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91章 天才恋愛作家現る?
1242. 当日よりも準備が大変
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予想外の速さで、転移魔法陣の設置は承認された。というのも、その後の様々な提案を実現するためにも、移動手段の改善は重要なのだ。作家支援にしても、遠い地域や隣の大陸に住む種族は、移動時間を見越して早めに締め切りが設定されてしまう。その上、情報伝達に遅れが生じた場合、間に合わない可能性もあった。
魔法陣を利用して、魔王城との通信や行き来が定期的に実現できれば、住んでいる場所による不利や偏りが是正できるのだ。魔族にとって目から鱗、画期的だった。ずいぶん昔に設置を検討したことはあるが、魔力の供給問題で挫折した。
転移魔法はかなりの魔力量が必要だ。魔力を使いすぎると体温が低下し、程度によっては倒れることもあった。それゆえに、無理して使用する者が出ることを懸念したのだ。だが魔の森の魔力が使えれば問題ない。その上、魔法陣の管理費用は、街道の整備費を流用できた。
「魔力が余ってるなら、使わない手はないだろう」
ルシファーがさらさらと署名して押印する。大公と魔王の署名が入った転移魔法陣設定は、すぐに噂になった。侍従や侍女から漏れたのか。城下町で騒ぎを巻き起こす。好きでダークプレイスに移住したが、里帰りの際に苦労しなくて済むのは吉報だった。
人々の期待を乗せて、提案書は貴族会議を通過して見事採用された。ここからはルキフェルの出番である。魔王城と各地区を結ぶ魔法陣を大量に描き始めた。設置場所ごとに魔法文字が違うため、複製というわけにいかなかったのだ。さらに石板へ刻むため、ドワーフ達が駆り出された。
魔法で掘り込むより、ドワーフの手で彫刻した方が長持ちする。何より、これは公共事業の一環として、人々に利益を分散する目的もあった。ドワーフが働くと、食事を作る者や宿を提供する者が集まってくる。当事者だけじゃなく、多くの人が収益を得られるのだ。
街道整備もある程度予算を割いて、維持することに決まった。交通手段をひとつに絞るのは危険という、ベールの忠告が決め手だ。魔の森が大量の魔力を持て余している間はいいが、何らかの事情で使えなくなった時、街道が森に取り込まれていたら移動手段が消えてしまう。孤立する種族が出ないよう手を打つことは、政を司る魔王城の役目だった。
準備を進める中庭の様子を横目に、ルシファーはお祭り用の食材確保に追われていた。ルキフェルは魔法陣と論文で忙しく、ベールは各種族への伝達に動いている。まだ財務計算中のベルゼビュートを除くと、動けるのは魔王かアスタロトのみ。お祭りに使う物資の調達を手分けして行っていた。
「ルシファー、食器は?」
「アデーレに頼んである」
「椅子が足りないわ」
「手配済みだ」
リリスに応対するたび、食材の確保が遅れていく。だがルシファーは気にしなかった。災害があって備蓄を大量に消費したため、とにかく買い入れる旨を商人達に伝達済みだった。お祭りもあると知れば、彼らが大量にかき集めてくるのは間違いない。楽観的な魔王はお茶を飲みながら、必要物資の一覧表に「賞品」と追加した。
作家支援の対象から外れても、参加賞を出すことにしたのだ。これは私財からの出費なので、出金の書類も作成した。そこへ入ってきた大公女達が、手配の済んだ物を記載した書類を並べる。
「敷物の不足は手配しました」
「鉄板が古くなったので新調した方がいいですね」
「あら、それならトングも一緒にお願いしたいわ」
追加で必要となる道具を目の前の紙に書き足し、ルシファーは許可の印を押した。その紙の裏が、個人資産の出金書類だったため、思わぬ金額が引き出されてびっくりするのは……数日後のことである。
魔法陣を利用して、魔王城との通信や行き来が定期的に実現できれば、住んでいる場所による不利や偏りが是正できるのだ。魔族にとって目から鱗、画期的だった。ずいぶん昔に設置を検討したことはあるが、魔力の供給問題で挫折した。
転移魔法はかなりの魔力量が必要だ。魔力を使いすぎると体温が低下し、程度によっては倒れることもあった。それゆえに、無理して使用する者が出ることを懸念したのだ。だが魔の森の魔力が使えれば問題ない。その上、魔法陣の管理費用は、街道の整備費を流用できた。
「魔力が余ってるなら、使わない手はないだろう」
ルシファーがさらさらと署名して押印する。大公と魔王の署名が入った転移魔法陣設定は、すぐに噂になった。侍従や侍女から漏れたのか。城下町で騒ぎを巻き起こす。好きでダークプレイスに移住したが、里帰りの際に苦労しなくて済むのは吉報だった。
人々の期待を乗せて、提案書は貴族会議を通過して見事採用された。ここからはルキフェルの出番である。魔王城と各地区を結ぶ魔法陣を大量に描き始めた。設置場所ごとに魔法文字が違うため、複製というわけにいかなかったのだ。さらに石板へ刻むため、ドワーフ達が駆り出された。
魔法で掘り込むより、ドワーフの手で彫刻した方が長持ちする。何より、これは公共事業の一環として、人々に利益を分散する目的もあった。ドワーフが働くと、食事を作る者や宿を提供する者が集まってくる。当事者だけじゃなく、多くの人が収益を得られるのだ。
街道整備もある程度予算を割いて、維持することに決まった。交通手段をひとつに絞るのは危険という、ベールの忠告が決め手だ。魔の森が大量の魔力を持て余している間はいいが、何らかの事情で使えなくなった時、街道が森に取り込まれていたら移動手段が消えてしまう。孤立する種族が出ないよう手を打つことは、政を司る魔王城の役目だった。
準備を進める中庭の様子を横目に、ルシファーはお祭り用の食材確保に追われていた。ルキフェルは魔法陣と論文で忙しく、ベールは各種族への伝達に動いている。まだ財務計算中のベルゼビュートを除くと、動けるのは魔王かアスタロトのみ。お祭りに使う物資の調達を手分けして行っていた。
「ルシファー、食器は?」
「アデーレに頼んである」
「椅子が足りないわ」
「手配済みだ」
リリスに応対するたび、食材の確保が遅れていく。だがルシファーは気にしなかった。災害があって備蓄を大量に消費したため、とにかく買い入れる旨を商人達に伝達済みだった。お祭りもあると知れば、彼らが大量にかき集めてくるのは間違いない。楽観的な魔王はお茶を飲みながら、必要物資の一覧表に「賞品」と追加した。
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「あら、それならトングも一緒にお願いしたいわ」
追加で必要となる道具を目の前の紙に書き足し、ルシファーは許可の印を押した。その紙の裏が、個人資産の出金書類だったため、思わぬ金額が引き出されてびっくりするのは……数日後のことである。
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