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90章 臆病な精霊女王の恋愛事情
1227. 女同士の密約?
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まったく興味がないというか。昔は一緒に風呂に入ったこともあれば、戦闘シーンで予期せず素っ裸になった彼女を見たこともある。だが、まったく魔王の魔王が反応しなかった。それがいい証拠だろう。姉に興奮する弟ではなかったと説明したら、リリスは笑い出した。
許してもらえるらしい。ほっとしながら彼女と客間へ急ぐ。髪や肌の水分は転移の際に指定外にして乾かしたが、酔っ払いだ。あのまま眠ったら体調を崩す……いや、風邪の方が逃げるかも知れないが。放置して拗ねられると面倒だった。
「ベルゼ姉さんに私が布団をかけてくるわ」
姉に等しいと説明され、さきほど理解した。それでもリリスは、ルシファーが一緒に入室することを拒んだ。大きい胸が好きになると悲しいと言われたら、大人しく外で待つ選択肢しかない。ルシファーはリリスの結界を重ね掛けした上で、廊下で待つことになった。
「ベルゼ姉さん? 冷えちゃうわ」
「リリスちゃんはぁ、いいわよねぇ! もう男がいるんだものぉ! あたくしだって、あたくしぃ……うわぁあああ」
あ、面倒くさい状態になっていた。廊下で顔を引きつらせるルシファーは、リリスだけの入室を許したことを後悔する。後を追いたいが、リリスに誤解されても困る。うろうろしながら扉の向こうを窺う、困り顔の魔王を目撃する者がいないことは幸いだった。
「姉さんたら。美人なんだもの、いくらでも男性はいるでしょ?」
「……家事が出来ないから」
「計算できるじゃない。それにこの見事なプロポーションなら、男性はメロメロじゃない?」
「ルシファーもベールもアスタロトも……ルキフェルまで。あたくしを女扱いしないじゃない!!」
「精霊はダメなの?」
一番種族的に近いので、価値観や基準も近い上、料理をする必要もない相手を口にするリリス。宥めながらも音がするので、上に毛布かシーツを掛けているのだろう。予想しながら扉に耳を押し付けるルシファーが、透視の魔法陣を使うか悩む。
「恐れ多いそうよ」
口調から酔っ払いの伸ばした語尾が消えてきた。酔いから醒めたらしい。
「幻獣や神獣なんてどう?」
人型を取れる種族を選ぶあたり、リリスも考えている。
「……種族保護ですって」
ベール辺りに昔叱られたな、そういえば。あの頃は幻獣や神獣の数が激減していて、危険なので種族保護の命令を出したが、今なら問題ないはず。教えようにも声を掛けるタイミングが計れなくて、ルシファーはやきもきする。
「じゃあドラゴン系は?」
強い女性が好まれるし、長寿で人化できる個体が多い。神龍は数がやや少ないが、竜人や竜であれば問題ないだろう。
「前に叩きのめしちゃって、その時に化け物呼ばわりされたわ」
「いつのお話?」
「5万年ほど前かしら」
つい先日のように答えるベルゼビュートだが、先日亡くなった神龍の長老モレクでさえ2万歳程度だったか。ならば、5万年前の騒動を知っているのは魔王と大公だけだ。もう忘れてもいいだろう。
「ロキちゃんに頼んで、誰か紹介してもらうわ。ベルゼ姉さんは人気があるんだもの、きっといい人が見つかるわよ」
「そう? それなら……見合いするわ」
「見合いなんて考えちゃダメよ。結婚するための見合いじゃなくて、素敵な人と出会うためのチャンスなのよ!」
この世に生まれて16年前後の少女に諭される8万歳前後の女大公――愛され続けたリリスの言葉に、臆病なベルゼビュートも悩んだ末に頷いた。何度裏切られても信じるところが、ベルゼビュートの長所だ。面倒見もいいし、誰かよい相手が見つかればいい。
ほっとしながらも、ルシファーは張りついた扉から離れなかった。
許してもらえるらしい。ほっとしながら彼女と客間へ急ぐ。髪や肌の水分は転移の際に指定外にして乾かしたが、酔っ払いだ。あのまま眠ったら体調を崩す……いや、風邪の方が逃げるかも知れないが。放置して拗ねられると面倒だった。
「ベルゼ姉さんに私が布団をかけてくるわ」
姉に等しいと説明され、さきほど理解した。それでもリリスは、ルシファーが一緒に入室することを拒んだ。大きい胸が好きになると悲しいと言われたら、大人しく外で待つ選択肢しかない。ルシファーはリリスの結界を重ね掛けした上で、廊下で待つことになった。
「ベルゼ姉さん? 冷えちゃうわ」
「リリスちゃんはぁ、いいわよねぇ! もう男がいるんだものぉ! あたくしだって、あたくしぃ……うわぁあああ」
あ、面倒くさい状態になっていた。廊下で顔を引きつらせるルシファーは、リリスだけの入室を許したことを後悔する。後を追いたいが、リリスに誤解されても困る。うろうろしながら扉の向こうを窺う、困り顔の魔王を目撃する者がいないことは幸いだった。
「姉さんたら。美人なんだもの、いくらでも男性はいるでしょ?」
「……家事が出来ないから」
「計算できるじゃない。それにこの見事なプロポーションなら、男性はメロメロじゃない?」
「ルシファーもベールもアスタロトも……ルキフェルまで。あたくしを女扱いしないじゃない!!」
「精霊はダメなの?」
一番種族的に近いので、価値観や基準も近い上、料理をする必要もない相手を口にするリリス。宥めながらも音がするので、上に毛布かシーツを掛けているのだろう。予想しながら扉に耳を押し付けるルシファーが、透視の魔法陣を使うか悩む。
「恐れ多いそうよ」
口調から酔っ払いの伸ばした語尾が消えてきた。酔いから醒めたらしい。
「幻獣や神獣なんてどう?」
人型を取れる種族を選ぶあたり、リリスも考えている。
「……種族保護ですって」
ベール辺りに昔叱られたな、そういえば。あの頃は幻獣や神獣の数が激減していて、危険なので種族保護の命令を出したが、今なら問題ないはず。教えようにも声を掛けるタイミングが計れなくて、ルシファーはやきもきする。
「じゃあドラゴン系は?」
強い女性が好まれるし、長寿で人化できる個体が多い。神龍は数がやや少ないが、竜人や竜であれば問題ないだろう。
「前に叩きのめしちゃって、その時に化け物呼ばわりされたわ」
「いつのお話?」
「5万年ほど前かしら」
つい先日のように答えるベルゼビュートだが、先日亡くなった神龍の長老モレクでさえ2万歳程度だったか。ならば、5万年前の騒動を知っているのは魔王と大公だけだ。もう忘れてもいいだろう。
「ロキちゃんに頼んで、誰か紹介してもらうわ。ベルゼ姉さんは人気があるんだもの、きっといい人が見つかるわよ」
「そう? それなら……見合いするわ」
「見合いなんて考えちゃダメよ。結婚するための見合いじゃなくて、素敵な人と出会うためのチャンスなのよ!」
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ほっとしながらも、ルシファーは張りついた扉から離れなかった。
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