1,362 / 1,397
99章 変化し続ける世界の中で
1357. 赤裸々すぎる情報交換――あと6日
しおりを挟む
ドレスの最終調整を終えた少女達は盛り上がっていた。というのも、ドレスに合わせて髪飾りや化粧の相談を始めたのだ。当然男性陣は合流できず、際どい話も盛り上がる。
「アドキスって人化できるの?」
「わからないけど、私が竜化できるから」
「それなら問題ないわね」
初夜のあれこれで、あけすけに話が飛び交う。男性達がいたら逆に向こうが赤面しそうだ。そういう面で、女性のメンタルの方が強いのかも知れない。未来の妻であり母になる彼女達は、軽食を摘まみながら机に身を乗り出した。
「リリス様はいつも魔王陛下とご一緒だから、今更ですわね」
「緊張しなくて済みそう」
ルーシアとシトリーの会話に、リリスが大きな溜め息を吐いた。
「そうなんだけど、逆よ。毎日一緒だったでしょう? お風呂も一緒なの。だから初夜にそういう雰囲気になれなかったら困るのよね」
「贅沢な悩みなのに、切実ですね」
ルーサルカが眉を寄せる。彼女はアベルと一緒に過ごした時間が少なく、緊張しすぎて卒倒しそうだと告白した。性的な知識は一応教育を受けたが、種族により情報が異なる。その辺の事情もあり、彼女達は抱えた不安を吐き出した。
「うちは精霊同士でしょう? だからあまり心配ないのだけど……風と水ってそんなに相性がよくないのよ」
「相性とか関係あるの?」
「ええ。精霊同士は溶けあって交わるのよ。だから属性の相性は重要だわ」
知らなった話に少女達は目を丸くする。溶けあうって何だか照れるわね。リリスが頬を染めると、つられて全員が赤面した。
「それでもジンを選んだんでしょ? いいわね」
レライエがくすくす笑いながら指摘した。相性が悪いのは生まれた時に分かっていて、それでも幼馴染と添い遂げる決断をしたルーシアを皆が祝福していた。
「シトリーはグシオンとどうなの?」
「グシオンは火龍だから、空を飛ぶ鳥人族にとって仲間に近いわね。ただ炎の属性が強いから、子どもにどんな特性がでるか不安よ」
ジズは風の属性を強く受け継ぐ。そこに炎の属性を持つ龍が足された場合、子どもにどちらが受け継がれるか。次世代の種族はジズか火龍に分かれるが、属性は混じることもあった。
「それは難しいな」
「炎と風……暖かそうね」
「火山地帯で暮らすなら、体質としては望ましいんじゃないか?」
互いの心配をしながらも、前向きな意見が出揃ったところで……野菜サンドを食べ終えたリリスが肘をついた。行儀悪いと叱る人がいない場所で、リリスはぽつりと零した。
「皆、結婚したら通いになるのよね」
どきっとした顔で、全員が顔を見合わせる。
「そう、ですね」
「ええ。引っ越しの準備も始めたの」
ルーシアは実家のある湖の畔、火山近くの夫の実家に入るシトリーは居を移す予定だった。城下町にあるアベルの家に住むルーサルカは、月の半分を魔王城で過ごすらしい。レライエに至っては、アムドゥスキアスが稼いだお金で新居を建てる。
ばらばらになることが寂しい。ずっと一緒に魔王城で暮らしてきたのに。リリスの声に滲んだ響きに、シトリーが頬を緩めた。
「リリス様の側近に選ばれた時、この魔王城に越してきました。思いだします。兄や父が心配して……実家に近い状況で暮らせるよう、部屋を熱帯雨林の温室のようにしてくれました」
「覚えてるわ、素敵なお部屋だもの」
幼かったリリスは目を輝かせた。大公女達は、まだ幼いうちに親元を離れて一人で魔王城に来た。そのことを思い出し、リリスは申し訳なさそうに謝る。
「ごめんなさい。あなた達をご家族から引き離してしまったわ」
「お気になさらず」
「そうです。自分で選んだことです」
選ばれたのは事実だが、承諾したのは自分達の意思だ。幼いながらも自分で選んだ道だった。後悔はしない。言い切る四人の表情に、リリスは小さく頷いた。
「ルキフェル大公閣下が設置した転移魔法陣があるから、毎日通ってきます。今までとあまり変わりませんよ」
「それもそうね」
再び少女達の話は方向転換し、明るい話題で締めくくられた。扉の外で心配そうに行き来する魔王と翡翠竜が目撃されるが、アスタロトに回収されたとか?
「アドキスって人化できるの?」
「わからないけど、私が竜化できるから」
「それなら問題ないわね」
初夜のあれこれで、あけすけに話が飛び交う。男性達がいたら逆に向こうが赤面しそうだ。そういう面で、女性のメンタルの方が強いのかも知れない。未来の妻であり母になる彼女達は、軽食を摘まみながら机に身を乗り出した。
「リリス様はいつも魔王陛下とご一緒だから、今更ですわね」
「緊張しなくて済みそう」
ルーシアとシトリーの会話に、リリスが大きな溜め息を吐いた。
「そうなんだけど、逆よ。毎日一緒だったでしょう? お風呂も一緒なの。だから初夜にそういう雰囲気になれなかったら困るのよね」
「贅沢な悩みなのに、切実ですね」
ルーサルカが眉を寄せる。彼女はアベルと一緒に過ごした時間が少なく、緊張しすぎて卒倒しそうだと告白した。性的な知識は一応教育を受けたが、種族により情報が異なる。その辺の事情もあり、彼女達は抱えた不安を吐き出した。
「うちは精霊同士でしょう? だからあまり心配ないのだけど……風と水ってそんなに相性がよくないのよ」
「相性とか関係あるの?」
「ええ。精霊同士は溶けあって交わるのよ。だから属性の相性は重要だわ」
知らなった話に少女達は目を丸くする。溶けあうって何だか照れるわね。リリスが頬を染めると、つられて全員が赤面した。
「それでもジンを選んだんでしょ? いいわね」
レライエがくすくす笑いながら指摘した。相性が悪いのは生まれた時に分かっていて、それでも幼馴染と添い遂げる決断をしたルーシアを皆が祝福していた。
「シトリーはグシオンとどうなの?」
「グシオンは火龍だから、空を飛ぶ鳥人族にとって仲間に近いわね。ただ炎の属性が強いから、子どもにどんな特性がでるか不安よ」
ジズは風の属性を強く受け継ぐ。そこに炎の属性を持つ龍が足された場合、子どもにどちらが受け継がれるか。次世代の種族はジズか火龍に分かれるが、属性は混じることもあった。
「それは難しいな」
「炎と風……暖かそうね」
「火山地帯で暮らすなら、体質としては望ましいんじゃないか?」
互いの心配をしながらも、前向きな意見が出揃ったところで……野菜サンドを食べ終えたリリスが肘をついた。行儀悪いと叱る人がいない場所で、リリスはぽつりと零した。
「皆、結婚したら通いになるのよね」
どきっとした顔で、全員が顔を見合わせる。
「そう、ですね」
「ええ。引っ越しの準備も始めたの」
ルーシアは実家のある湖の畔、火山近くの夫の実家に入るシトリーは居を移す予定だった。城下町にあるアベルの家に住むルーサルカは、月の半分を魔王城で過ごすらしい。レライエに至っては、アムドゥスキアスが稼いだお金で新居を建てる。
ばらばらになることが寂しい。ずっと一緒に魔王城で暮らしてきたのに。リリスの声に滲んだ響きに、シトリーが頬を緩めた。
「リリス様の側近に選ばれた時、この魔王城に越してきました。思いだします。兄や父が心配して……実家に近い状況で暮らせるよう、部屋を熱帯雨林の温室のようにしてくれました」
「覚えてるわ、素敵なお部屋だもの」
幼かったリリスは目を輝かせた。大公女達は、まだ幼いうちに親元を離れて一人で魔王城に来た。そのことを思い出し、リリスは申し訳なさそうに謝る。
「ごめんなさい。あなた達をご家族から引き離してしまったわ」
「お気になさらず」
「そうです。自分で選んだことです」
選ばれたのは事実だが、承諾したのは自分達の意思だ。幼いながらも自分で選んだ道だった。後悔はしない。言い切る四人の表情に、リリスは小さく頷いた。
「ルキフェル大公閣下が設置した転移魔法陣があるから、毎日通ってきます。今までとあまり変わりませんよ」
「それもそうね」
再び少女達の話は方向転換し、明るい話題で締めくくられた。扉の外で心配そうに行き来する魔王と翡翠竜が目撃されるが、アスタロトに回収されたとか?
20
お気に入りに追加
4,927
あなたにおすすめの小説
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~
大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア
8さいの時、急に現れた義母に義姉。
あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。
侯爵家の娘なのに、使用人扱い。
お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。
義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする……
このままじゃ先の人生詰んでる。
私には
前世では25歳まで生きてた記憶がある!
義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから!
義母達にスカッとざまぁしたり
冒険の旅に出たり
主人公が妖精の愛し子だったり。
竜王の番だったり。
色々な無自覚チート能力発揮します。
竜王様との溺愛は後半第二章からになります。
※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。
※後半イチャイチャ多めです♡
※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「お生まれになりました! お嬢様です!!」
長い紆余曲折を経て結ばれた魔王ルシファーは、魔王妃リリスが産んだ愛娘に夢中になっていく。子育ては二度目、余裕だと思ったのに予想外の事件ばかり起きて!?
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
魔王夫妻のなれそめは【魔王様、溺愛しすぎです!】を頑張って読破してください(o´-ω-)o)ペコッ
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2023/06/04 完結
※2022/05/13 第10回ネット小説大賞、一次選考通過
※2021/12/25 小説家になろう ハイファンタジー日間 56位
※2021/12/24 エブリスタ トレンド1位
※2021/12/24 アルファポリス HOT 71位
※2021/12/24 連載開始
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる