1,259 / 1,397
92章 新種発見ラッシュ
1254. 区別がつかないほどの増殖
しおりを挟む
捕獲したぷるぷるを運搬中、やたらと広がったり縮んだりを繰り返す。捕まえた腕からこぼれ落ちそうなので、ルシファーが声をかけた。
「動くと落ちるぞ。丸くなれるか? ぷるんと丸い形だ」
手の動きを添えて丸い形を伝えると、動きを止めたぷるぷるが丸まった。
「悪いな、運んでる最中に落とすと申し訳ないから、そのままでいてく……ん?」
「ルシファー様、いま意思の疎通が?」
「こちらの言葉は理解してそうだ」
頷きあい、移動を急ぐ。3階にあるルシファーの私室から階段を降りて、横に移動すること数分。ようやくルキフェルの研究室に着いた。ノックもそこそこに扉を開けると……そこは、ぷるぷるが溢れていた。
「あ、扉閉めて! 外に出ちゃう」
ルキフェルの言葉に慌てて中に飛び込み扉を閉める。だが足の踏み場がなく、アスタロトは空中に逃げた。空中に浮かんだまま、蝙蝠の羽を広げてバランスを取る。その間にルシファーはぷるぷるに襲われていた。
逃げる間もなく、全身がぷるぷるだらけだ。結界があるので、誰も心配してくれないのも、ちょっと切ない。溜め息を吐いて、手に乗せたぷるぷるを見つめる。外にいるぷるぷる集団に混じったら、区別がつかないな。
「個体ごとに個性とかあるのか?」
話しかけたら、一斉にぷるぷるが動いた。顔を見合わせるようにくねくね動いたかと思ったら、するすると解散していく。状況は理解できないが、こちらの言葉を理解する認識は間違っていなかった。
「ルキフェル、なぜ増えたんだ?」
「切ったら増えたの! でもって増えすぎたコイツが爆発物を飲み込んだんで取り出そうとしたら、爆発して飛び散ってこの有様……あれ? 今日は夕食会じゃなかったっけ?」
ルキフェルは予定を思い浮かべながら首をかしげる。気付くのが遅いが、それだけルシファー達も混乱していたので、誰も指摘しなかった。
「これが、オレの私室に紛れ込んでいたんだ」
手の上の個体を示すと、ルキフェルは前のめりになった後、肩を竦める。
「これって、どれ?」
「いや、だから手の上に……!」
山ほど乗っていた。確かに個体の区別ができない今、どれが私室まで移動したか分からない。歩いてくる途中で別の個体を見た覚えはないが、もしかしたら城中に散っている可能性もあった。
「害がないか確認してくれ。それと話すと理解しているから魔族扱いにして、切ったり爆破したりは禁止だ」
「僕が爆発させたんじゃないのに」
むっと唇を尖らせながら、ぷるぷるをケースに収納していく。ルキフェルはケースに番号を振り、それで管理するつもりのようだ。縦に積み重ねていくが、片側に空気穴が開けられていた。よく見ると一桁番号で収容されたぷるぷるが、穴から脱出を図っていた。地上に降りたアスタロトを手招きし、ルキフェルも一緒に並んで観察を始める。
隙間から先端が出ると、きょろきょろ周囲を見回すような仕草をしてから細長く出てきた。内臓や骨といった概念はないようだ。形に合わせて出てくる。
「消化出来るのは包んだものだけみたいだね」
くるんと包み込まないと溶かすことは出来ないらしい。ルキフェルは新しい発見に目を輝かせていた。やり過ぎないよう釘を刺すべきか。顔を見合わせたアスタロトと頷き合ったとき、扉がノックされた。
「今は……」
ダメだと言う前に扉が開き、アベルが足を踏み入れる。目を見開く彼を風の魔法で引き摺り込んで扉を密閉した。隙間さえあれば出入り自由となれば、かなり危険だ。
「アベル、返事があるまで扉を開いては」
いけません。注意するアスタロトの声を遮って、アベルが叫んだ!
「すげぇ、スライムだ!!」
スライム? 彼以外が首を傾げた瞬間だった。
「動くと落ちるぞ。丸くなれるか? ぷるんと丸い形だ」
手の動きを添えて丸い形を伝えると、動きを止めたぷるぷるが丸まった。
「悪いな、運んでる最中に落とすと申し訳ないから、そのままでいてく……ん?」
「ルシファー様、いま意思の疎通が?」
「こちらの言葉は理解してそうだ」
頷きあい、移動を急ぐ。3階にあるルシファーの私室から階段を降りて、横に移動すること数分。ようやくルキフェルの研究室に着いた。ノックもそこそこに扉を開けると……そこは、ぷるぷるが溢れていた。
「あ、扉閉めて! 外に出ちゃう」
ルキフェルの言葉に慌てて中に飛び込み扉を閉める。だが足の踏み場がなく、アスタロトは空中に逃げた。空中に浮かんだまま、蝙蝠の羽を広げてバランスを取る。その間にルシファーはぷるぷるに襲われていた。
逃げる間もなく、全身がぷるぷるだらけだ。結界があるので、誰も心配してくれないのも、ちょっと切ない。溜め息を吐いて、手に乗せたぷるぷるを見つめる。外にいるぷるぷる集団に混じったら、区別がつかないな。
「個体ごとに個性とかあるのか?」
話しかけたら、一斉にぷるぷるが動いた。顔を見合わせるようにくねくね動いたかと思ったら、するすると解散していく。状況は理解できないが、こちらの言葉を理解する認識は間違っていなかった。
「ルキフェル、なぜ増えたんだ?」
「切ったら増えたの! でもって増えすぎたコイツが爆発物を飲み込んだんで取り出そうとしたら、爆発して飛び散ってこの有様……あれ? 今日は夕食会じゃなかったっけ?」
ルキフェルは予定を思い浮かべながら首をかしげる。気付くのが遅いが、それだけルシファー達も混乱していたので、誰も指摘しなかった。
「これが、オレの私室に紛れ込んでいたんだ」
手の上の個体を示すと、ルキフェルは前のめりになった後、肩を竦める。
「これって、どれ?」
「いや、だから手の上に……!」
山ほど乗っていた。確かに個体の区別ができない今、どれが私室まで移動したか分からない。歩いてくる途中で別の個体を見た覚えはないが、もしかしたら城中に散っている可能性もあった。
「害がないか確認してくれ。それと話すと理解しているから魔族扱いにして、切ったり爆破したりは禁止だ」
「僕が爆発させたんじゃないのに」
むっと唇を尖らせながら、ぷるぷるをケースに収納していく。ルキフェルはケースに番号を振り、それで管理するつもりのようだ。縦に積み重ねていくが、片側に空気穴が開けられていた。よく見ると一桁番号で収容されたぷるぷるが、穴から脱出を図っていた。地上に降りたアスタロトを手招きし、ルキフェルも一緒に並んで観察を始める。
隙間から先端が出ると、きょろきょろ周囲を見回すような仕草をしてから細長く出てきた。内臓や骨といった概念はないようだ。形に合わせて出てくる。
「消化出来るのは包んだものだけみたいだね」
くるんと包み込まないと溶かすことは出来ないらしい。ルキフェルは新しい発見に目を輝かせていた。やり過ぎないよう釘を刺すべきか。顔を見合わせたアスタロトと頷き合ったとき、扉がノックされた。
「今は……」
ダメだと言う前に扉が開き、アベルが足を踏み入れる。目を見開く彼を風の魔法で引き摺り込んで扉を密閉した。隙間さえあれば出入り自由となれば、かなり危険だ。
「アベル、返事があるまで扉を開いては」
いけません。注意するアスタロトの声を遮って、アベルが叫んだ!
「すげぇ、スライムだ!!」
スライム? 彼以外が首を傾げた瞬間だった。
20
お気に入りに追加
4,927
あなたにおすすめの小説
「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。
光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。
ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…!
8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。
同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。
実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。
恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。
自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる