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91章 天才恋愛作家現る?
1243. ハゲた婚約者は嫌だ
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出費額を清算しようとしたが、アスタロト達の反対にあった。魔王の決済印はそれだけ価値が高く、簡単に内容を変更されては困るというもの。分からなくもないが、間違いの場合もあると主張するルシファーに、アスタロトは笑顔で言い切った。
「間違えて印を押すような間抜けな魔王はいません」
ここにいます。大公女やリリスは揃ってそう思ったが、口に出して反論しなかった。ルシファーもぐぬぬと唸ったものの口を噤むしかない。反論した場合の危険察知能力は高い面々である。
側近に「間抜けな魔王」と名指しされたルシファーは、溜め息をついて諦めた。ここで戦っても勝てないなら、最初から勝負しないのが賢い君主だ。そこそこ高額だが、民のために使う金なので我慢も出来る。ぐっと堪えたルシファーに微笑みを向けたアスタロトは、署名が必要な書類を数枚残して部屋を出た。
「お義父様、えげつないわ」
「……同意するが、今の場面ではアスタロト大公閣下と呼ぶべきよ」
ルーサルカの呟きに、レライエが突っ込む。ひょこっと顔を出した翡翠竜が、尻尾の先を握りながら「大公にならなくて良かった」と安堵の息を吐いた。あれが同僚とか無理、そんな響きにシトリー達も苦笑いする。大公女達は4人で上手に役割分担することを覚え、得意分野を生かして存在感を高めつつあった。魔王城でも評価が高まっている。
「それで、賞品は決まったの?」
リリスが手元のリストを覗き込む。まだ賞品の表記しかない部分を指さした。
「難しい。作家は何を欲しがるのか」
「紙やペンは?」
「実用品より記念品の方がいいんじゃないか?」
「そうよ、実用品は好みがあるもの」
次々と意見が出て、それを参考に記念品という案が有力になった。種族によって手の大きさが違う上、執筆方法も変化する可能性がある。実用品を用意するとなれば、参加者情報を収集する必要が出てきた。だが記念品なら同じ物を配ることが出来る。
「ネックレス?」
「え……アクセサリーはやめましょうよ」
好みやサイズがある物を選ぶのは悪手だ。ぐだぐだと揉める中、突然アムドゥスキアスが叫んだ。
「そうだ! 鱗はいかがです?」
「「「「誰の?」」」」
もっともな突っ込みに、照れながら自分を示す翡翠竜。たしかに珍しい上、記念品として価値は高い。後で加工すればいいため、貰った方も扱いに困ることはないだろう。だが大きな問題があった。
「数千枚だぞ?」
「元の大きさに戻れば、そのくらいとれると思います」
きゃっと照れながらの提案に、性癖が特殊なのにも程があると頭を抱えるルシファー。レライエは溜め息をついて、婚約者にストップをかけた。
「私はハゲた婚約者は嫌だ」
「鱗、やめます!!」
全力で否定するアムドゥスキアスの目は潤んでいた。自分で提案した鱗が、予想外の発言を生んだ。婚約破棄されそうと必死で中止を訴える。ルシファーやリリスも元から、鱗は価値があるが剥ぐのがね……と思っていたので、あっさり案は却下された。
「次からは少し考えて発言しろ」
「……結納金を増やそうと思ったんです」
もじもじと小さな両手を揉みながら上目遣いで許しを請う婚約者に、レライエはしっかり言い聞かせた。己の身を犠牲にして早死にするような婚約者は不要、きちんと自分を労われ――と。
感動したアムドゥスキアスは、両手を組んできらきらと目を輝かせる。
「私は愛されています! 幸せになります」
ぬるい眼差しを受けても気にしない。翡翠竜の精神はとんでもない太さを誇るらしい。結局、参加賞品は一般的な置物になりそうだった。
「間違えて印を押すような間抜けな魔王はいません」
ここにいます。大公女やリリスは揃ってそう思ったが、口に出して反論しなかった。ルシファーもぐぬぬと唸ったものの口を噤むしかない。反論した場合の危険察知能力は高い面々である。
側近に「間抜けな魔王」と名指しされたルシファーは、溜め息をついて諦めた。ここで戦っても勝てないなら、最初から勝負しないのが賢い君主だ。そこそこ高額だが、民のために使う金なので我慢も出来る。ぐっと堪えたルシファーに微笑みを向けたアスタロトは、署名が必要な書類を数枚残して部屋を出た。
「お義父様、えげつないわ」
「……同意するが、今の場面ではアスタロト大公閣下と呼ぶべきよ」
ルーサルカの呟きに、レライエが突っ込む。ひょこっと顔を出した翡翠竜が、尻尾の先を握りながら「大公にならなくて良かった」と安堵の息を吐いた。あれが同僚とか無理、そんな響きにシトリー達も苦笑いする。大公女達は4人で上手に役割分担することを覚え、得意分野を生かして存在感を高めつつあった。魔王城でも評価が高まっている。
「それで、賞品は決まったの?」
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「難しい。作家は何を欲しがるのか」
「紙やペンは?」
「実用品より記念品の方がいいんじゃないか?」
「そうよ、実用品は好みがあるもの」
次々と意見が出て、それを参考に記念品という案が有力になった。種族によって手の大きさが違う上、執筆方法も変化する可能性がある。実用品を用意するとなれば、参加者情報を収集する必要が出てきた。だが記念品なら同じ物を配ることが出来る。
「ネックレス?」
「え……アクセサリーはやめましょうよ」
好みやサイズがある物を選ぶのは悪手だ。ぐだぐだと揉める中、突然アムドゥスキアスが叫んだ。
「そうだ! 鱗はいかがです?」
「「「「誰の?」」」」
もっともな突っ込みに、照れながら自分を示す翡翠竜。たしかに珍しい上、記念品として価値は高い。後で加工すればいいため、貰った方も扱いに困ることはないだろう。だが大きな問題があった。
「数千枚だぞ?」
「元の大きさに戻れば、そのくらいとれると思います」
きゃっと照れながらの提案に、性癖が特殊なのにも程があると頭を抱えるルシファー。レライエは溜め息をついて、婚約者にストップをかけた。
「私はハゲた婚約者は嫌だ」
「鱗、やめます!!」
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「次からは少し考えて発言しろ」
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感動したアムドゥスキアスは、両手を組んできらきらと目を輝かせる。
「私は愛されています! 幸せになります」
ぬるい眼差しを受けても気にしない。翡翠竜の精神はとんでもない太さを誇るらしい。結局、参加賞品は一般的な置物になりそうだった。
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