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21.石鹸作りは一大プロジェクト
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確か、油と水と苛性ソーダだっけ? いや、ラノベでは灰汁を使った原始的なのを読んだ。そっちの方が近いな。出来るだけアルコール度数の高い強い酒と、いい香りの油を用意するよう頼んだ。
灰汁は灰を入れて熱してから冷ました気がする。詳しいことはよく覚えてないので、そこらの雑草を燃やして灰を作ってもらい、熱湯に入れて濾した。途中で魔法を掛けてたが、よくわからん。バルテルは手際よく言われた作業を終えた。
今並んでいるのは、右から火酒、灰汁、ココナッツ油だ。ココナッツ生えてるのかよ、この森は南国の気候か? そういや、マンゴーみたいな果物食べてたような気もする。
「ココナッツ? これは油を絞るだけだな」
他は捨てると聞いて、ココナッツのお菓子が好きだった僕としては許せない。食べられるのだと力説し、内側の白い部分を乾燥させるよう頼んだ。廃棄予定だから、割って乾燥させるのは問題ないらしい。絶対に食えるって証明してやる。
ひとまず石鹸だ。混ぜる配合具合が分からない。PHを間違うと肌が焼けるし……うーん。唸る僕を握る琥珀が「えい」と僕を地面に突き立てた。よく見える角度だが、逆さまだぞ。指摘したら穴を開けて刺し直してくれた。悪いな、手間をかけて。
「てつだう」
琥珀がやる気を見せたので、僕も記憶を頼りにあれこれ指示を出した。バルテルも隣で作業を始め……昼食も忘れて没頭した結果。夕方にようやくそれっぽい品物が出来た。緊張した面持ちで試作品を数種類重ねようとするバルテルに、番号を刻むようお願いする。
同じような色してるから、試しに泡立ててる最中に、どれがどの配合か分からなくなる。ついでに配合のメモも頼んだ。琥珀がぷくりと頬を膨らませる。手があったら、ぷすっと指先で突いてやりたい。
どうしたんだ? 具合でも悪いのか、腹が減ったか? 心配で問いかけた途端、琥珀がへにゃりと笑う。くしゃりと顔を崩して嬉しそうだった。思わぬ言葉が向けられる。
「しどう、こはく、なかよし」
ああ、なるほど。僕が石鹸作りでバルテルにばかり指示を出すので、自分が疎外された気になったのか。可愛いな。混ぜる作業を手伝ってもらったが、メモや番号を刻む作業はバルテルに頼んだ。文字が書けるようになったら、琥珀にお願いすることに決めた。
「もじ、かける。なる」
頑張れ! 僕も応援するし、違ってたら指摘するくらい出来るぞ。日本とは違う文字だけど、魔王の頭上で見てきたから読める。手がないから書けないのは……仕方ないか。
「出来たぞ」
バルテルの声にメモを確認して、石鹸の番号も隣に記載してもらった。これで準備は万全だ。日暮れはまだだが、だいぶ傾いた日差しの中でバルテルと琥珀が手を繋いだ。空いた左手で僕を握る琥珀は、嬉しそうに歩く。幸せな家族の図だが、風呂に着くまでに僕は酔った。振り回すのは控えてもらおう。
風呂に湯を張り、ひとつずつ実験していく。バルテルが泡立てては僕の判断を待つ。5段階評価で優秀と判断された石鹸は2つだった。残りは泡立ちが悪かったり、ベトベトするそうだ。両方をじっくり見比べ、くんくんと匂いを確認した琥珀は、左側の石鹸を手に取った。
「こっち」
現在絶好調の幸運をもつ琥珀の意見をとり、左側の3が刻まれた石鹸に決まる。ヘチマはまだ発見できてないので、麻布で泡立ててもらった。固め方が甘いのか、溶ける早さがやばい。これはあれだ、風呂に置きっぱなしにしたら明日にはスライムだな。
呟いた僕に、バルテルが「スライムが石鹸になるのか?」と尋ねる。それはない。きっぱり否定しておいた。
灰汁は灰を入れて熱してから冷ました気がする。詳しいことはよく覚えてないので、そこらの雑草を燃やして灰を作ってもらい、熱湯に入れて濾した。途中で魔法を掛けてたが、よくわからん。バルテルは手際よく言われた作業を終えた。
今並んでいるのは、右から火酒、灰汁、ココナッツ油だ。ココナッツ生えてるのかよ、この森は南国の気候か? そういや、マンゴーみたいな果物食べてたような気もする。
「ココナッツ? これは油を絞るだけだな」
他は捨てると聞いて、ココナッツのお菓子が好きだった僕としては許せない。食べられるのだと力説し、内側の白い部分を乾燥させるよう頼んだ。廃棄予定だから、割って乾燥させるのは問題ないらしい。絶対に食えるって証明してやる。
ひとまず石鹸だ。混ぜる配合具合が分からない。PHを間違うと肌が焼けるし……うーん。唸る僕を握る琥珀が「えい」と僕を地面に突き立てた。よく見える角度だが、逆さまだぞ。指摘したら穴を開けて刺し直してくれた。悪いな、手間をかけて。
「てつだう」
琥珀がやる気を見せたので、僕も記憶を頼りにあれこれ指示を出した。バルテルも隣で作業を始め……昼食も忘れて没頭した結果。夕方にようやくそれっぽい品物が出来た。緊張した面持ちで試作品を数種類重ねようとするバルテルに、番号を刻むようお願いする。
同じような色してるから、試しに泡立ててる最中に、どれがどの配合か分からなくなる。ついでに配合のメモも頼んだ。琥珀がぷくりと頬を膨らませる。手があったら、ぷすっと指先で突いてやりたい。
どうしたんだ? 具合でも悪いのか、腹が減ったか? 心配で問いかけた途端、琥珀がへにゃりと笑う。くしゃりと顔を崩して嬉しそうだった。思わぬ言葉が向けられる。
「しどう、こはく、なかよし」
ああ、なるほど。僕が石鹸作りでバルテルにばかり指示を出すので、自分が疎外された気になったのか。可愛いな。混ぜる作業を手伝ってもらったが、メモや番号を刻む作業はバルテルに頼んだ。文字が書けるようになったら、琥珀にお願いすることに決めた。
「もじ、かける。なる」
頑張れ! 僕も応援するし、違ってたら指摘するくらい出来るぞ。日本とは違う文字だけど、魔王の頭上で見てきたから読める。手がないから書けないのは……仕方ないか。
「出来たぞ」
バルテルの声にメモを確認して、石鹸の番号も隣に記載してもらった。これで準備は万全だ。日暮れはまだだが、だいぶ傾いた日差しの中でバルテルと琥珀が手を繋いだ。空いた左手で僕を握る琥珀は、嬉しそうに歩く。幸せな家族の図だが、風呂に着くまでに僕は酔った。振り回すのは控えてもらおう。
風呂に湯を張り、ひとつずつ実験していく。バルテルが泡立てては僕の判断を待つ。5段階評価で優秀と判断された石鹸は2つだった。残りは泡立ちが悪かったり、ベトベトするそうだ。両方をじっくり見比べ、くんくんと匂いを確認した琥珀は、左側の石鹸を手に取った。
「こっち」
現在絶好調の幸運をもつ琥珀の意見をとり、左側の3が刻まれた石鹸に決まる。ヘチマはまだ発見できてないので、麻布で泡立ててもらった。固め方が甘いのか、溶ける早さがやばい。これはあれだ、風呂に置きっぱなしにしたら明日にはスライムだな。
呟いた僕に、バルテルが「スライムが石鹸になるのか?」と尋ねる。それはない。きっぱり否定しておいた。
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