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92章 新種発見ラッシュ
1257. 悪戯防止紐の効果大
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呼びかけを行ったところ、各地から新種の報告が上がってきた。複数の個体が確認された新種を中心に、まとめて登録する予定だ。
「何でしょう、天変地異の前触れですかね」
眉を寄せて心配する側近の眉間を指で突き、ルシファーは大笑いした。
「こないだ大雨が降ったばかりだ。しばらくは穏やかな天気が続くさ。それに新種ラッシュは、魔の森の魔力が回復した証拠だ。吉兆だぞ」
良い兆しだと笑い飛ばす主君に、アスタロトは肩を竦める。中庭は狭すぎるので、城門前の芝生広場に移動となった。いつもながら丘になったこの広場は大活躍だ。かつては勇者の襲撃も受けた場所で、エルフが日々手入れを怠らない芝は青々と茂っていた。
のそのそと歩く巨大蜥蜴は、目を輝かせて芝生に寝転がる。よほど日向が好きなのだろう。祭りの際に植えた木々の木陰も利用し、日向と日陰を往復して体温調整を始めた。彼らは放置しても問題ないだろう。虹蛇を連れたベールが到着するまで、このまま好きにさせることにした。
ピヨが興奮して走り回るが、珍しくいきなり攻撃しない。火を噴いたり突いたりと忙しい鸞のヒナは凶暴で有名だが……首を傾げたルシファーに後ろから抱きしめられたリリスが笑い出した。彼女に指摘されて気づいたルシファーも苦笑いする。
ピヨの嘴に幅広の布がぐるぐると巻かれていた。口を開けないので火を噴けないし、違和感があって突く動作も収まっている。ピヨ自体は窮屈だろうが、周囲に被害は出ない妙策だった。
「あれは誰のアイディアだ?」
「私です」
ぱたりと尻尾を振って後ろで伏せたヤンが言うには、エルフに手伝ってもらったそうだ。息子セーレを含む子狼は生まれてしばらくすると、歯の生え変わりの時期が来る。痒くて周囲にある物を片っ端から齧るのだが、その中に弱い個体の尻尾や足を齧る者が出た。戒めるために、悪戯防止で隣の領地のエルフに協力してもらったのが発祥だった。
今回もピヨの悪戯や悪さをやめさせるため、本人が反省するまで毎日巻かれるらしい。布はある程度伸縮性があり、頑張れば半分くらい口を開けるという。虐待か躾か、フェンリルの間でも意見が分かれた過去があるようだが、本人は意外と堪えていない。
興奮状態で蜥蜴に突進するピヨを見れば、周囲の安全のために口を塞ぐ程度は仕方ないと魔王含め人々は納得してしまった。それだけピヨの悪戯が広範囲に迷惑をかけていた証拠だ。
「もっと早く手を打つべきでした」
ヤンは反省しきりだが、後ろからそっと近づいたピヨが頑張って口を開き、尻尾を咥えたところでばちんと嘴が閉じた。
ぎゃうん!! 大きな悲鳴が響き、慌てたルシファーが助けに向かう。ピヨを掴んで引っぱるリリスをルーシアが支え、ルシファーが手を突っ込んで嘴を開かせた。挟まれた尻尾を救出し、確認する。血は滲んでいないが……痛々しい血豆が出来ていた。
「ピヨ、その拘束をあと1ヵ月は延長するぞ」
ルシファーがきっちり罰を言い渡す。しょんぼりしたピヨを撫でるリリスが、仕方ないわと囁いた。涙目で震えるヤンは、ルシファーにしがみ付く。
「わ、我が君、我の尻尾……自慢の尻尾がちぎれ……」
「安心しろ。血豆だけで形は残ってる。曲がってもいない、と思うぞ」
そこは自分で確認してくれ。丸投げされ、ヤンが嘆いた。尾曲がりになったと悲観するフェンリルだが、見た目はふさふさで異常はない。無理やりヤンに確認させ、芝生の上に直接座った。疲れた。
「この子、ピヨと相性がいいみたい」
手を叩くリリスに顔を向ければ、額に宝石の埋め込まれたリスがピヨにしがみ付いていた。怖がっている様子もなく、ピヨもまんざらでもなさそうだ。エルフ達に可愛いと連呼され、ピヨも嬉しそうに羽を広げた。
「何でしょう、天変地異の前触れですかね」
眉を寄せて心配する側近の眉間を指で突き、ルシファーは大笑いした。
「こないだ大雨が降ったばかりだ。しばらくは穏やかな天気が続くさ。それに新種ラッシュは、魔の森の魔力が回復した証拠だ。吉兆だぞ」
良い兆しだと笑い飛ばす主君に、アスタロトは肩を竦める。中庭は狭すぎるので、城門前の芝生広場に移動となった。いつもながら丘になったこの広場は大活躍だ。かつては勇者の襲撃も受けた場所で、エルフが日々手入れを怠らない芝は青々と茂っていた。
のそのそと歩く巨大蜥蜴は、目を輝かせて芝生に寝転がる。よほど日向が好きなのだろう。祭りの際に植えた木々の木陰も利用し、日向と日陰を往復して体温調整を始めた。彼らは放置しても問題ないだろう。虹蛇を連れたベールが到着するまで、このまま好きにさせることにした。
ピヨが興奮して走り回るが、珍しくいきなり攻撃しない。火を噴いたり突いたりと忙しい鸞のヒナは凶暴で有名だが……首を傾げたルシファーに後ろから抱きしめられたリリスが笑い出した。彼女に指摘されて気づいたルシファーも苦笑いする。
ピヨの嘴に幅広の布がぐるぐると巻かれていた。口を開けないので火を噴けないし、違和感があって突く動作も収まっている。ピヨ自体は窮屈だろうが、周囲に被害は出ない妙策だった。
「あれは誰のアイディアだ?」
「私です」
ぱたりと尻尾を振って後ろで伏せたヤンが言うには、エルフに手伝ってもらったそうだ。息子セーレを含む子狼は生まれてしばらくすると、歯の生え変わりの時期が来る。痒くて周囲にある物を片っ端から齧るのだが、その中に弱い個体の尻尾や足を齧る者が出た。戒めるために、悪戯防止で隣の領地のエルフに協力してもらったのが発祥だった。
今回もピヨの悪戯や悪さをやめさせるため、本人が反省するまで毎日巻かれるらしい。布はある程度伸縮性があり、頑張れば半分くらい口を開けるという。虐待か躾か、フェンリルの間でも意見が分かれた過去があるようだが、本人は意外と堪えていない。
興奮状態で蜥蜴に突進するピヨを見れば、周囲の安全のために口を塞ぐ程度は仕方ないと魔王含め人々は納得してしまった。それだけピヨの悪戯が広範囲に迷惑をかけていた証拠だ。
「もっと早く手を打つべきでした」
ヤンは反省しきりだが、後ろからそっと近づいたピヨが頑張って口を開き、尻尾を咥えたところでばちんと嘴が閉じた。
ぎゃうん!! 大きな悲鳴が響き、慌てたルシファーが助けに向かう。ピヨを掴んで引っぱるリリスをルーシアが支え、ルシファーが手を突っ込んで嘴を開かせた。挟まれた尻尾を救出し、確認する。血は滲んでいないが……痛々しい血豆が出来ていた。
「ピヨ、その拘束をあと1ヵ月は延長するぞ」
ルシファーがきっちり罰を言い渡す。しょんぼりしたピヨを撫でるリリスが、仕方ないわと囁いた。涙目で震えるヤンは、ルシファーにしがみ付く。
「わ、我が君、我の尻尾……自慢の尻尾がちぎれ……」
「安心しろ。血豆だけで形は残ってる。曲がってもいない、と思うぞ」
そこは自分で確認してくれ。丸投げされ、ヤンが嘆いた。尾曲がりになったと悲観するフェンリルだが、見た目はふさふさで異常はない。無理やりヤンに確認させ、芝生の上に直接座った。疲れた。
「この子、ピヨと相性がいいみたい」
手を叩くリリスに顔を向ければ、額に宝石の埋め込まれたリスがピヨにしがみ付いていた。怖がっている様子もなく、ピヨもまんざらでもなさそうだ。エルフ達に可愛いと連呼され、ピヨも嬉しそうに羽を広げた。
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