8 / 82
8.必須アイテムの靴がない
しおりを挟む
街さえ出てしまえば、外見を気にする必要はない。母猫ごと子猫達を抱き締めて、琥珀は走った。時々顔を顰めるのは、足の裏が痛いのだと思う。靴を履いていない。代わりになる袋もなかった。
森に入ったら、棘のある植物に注意するよう教えないと。あと日本では栗みたいに棘のある殻や実もあるし。あれこれ考える僕をしっかりと握り、琥珀はずんずんと歩いた。この年齢にしては頑張った。途中で疲れて座り込んだけど。
にゃーと鳴いた母猫ニーが食事を探しに行った。見送った先で、小さなネズミを捕まえている。狩りの上手な母猫で助かった。流水の音に気づいて、川を探すよう頼んだ。見つけた川は人里から離れているため、背の高い草が茂っている。逆に姿が隠れてちょうどいいかも知れない。
川岸で休もう。水も飲めるし、足を冷やして洗った方がいい。傷があれば、早めに治療しないと歩けなくなる。伝えた言葉に時々首を傾げるが、川に移動しろと端的に話したら頷いた。理由づけは後で良さそうだな。まず短い命令から入ろう。
川を覆うように広がる草を抜けると、その先は狭い河原があった。角の丸い石がごろごろ転がっている。大きさは小さいので、問題ない。どうやら穏やかな川のようだ。琥珀に掲げてもらい、川の先が森に繋がっていることを確認した。
「あしあらう、きずをみつける、おしえる」
言われた内容を繰り返しながら、琥珀は水辺に座り込んだ。ひたひたと尻まで濡れてるが、全く気にしない。冷たくないのか? 足を揺らして覗き込み、また揺らす。
洗い方を丁寧に説明した。スポンジやタオルの代わりがないので、両手で丁寧に擦って洗うように指導する。頷いた琥珀の隣に、ニーが獲物を積み上げた。得意げに胸を張る母猫は、きちんと獲物にトドメを差していた。狩りの練習は、この子猫にはまだ早いらしい。
「おかあさん、ごはんあらう?」
ニーは自分の分をさっさと取り分け、残りを琥珀の前に押しやった。ネズミが2匹とピンクのカエルだ。叩いて仕留めたのか、カエルは傷だらけだった。毒カエルだと思うが……琥珀は嬉しそうに口に入れる。
うまいのか? 尋ねると頷く。甘いと言われても、まあ僕は食べられないけどね。口がなくて良かったと思ったのは、今回が初めてだよ。琥珀といるとハラハラするけど、子育てっぽいのも悪くない。ようやく異世界転生っぽくなった。魔王の頭上でじっとしてるより、ずっと建設的だ。
川沿いを歩くように教えると、不思議そうな顔をした。道を歩くより森に近いし、ほぼ直線だ。何より飲み水に困らない上、川辺には小動物がたくさんいた。食料に困らない。ゆっくり教えると、頷いた。足元の丸い石も痛くないから、歩きづらくても我慢してもらおう。
僕の予想通り、琥珀の足の裏は傷だらけだった。消毒に使える薬草を見つけて教えたが、結局、このまま歩くことになる。靴がないのは致命的だ。早く森人に保護してもらわないといけない。それまで僕の魔力を消費してもらおう。どうせ歩かないんだから、疲労も関係なかった。
魔法で足を痛くないようにして。願えば痛くなくなる。僕が想像したのは結界による靴だった。しかし琥珀は言われた通り素直に願い、傷を癒してしまう。え? この子、万能型の魔法使いになれるんじゃない?
森に入ったら、棘のある植物に注意するよう教えないと。あと日本では栗みたいに棘のある殻や実もあるし。あれこれ考える僕をしっかりと握り、琥珀はずんずんと歩いた。この年齢にしては頑張った。途中で疲れて座り込んだけど。
にゃーと鳴いた母猫ニーが食事を探しに行った。見送った先で、小さなネズミを捕まえている。狩りの上手な母猫で助かった。流水の音に気づいて、川を探すよう頼んだ。見つけた川は人里から離れているため、背の高い草が茂っている。逆に姿が隠れてちょうどいいかも知れない。
川岸で休もう。水も飲めるし、足を冷やして洗った方がいい。傷があれば、早めに治療しないと歩けなくなる。伝えた言葉に時々首を傾げるが、川に移動しろと端的に話したら頷いた。理由づけは後で良さそうだな。まず短い命令から入ろう。
川を覆うように広がる草を抜けると、その先は狭い河原があった。角の丸い石がごろごろ転がっている。大きさは小さいので、問題ない。どうやら穏やかな川のようだ。琥珀に掲げてもらい、川の先が森に繋がっていることを確認した。
「あしあらう、きずをみつける、おしえる」
言われた内容を繰り返しながら、琥珀は水辺に座り込んだ。ひたひたと尻まで濡れてるが、全く気にしない。冷たくないのか? 足を揺らして覗き込み、また揺らす。
洗い方を丁寧に説明した。スポンジやタオルの代わりがないので、両手で丁寧に擦って洗うように指導する。頷いた琥珀の隣に、ニーが獲物を積み上げた。得意げに胸を張る母猫は、きちんと獲物にトドメを差していた。狩りの練習は、この子猫にはまだ早いらしい。
「おかあさん、ごはんあらう?」
ニーは自分の分をさっさと取り分け、残りを琥珀の前に押しやった。ネズミが2匹とピンクのカエルだ。叩いて仕留めたのか、カエルは傷だらけだった。毒カエルだと思うが……琥珀は嬉しそうに口に入れる。
うまいのか? 尋ねると頷く。甘いと言われても、まあ僕は食べられないけどね。口がなくて良かったと思ったのは、今回が初めてだよ。琥珀といるとハラハラするけど、子育てっぽいのも悪くない。ようやく異世界転生っぽくなった。魔王の頭上でじっとしてるより、ずっと建設的だ。
川沿いを歩くように教えると、不思議そうな顔をした。道を歩くより森に近いし、ほぼ直線だ。何より飲み水に困らない上、川辺には小動物がたくさんいた。食料に困らない。ゆっくり教えると、頷いた。足元の丸い石も痛くないから、歩きづらくても我慢してもらおう。
僕の予想通り、琥珀の足の裏は傷だらけだった。消毒に使える薬草を見つけて教えたが、結局、このまま歩くことになる。靴がないのは致命的だ。早く森人に保護してもらわないといけない。それまで僕の魔力を消費してもらおう。どうせ歩かないんだから、疲労も関係なかった。
魔法で足を痛くないようにして。願えば痛くなくなる。僕が想像したのは結界による靴だった。しかし琥珀は言われた通り素直に願い、傷を癒してしまう。え? この子、万能型の魔法使いになれるんじゃない?
10
お気に入りに追加
252
あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。
彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました!
裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。
※2019年10月23日 完結

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?

【完結】転生令嬢は推しキャラのために…!!
森ノ宮 明
恋愛
その日、貧乏子爵令嬢のセルディ(十二歳)は不思議な夢を見た。
人が殺される、悲しい悲しい物語。
その物語を映す不思議な絵を前に、涙する女性。
――もし、自分がこの世界に存在出来るのなら、こんな結末には絶対させない!!
そしてセルディは、夢で殺された男と出会う。
推しキャラと出会った事で、前世の記憶を垣間見たセルディは、自身の領地が戦火に巻き込まれる可能性があること、推しキャラがその戦いで死んでしまう事に気づいた。
動揺するセルディを前に、陛下に爵位を返上しようとする父。
セルディは思わず声を出した。
「私が領地を立て直します!!」
こうしてセルディは、推しキャラを助けるために、領地開拓から始めることにした。
※※※
ストーリー重視なので、恋愛要素は王都編まで薄いです
推しキャラは~は、ヒーロー側の話(重複は基本しません)
※マークのある場所は主人公が少し乱暴されるシーンがあります
苦手な方は嫌な予感がしたら読み飛ばして下さい
○小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる