1,263 / 1,397
92章 新種発見ラッシュ
1258. 新種登録会で大活躍
しおりを挟む
各地から運ばれてきた新種と思わしき種族が、続々と芝生の上に解放される。言葉や意思疎通の確認がすでに終わった者もいるため、大きな混乱はなかった。
夕方になると、まず屋台の店主が現れた。さっさと陣取りして、店の準備を始める。彼らのおかげで、魔王城は毎回焼肉大会の準備をしなくても済むのだ。さらに日が傾く頃には、仕事を終えたダークプレイスの住人達も登ってくる。一気に賑やかになった場に、駆け付けた貴族や飛来した種族が花を添え、さらに騒がしさが増した。
「さて、ではお披露目を兼ねて新種族の紹介といこう」
すでに意思疎通が取れている種族から始まり、名称の決定と領地を割り当てていく。この作業は意外と調整が難しく、いくつかの種族は希望する領地に空きがなかった。その辺は魔王城の文官達の領域だ。
沼地を好む種族の場合は、沼地を拡大する方法も検討される。かつて川を領地に望まれたこともあったが、共有物なので難しかった。あの時は川を分岐してまた下流で合流させる方法を取り、新たに作った支流を領地にしたこともある。
種族としての特性などを公表しながら進行するお披露目の中、アベルはリスを手に目を輝かせた。
「カーバンクル!」
「なぁに、それ。日本から来たの?」
つい先日もスライムで同じ話をしたので、今回は手短に伝えた。スライムと同じで、空想上の生き物なのだと。額の宝石は生まれついての物だから、抉ったり外そうとしてはいけない。魔力を溜めて魔法を使えるかも知れないこと。伝えられた内容をメモするルーサルカが、にっこり笑った。
「すごいわ、アベル。よく知ってるのね。助かるわ」
「役に立ててよかった」
カーバンクルは、きぃと小さな声で鳴く。近所の木々から同じ声が返った。抱き締めたリリスの 足に、別のカーバンクルがよじ登り始め、抱き締めた個体を撫で回した。異常がないか確認しているように見える。
「ごめんなさい。可愛かったので抱っこしてしまったの。心配してたのね。ここで魔族として登録して貰えば、住む場所も確保できるわ。仲間に来てもらうことは出来るかしら?」
リリスが出来るだけ丁寧に説明すると、リス達は顔を見合わせてから頷いた。どうやら言葉は理解している。後ろのヤンが尻尾を気にしながら口を挟んだ。
「その者らの言葉、魔獣ならば聞き取りますぞ」
「魔獣系に分類なのね、助かりました」
ルーサルカが礼をいって、資料に書き込んでいく。カーバンクルは人化出来ないと思う、そうアベルが付け加えたことで、魔獣の一角に加わることになった。リスの繁殖能力は高いので、森のあちこちに分散して生息したいようで、それもヤンからルーサルカ経由で文官達に伝えられた。
スライムは分類が難しいが、こちらの言葉は理解している。その上、話が通じる種族が見つかった。リザードマンだ。今回沼地で新しく発見した蛇を運んで来た彼らは、スライムが何を言いたいか理解できる。おかげで魔族の登録は可能だが、分類が爬虫類系にされてしまった。アベルは間違っていると抗議したが、言葉が通じることが重要な要素なので却下される。
「スライムは魔物だろ」
「言葉が通じるから魔族なの」
ぼやくアベルに、ルーサルカが笑いながら訂正した。それはわかるが、ゲームの感覚が抜けない。リザードマンも虹蛇も言葉が通じなかった巨大蜥蜴は、魔物分類になった。その直後、駆け寄ったイザヤが嬉しそうに話しかけると、すり寄って尻尾を打ち鳴らして何かを伝える仕草をする。
イザヤ曰く、過去に飼っていたイグアナに似ているとか。種族の登録名称はイグアナになり、尻尾を鳴らす音に反応したリザードマンが手を叩いて応じた。イグアナが振り返って再び尻尾を鳴らしたため、会話が成立する可能性の高さから、魔族として仮登録された。
きちんと会話が成立すれば、いずれ仮の文字が取れる予定だ。他にも多くの魔族が登録されたが、数が多すぎて覚えられず、後日リストを各種族へ配布することが決定した。ちなみに、まだ到着していない新種もいるため、この騒ぎは数日続く予定である。
夕方になると、まず屋台の店主が現れた。さっさと陣取りして、店の準備を始める。彼らのおかげで、魔王城は毎回焼肉大会の準備をしなくても済むのだ。さらに日が傾く頃には、仕事を終えたダークプレイスの住人達も登ってくる。一気に賑やかになった場に、駆け付けた貴族や飛来した種族が花を添え、さらに騒がしさが増した。
「さて、ではお披露目を兼ねて新種族の紹介といこう」
すでに意思疎通が取れている種族から始まり、名称の決定と領地を割り当てていく。この作業は意外と調整が難しく、いくつかの種族は希望する領地に空きがなかった。その辺は魔王城の文官達の領域だ。
沼地を好む種族の場合は、沼地を拡大する方法も検討される。かつて川を領地に望まれたこともあったが、共有物なので難しかった。あの時は川を分岐してまた下流で合流させる方法を取り、新たに作った支流を領地にしたこともある。
種族としての特性などを公表しながら進行するお披露目の中、アベルはリスを手に目を輝かせた。
「カーバンクル!」
「なぁに、それ。日本から来たの?」
つい先日もスライムで同じ話をしたので、今回は手短に伝えた。スライムと同じで、空想上の生き物なのだと。額の宝石は生まれついての物だから、抉ったり外そうとしてはいけない。魔力を溜めて魔法を使えるかも知れないこと。伝えられた内容をメモするルーサルカが、にっこり笑った。
「すごいわ、アベル。よく知ってるのね。助かるわ」
「役に立ててよかった」
カーバンクルは、きぃと小さな声で鳴く。近所の木々から同じ声が返った。抱き締めたリリスの 足に、別のカーバンクルがよじ登り始め、抱き締めた個体を撫で回した。異常がないか確認しているように見える。
「ごめんなさい。可愛かったので抱っこしてしまったの。心配してたのね。ここで魔族として登録して貰えば、住む場所も確保できるわ。仲間に来てもらうことは出来るかしら?」
リリスが出来るだけ丁寧に説明すると、リス達は顔を見合わせてから頷いた。どうやら言葉は理解している。後ろのヤンが尻尾を気にしながら口を挟んだ。
「その者らの言葉、魔獣ならば聞き取りますぞ」
「魔獣系に分類なのね、助かりました」
ルーサルカが礼をいって、資料に書き込んでいく。カーバンクルは人化出来ないと思う、そうアベルが付け加えたことで、魔獣の一角に加わることになった。リスの繁殖能力は高いので、森のあちこちに分散して生息したいようで、それもヤンからルーサルカ経由で文官達に伝えられた。
スライムは分類が難しいが、こちらの言葉は理解している。その上、話が通じる種族が見つかった。リザードマンだ。今回沼地で新しく発見した蛇を運んで来た彼らは、スライムが何を言いたいか理解できる。おかげで魔族の登録は可能だが、分類が爬虫類系にされてしまった。アベルは間違っていると抗議したが、言葉が通じることが重要な要素なので却下される。
「スライムは魔物だろ」
「言葉が通じるから魔族なの」
ぼやくアベルに、ルーサルカが笑いながら訂正した。それはわかるが、ゲームの感覚が抜けない。リザードマンも虹蛇も言葉が通じなかった巨大蜥蜴は、魔物分類になった。その直後、駆け寄ったイザヤが嬉しそうに話しかけると、すり寄って尻尾を打ち鳴らして何かを伝える仕草をする。
イザヤ曰く、過去に飼っていたイグアナに似ているとか。種族の登録名称はイグアナになり、尻尾を鳴らす音に反応したリザードマンが手を叩いて応じた。イグアナが振り返って再び尻尾を鳴らしたため、会話が成立する可能性の高さから、魔族として仮登録された。
きちんと会話が成立すれば、いずれ仮の文字が取れる予定だ。他にも多くの魔族が登録されたが、数が多すぎて覚えられず、後日リストを各種族へ配布することが決定した。ちなみに、まだ到着していない新種もいるため、この騒ぎは数日続く予定である。
20
お気に入りに追加
4,953
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」
「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」
公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。
理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。
王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!
頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2021/08/16 「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
※2021/01/30 完結
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
この人が私の夫……政略結婚だけど、一目惚れです!
12歳にして、戦争回避のために隣国の王弟に嫁ぐことになった末っ子姫アンジェル。15歳も年上の夫に会うなり、一目惚れした。彼のすべてが大好きなのに、私は年の離れた妹のように甘やかされるばかり。溺愛もいいけれど、妻として愛してほしいわ。
両片思いの擦れ違い夫婦が、本物の愛に届くまで。ハッピーエンド確定です♪
ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/07/06……完結
2024/06/29……本編完結
2024/04/02……エブリスタ、トレンド恋愛 76位
2024/04/02……アルファポリス、女性向けHOT 77位
2024/04/01……連載開始
死に戻りの魔女は溺愛幼女に生まれ変わります
みおな
恋愛
「灰色の魔女め!」
私を睨みつける婚約者に、心が絶望感で塗りつぶされていきます。
聖女である妹が自分には相応しい?なら、どうして婚約解消を申し込んでくださらなかったのですか?
私だってわかっています。妹の方が優れている。妹の方が愛らしい。
だから、そうおっしゃってくだされば、婚約者の座などいつでもおりましたのに。
こんな公衆の面前で婚約破棄をされた娘など、父もきっと切り捨てるでしょう。
私は誰にも愛されていないのだから。
なら、せめて、最後くらい自分のために舞台を飾りましょう。
灰色の魔女の死という、極上の舞台をー
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる