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100章 幸せになろう
1385. 初夜は一回だけなので!
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各テーブルで歓迎され、気づけばリリスの頬が真っ赤だった。首や耳も赤いことから、どこかでジュースに混じってワインでも口にしたのだろう。腕を絡めると表現するより、しがみ付いて寄り掛かる彼女はうっとりと目を閉じている。
「……どこで飲んだんだ?」
全然気づかなかった。大きな溜め息を吐いて抱き上げると、飲酒で体温が上がった腕がするりと首に絡みついた。ぐっと身を寄せられ、柔らかな胸と温かな吐息が押し付けられる。夜空を仰いで星を数え始める魔王様の魔王様が、やや反応しかけていた。
「陛下、そろそろ下がられてはいかがでしょうか」
「ルシファー様。新郎新婦が長居する場ではありません」
花嫁花婿の披露が終われば、あとは親族や各種族が酒を振舞って騒ぐだけ。最後まで宴に付きあっては、いくら体があっても足りない。デュラハンやエルフはすでに潰れた者が出始め、ドワーフや竜は酒樽に首を突っ込んで盛り上がっていた。
この状況で、主役はもはや視界に入っていない。抜け出ても誰も気づかないだろう。そもそも今夜は初夜であり、床入り前に泥酔する事態になったら大変だった。ルシファーのように飲酒しながら中和する者は珍しいのだ。乾杯に付きあうのもそこそこに、大公女達はすでに引き上げさせた。
残るはルシファーとリリスのみ。早く魔王城へ戻さなくては、朝まで宴に付き合いそうだった。魔王の人の好さは長所だが、もし初夜を宴で明かしたら……後の夫婦生活にとんでもない遺恨を残すはずだ。既婚経験18回のアスタロトは、身をもって妻の恐ろしさを知っていた。
6人目の妻の時、うっかり朝まで宴に付き合って夜を明かした。自室に戻った明け方、魔王と対峙するより恐ろしい妻の微笑みに背筋が凍り付いたことを思い出す。彼女はいつまでも恨みを忘れず、ことあるごとに持ち出された。経験者として、あの恐怖は伝えておきたい。
「もし初夜に失敗すると、一生言われますよ」
どちらの寿命もとんでもなく長いだろう。共に暮らす長い人生の間、ずっと尻に敷かれるのもどうかと……いや、それに関してはすでに手遅れだったか。アスタロトは苦笑いして主君の背を押した。これ以上は野暮だろう。
「わかった。ありがとう、あとは任せる」
「はい」
「わかっています」
アスタロトとベールがゆったり頭を下げる。ベルゼビュートが気づいて駆け付け、酔ったリリスの額に手を当てた。ルシファーが苦手とする酒精の分離を行ったらしい。リリスは大きな金の瞳を見開いた。
「ベルゼ姉さん、ありがとう。すっきりしたわ」
「花嫁が酔うなんてダメよ。愛してもらいなさい」
微笑んでリリスの頬を撫でた。後ろから覗き込んだルキフェルは、肩を竦める。ベルゼビュートに先を越されて、分離魔法陣を指先から消した。
「おやすみ」
いろいろな思いを込めたルキフェルの挨拶に、リリスはふふっと笑った。兄のように一緒にいて、共に成長した友人だ。お先に、なんて挨拶は失礼かしらね。口の中に飲み込んだ言葉の代わりに「おやすみなさい」と4人に微笑んだ。
ルシファーは普段より足早に進む。首に回した手に力を込めて身をすり寄せ、ルシファーの首筋に唇を押し当てた。酔った勢いで襲っちゃおうと思ったけど、そんなの勿体ないわ。ちゅっと音を立てたキスに、ルシファーの足が止まった。
直後、ぽんと景色が変わる。転移で自室まで戻ったルシファーは、普段と違う飾り付けの寝室に目を見開いた。彼らは知らなかったが、大公女達が飾り物を用意していた。それをアデーレ達侍女や侍従が、宴の間に飾り付けたのだ。
薔薇の散る柔らかな絨毯を踏みしめ、抱き締めた愛しいリリスをベッドに横たえる。白いシーツには赤と白の薔薇が散らされ、天蓋は淡いピンクに替えられていた。
「ルシファー、愛してるわ。ずっと一緒よ」
リリスの声が紡ぐ愛を受け取り、ルシファーは頬を緩めた。
*********************
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『愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む』
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェランディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
「……どこで飲んだんだ?」
全然気づかなかった。大きな溜め息を吐いて抱き上げると、飲酒で体温が上がった腕がするりと首に絡みついた。ぐっと身を寄せられ、柔らかな胸と温かな吐息が押し付けられる。夜空を仰いで星を数え始める魔王様の魔王様が、やや反応しかけていた。
「陛下、そろそろ下がられてはいかがでしょうか」
「ルシファー様。新郎新婦が長居する場ではありません」
花嫁花婿の披露が終われば、あとは親族や各種族が酒を振舞って騒ぐだけ。最後まで宴に付きあっては、いくら体があっても足りない。デュラハンやエルフはすでに潰れた者が出始め、ドワーフや竜は酒樽に首を突っ込んで盛り上がっていた。
この状況で、主役はもはや視界に入っていない。抜け出ても誰も気づかないだろう。そもそも今夜は初夜であり、床入り前に泥酔する事態になったら大変だった。ルシファーのように飲酒しながら中和する者は珍しいのだ。乾杯に付きあうのもそこそこに、大公女達はすでに引き上げさせた。
残るはルシファーとリリスのみ。早く魔王城へ戻さなくては、朝まで宴に付き合いそうだった。魔王の人の好さは長所だが、もし初夜を宴で明かしたら……後の夫婦生活にとんでもない遺恨を残すはずだ。既婚経験18回のアスタロトは、身をもって妻の恐ろしさを知っていた。
6人目の妻の時、うっかり朝まで宴に付き合って夜を明かした。自室に戻った明け方、魔王と対峙するより恐ろしい妻の微笑みに背筋が凍り付いたことを思い出す。彼女はいつまでも恨みを忘れず、ことあるごとに持ち出された。経験者として、あの恐怖は伝えておきたい。
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「わかった。ありがとう、あとは任せる」
「はい」
「わかっています」
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微笑んでリリスの頬を撫でた。後ろから覗き込んだルキフェルは、肩を竦める。ベルゼビュートに先を越されて、分離魔法陣を指先から消した。
「おやすみ」
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ルシファーは普段より足早に進む。首に回した手に力を込めて身をすり寄せ、ルシファーの首筋に唇を押し当てた。酔った勢いで襲っちゃおうと思ったけど、そんなの勿体ないわ。ちゅっと音を立てたキスに、ルシファーの足が止まった。
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薔薇の散る柔らかな絨毯を踏みしめ、抱き締めた愛しいリリスをベッドに横たえる。白いシーツには赤と白の薔薇が散らされ、天蓋は淡いピンクに替えられていた。
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