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100章 幸せになろう

1374. 生涯変わらぬ愛を誓う

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 魔王と魔王妃の後ろから、大公女達がそれぞれの結婚相手と腕を組んで現れる。さらに歓喜の声が大きくなった。

 本来は公式衣装のデザインを借りたカラードレスにする予定だった彼女達も、リリスの我が侭で白いドレスに変更される。結婚衣装は白がいいと我が侭を振りかざした形だが、後ろで大公女達が驚きながらも嬉しそうに微笑んだ姿に、大公達も変更に許可を出した。

 一生に一度の式なのだ。白がいいなら同じ色でも構わない。リリスだけでなく、彼女達も主役であることに変わりはないのだから。しかし途中まで製作していたため、ドレスはそのまま仕上げることとなった。今夜の宴には、彼女達のイメージカラーのドレスを身に纏う。

 同様に前夜祭に着用予定だったリリスの黒いドレスも、今夜の宴用に変更されていた。宝石をちりばめた輝くドレスは、夜の月光で映えるだろう。少女達が自分で決めたことを、魔王も大公も尊重した。そこにアスタロトの「結婚式の主役は女性だそうです」の忠告があった事実は、誰も触れないが。

 彼女らのドレスやヴェールには色が織り込まれており、完全な純白ではない。色違いでお揃いのブローチをつけた5人は、口元を笑みに緩めた。まさに晴れ舞台だ。彼女達の過去の努力と、これからの活躍を祝す場に相応しい。

 グレーの式典用衣装に身を包んだ婚約者達は、美しい伴侶に見惚れていた。婚約者の色を貰って作ったブローチは、デザインを彼女達の属性に合わせたオーダーメイドだ。

 シトリーは翼で赤い宝石を包み、ルーシアは淡い水色の石を水飛沫を模した爪に嵌めた。黒曜石を磨いて銀の葉で包む形のルーサルカ、レライエは淡い翡翠を金の炎を思わせる飾りで覆う。ずっと友人でいる証に、そう願ってお揃いで作ったブローチだった。

 リリスは乳白色の月石を楕円にカットし、星形に見えるよう周囲を黄金で囲った。ブローチ自体は楕円だが、表面に金色の縁が覆いかぶさり、石が見えているのは星の部分だけという風変わりなデザインだ。誇らしげに胸に飾ったリリスは、空の両手をルシファーの腕に絡める。

 結婚式を宣言するアスタロトの声が響き、立体映像から直接声が届いたことに人々が喜ぶ。聞き逃さなくて済むし、後で見直す時も便利だった。映像に釘付けになる人々の中に、立体映像をちらほら見ながらも魔王城を向く者が現れた。

 リアルタイムで魔王夫妻や大公女夫妻と向き合っておきたい。魔族最大のイベントを、肌で直接感じたいと願った。立体映像は後でも確認できると知っているから、余計にそう考えたのだろう。

「魔王たるルシファーは、養い子である魔の森の娘リリスを妻に迎える。我が隣に立つ魔王妃へ、生涯変わらぬ愛と誠実さを約束しよう。愛している、リリス」

「私は、魔の森である母が愛した魔王ルシファーの妻となり、この魔力尽きるまで愛することを誓います。嬉しいわ、ルシファー。私も愛してる」

 互いに見つめ合って誓う二人に、指輪を手にしたアデーレが近づいた。立派なリングピローは、徹夜で仕上げた傑作だ。指輪を用意したルシファーだが、手持ちの宝石箱をそのまま使うつもりだったらしい。小説を読んでリングピローの存在を知っていたアデーレが叱りつけ、昨夜必死で縫い上げた。

 可愛いピンクのハート型である。ちなみに徹夜になった理由は、他の4人分も仕上げたからだ。もっと時間があれば、アラクネ達へ外注する手もあった。だが前夜に外注するほどアデーレも鬼ではない。愛娘であるルーサルカの分も作ることだし、大切に育てたリリスやその友人達にプレゼント出来ることは光栄と思っていた。

 公爵夫人として着飾ったアデーレは髪を品よく結い上げ、夫に貰った簪を数本挿している。真珠や柘榴石を飾った簪に合わせて、耳飾りや首飾りも真珠と柘榴石で統一した徹底ぶりだ。ドレスはワインレッドに金の刺繍が施されている。夫の色を纏う辺り、夫婦仲はいいらしい。

「アデーレ、ありがとう」

 ピローから小さい方の指輪を受け取り、ルシファーは片膝を突いた。
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