僕だけ上に出せるか? ツノなので琥珀が顔を出すより目立たないはずだ。そう考えた僕は潜望鏡のような役目を果たすことにした。大きな茂みに潜った琥珀が手を突き出す。
ちょっと手が見えてる。もう少し下、あと左に回して。あ、そっちは逆。あれこれ指示した結果、ようやく人が集まる広場の様子が見えた。宙に浮いて森人を見下ろしているのは、魔族だ。しかも見覚えのある顔だった。あれって、魔王の側近だ。
こないだ魔王が倒された時、僕を忘れて首を回収した奴。たしか名前は……
「我が名はベリアル、偉大なる魔王アスモデウス陛下の右腕だ」
そうそう、ベリアルだよ。名前を聞きながら記憶と照合していく。たしか口先三寸で宰相みたいな役目を果たしていた。あいつ、何しに来たんだ?
「魔王は勇者に負けたと聞いたが何の用だ」
ふんぞり返って言い返すのは、バルテルだ。村長がいない森人の中で、まとめ役をしているらしい。いっそ役職を作ったらどうだと提案したら、それは上下が出来るからいけないと反対された。役職が出来ると世襲制や既得権益の概念が発生するからダメなのだと。精神的に進んだ社会かも知れない。
一際がっちりした体格のバルテルが表に立ち、斜め後ろに魔法が得意なアルマが控える。彼女は何時でも魔法が発動できるよう準備していた。森人は好戦的な種族ではないが、何度も魔族にだまし討ちされた経験があると聞いている。彼女に請われて、魔族の情報を流したが正解だった。
詐欺師のように口先がうまい男に、最初から疑いの目を向けていくスタイルは間違ってない。勇者達は問答無用で、切りかかってくる。あの姿勢は見ようによっては失礼だが、魔族相手と限定すれば正しい対処方法だった。
人の欲望を掻き立て、仲間同士を疑心暗鬼の渦に巻き込むのが魔族お得意の手法だ。一度かかると抜け出すのは容易ではなかった。僕という情報源がいた所為か、森人達の警戒心は高い。緊迫した空気が張り詰めていくのが手に取るように伝わった。
「シドウ、僕と出掛けよう」
人との交流が増えることで、言葉も自然と達者になった。アルマが教えてくれたので読み書きも可能だ。今の琥珀を出会った頃の僕が見たら、別人だと思うだろうな。笑顔が増えて、とても楽しそうに毎日出かけていく。当然だが、僕を袋に入れて首から下げて。
「アルマのところへ行く」
わかった。昨日覚えた複合魔法に夢中なのだ。お湯を作る技術として認識する琥珀には悪いが、あれは十分過ぎるほど攻撃手段として有効だ。水の方が強ければただのお湯、火を強く調整したら蒸気が出来る。高温の蒸気を突然足元から噴き上げてみろ。大火傷だ。
アルマは危険性を理解していたため、最初に結界を教え込んだ。毎日毎日根気強く繰り返したおかげで、琥珀は薄い結界を日常的に纏っている。そこらの魔獣が突進したところで、弾き返せる程度の強度はあった。ようやく合格を貰って、複合魔法に入ったのが嬉しくて仕方ないらしい。
うきうきしながら足取りも軽く向かう先で、奇妙な気配を感じる。強大な魔力を持つ何かがいる。森人達の魔力を上回る存在だった。琥珀に注意するよう促し、慎重に集落へ近づく。バルテルのツリーハウスが離れていたため、気づけなかった。
裏から回り込んで、そうそう。ゆっくり僕だけ上に出せるか? ツノなので琥珀が顔を出すより目立たないはずだ。そう考えた僕は潜望鏡のような役目を果たすことにした。大きな茂みに潜った琥珀が手を突き出す。
ちょっと手が見えてる。もう少し下、あと左に回して。あ、そっちは逆。あれこれ指示した結果、ようやく人が集まる広場の様子が見えた。宙に浮いて森人を見下ろしているのは、魔族だ。しかも見覚えのある顔だった。あれって、魔王の側近だ。
こないだ魔王が倒された時、僕を忘れて首を回収した奴。たしか名前は……
「我が名はベリアル、偉大なる魔王アスモデウス陛下の右腕だ」
そうそう、ベリアルだよ。名前を聞きながら記憶と照合していく。たしか口先三寸で宰相みたいな役目を果たしていた。あいつ、何しに来たんだ?
「魔王は勇者に負けたと聞いたが何の用だ」
ふんぞり返って言い返すのは、バルテルだ。村長がいない森人の中で、まとめ役をしているらしい。いっそ役職を作ったらどうだと提案したら、それは上下が出来るからいけないと反対された。役職が出来ると世襲制や既得権益の概念が発生するからダメなのだと。精神的に進んだ社会かも知れない。
一際がっちりした体格のバルテルが表に立ち、斜め後ろに魔法が得意なアルマが控える。彼女は何時でも魔法が発動できるよう準備していた。森人は好戦的な種族ではないが、何度も魔族にだまし討ちされた経験があると聞いている。彼女に請われて、魔族の情報を流したが正解だった。
詐欺師のように口先がうまい男に、最初から疑いの目を向けていくスタイルは間違ってない。勇者達は問答無用で、切りかかってくる。あの姿勢は見ようによっては失礼だが、魔族相手と限定すれば正しい対処方法だった。
人の欲望を掻き立て、仲間同士を疑心暗鬼の渦に巻き込むのが魔族お得意の手法だ。一度かかると抜け出すのは容易ではなかった。僕という情報源がいた所為か、森人達の警戒心は高い。緊迫した空気が張り詰めていくのが手に取るように伝わった。
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