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92章 新種発見ラッシュ

1258. 新種登録会で大活躍

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 各地から運ばれてきた新種と思わしき種族が、続々と芝生の上に解放される。言葉や意思疎通の確認がすでに終わった者もいるため、大きな混乱はなかった。

 夕方になると、まず屋台の店主が現れた。さっさと陣取りして、店の準備を始める。彼らのおかげで、魔王城は毎回焼肉大会の準備をしなくても済むのだ。さらに日が傾く頃には、仕事を終えたダークプレイスの住人達も登ってくる。一気に賑やかになった場に、駆け付けた貴族や飛来した種族が花を添え、さらに騒がしさが増した。

「さて、ではお披露目を兼ねて新種族の紹介といこう」

 すでに意思疎通が取れている種族から始まり、名称の決定と領地を割り当てていく。この作業は意外と調整が難しく、いくつかの種族は希望する領地に空きがなかった。その辺は魔王城の文官達の領域だ。

 沼地を好む種族の場合は、沼地を拡大する方法も検討される。かつて川を領地に望まれたこともあったが、共有物なので難しかった。あの時は川を分岐してまた下流で合流させる方法を取り、新たに作った支流を領地にしたこともある。

 種族としての特性などを公表しながら進行するお披露目の中、アベルはリスを手に目を輝かせた。

「カーバンクル!」

「なぁに、それ。日本から来たの?」

 つい先日もスライムで同じ話をしたので、今回は手短に伝えた。スライムと同じで、空想上の生き物なのだと。額の宝石は生まれついての物だから、抉ったり外そうとしてはいけない。魔力を溜めて魔法を使えるかも知れないこと。伝えられた内容をメモするルーサルカが、にっこり笑った。

「すごいわ、アベル。よく知ってるのね。助かるわ」

「役に立ててよかった」

 カーバンクルは、きぃと小さな声で鳴く。近所の木々から同じ声が返った。抱き締めたリリスの 足に、別のカーバンクルがよじ登り始め、抱き締めた個体を撫で回した。異常がないか確認しているように見える。

「ごめんなさい。可愛かったので抱っこしてしまったの。心配してたのね。ここで魔族として登録して貰えば、住む場所も確保できるわ。仲間に来てもらうことは出来るかしら?」

 リリスが出来るだけ丁寧に説明すると、リス達は顔を見合わせてから頷いた。どうやら言葉は理解している。後ろのヤンが尻尾を気にしながら口を挟んだ。

「その者らの言葉、魔獣ならば聞き取りますぞ」

「魔獣系に分類なのね、助かりました」

 ルーサルカが礼をいって、資料に書き込んでいく。カーバンクルは人化出来ないと思う、そうアベルが付け加えたことで、魔獣の一角に加わることになった。リスの繁殖能力は高いので、森のあちこちに分散して生息したいようで、それもヤンからルーサルカ経由で文官達に伝えられた。

 スライムは分類が難しいが、こちらの言葉は理解している。その上、話が通じる種族が見つかった。リザードマンだ。今回沼地で新しく発見した蛇を運んで来た彼らは、スライムが何を言いたいか理解できる。おかげで魔族の登録は可能だが、分類が爬虫類系にされてしまった。アベルは間違っていると抗議したが、言葉が通じることが重要な要素なので却下される。

「スライムは魔物だろ」

「言葉が通じるから魔族なの」

 ぼやくアベルに、ルーサルカが笑いながら訂正した。それはわかるが、ゲームの感覚が抜けない。リザードマンも虹蛇も言葉が通じなかった巨大蜥蜴は、魔物分類になった。その直後、駆け寄ったイザヤが嬉しそうに話しかけると、すり寄って尻尾を打ち鳴らして何かを伝える仕草をする。

 イザヤ曰く、過去に飼っていたイグアナに似ているとか。種族の登録名称はイグアナになり、尻尾を鳴らす音に反応したリザードマンが手を叩いて応じた。イグアナが振り返って再び尻尾を鳴らしたため、会話が成立する可能性の高さから、魔族として仮登録された。

 きちんと会話が成立すれば、いずれ仮の文字が取れる予定だ。他にも多くの魔族が登録されたが、数が多すぎて覚えられず、後日リストを各種族へ配布することが決定した。ちなみに、まだ到着していない新種もいるため、この騒ぎは数日続く予定である。
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