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87章 お勉強の一部やり直し
1194. 事故による魔王の惨劇
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夜になってようやく引き上げる。リリスはまだ興奮状態で続けたいようだが、明日もあるからと言い聞かせた。現在、風呂場で体を洗ったところである。
「明日も朝から頑張るわ」
「数日続くから、気合を入れると続かないぞ」
お祭り騒ぎになってしまえば、通常一週間は騒ぎっぱなしだ。慣れている分、ルシファーは冷静だった。洗ったばかりのリリスの黒髪を結い上げ、湯船に浸かるよう促す。その間に自分の体を洗おうとしたのだが、スポンジを手にしたリリスが後ろに回り込んだ。
「ん?」
「私が洗うわ」
幼い頃もやりたがったし、何かのスイッチが入ったのだろう。ここしばらくはテント生活で、一緒に入浴していなかった。しかも離れている時間も長かったため、触れ合いを求めているのか。かつて育児書を丸暗記したルシファーは、曖昧な知識で納得した。
背中を洗うリリスのために純白の三つ編みをくるりと巻いて固定する。背中が終わったら満足すると思いきや、腕を洗い始めた。微笑ましい感覚で好きにさせていると、首周りから胸の方へ回り込む。さすがにそろそろ……と思ったところで、リリスは方向転換した。
「足を忘れたわ」
ルシファーの足首あたりから上にスポンジを滑らせる。際どい所で反対の足を洗い始めた。止めた方がいいと思ったが、判断が遅かったらしい。無造作にスポンジで大事な魔王の魔王を擦られ、悲鳴が出た。びっくりしたリリスが立ち上がり、泡で滑って転ぶ。結界はあるが危険を察知して受け止めるルシファーを下敷きにして、リリスはルシファーの腹の上に足を突いた。
な、内臓がでる。痛みに転がったルシファーの上に覆いかぶさるリリスが、焦った様子でアデーレを呼んだ。
「大変なことになってしまったわ、ごめんなさい」
謝る彼女にタオルを被せるアデーレは、溜め息をついた。
「……この状況は、いろいろと問題ですわ。陛下」
「ぐっ、う……わか、って」
分かっているが、不可抗力だ。呻きながら訴えるルシファーを残し、泡を流したリリスはアデーレに回収された。ひとまず体を覆い隠さなくては、助けを呼ぶことも出来ない。しょんぼりしたリリスは鼻を啜った。
「ごめんなさい、ルシファーを洗ってゆっくりして欲しかったの」
「お気持ちは間違っておりませんが、少しお勉強してからにいたしましょうか」
股間を手で押さえる様子から、乱暴に扱われたのは間違いない。リリスは腹を踏んだせいだと思っているようだった。いろいろな部分を含め、性教育のやり直しのスケジュールを早急に立てた方がいいですね。アデーレは溜め息をついてから、夫であるアスタロトを呼んだ。
「陛下、まさかとは思いますが襲って返り討ちですか?」
勢いよく首を横に振るルシファーの魔王の状態を確認し、アスタロトはうわぁと顔をしかめた。これは痛そうだ、というか絶対に痛い。リリス以外なら問題なかったのだが、常時展開の結界を通過するお姫様の一撃は魔王を撃沈していた。
「同情申し上げますよ」
さすがに追い打ちをかける気になれず、アスタロトに心底同情された。湯で泡を流した後に治癒を施したルシファーは、まずリリスを心配した。魔王妃用の隣室へ隔離されたリリスに会いに行こうとするルシファーを引き留め、アスタロトは言い聞かせる。
「この祭りが終わったら、リリス姫の性教育をやり直します。いいですね?」
「逆にこちらから頼む」
同じ惨劇を引き起こさないよう、しっかり教育してくれ。ルシファーの許可が出たことで、アデーレも動きやすい。ついでに大公女達も一緒に復習させた方がいいでしょうか。リリスと同じ教育しか受けていないと考えると不安になってきました。側近の呟きに、まだ顔色の悪いルシファーは神妙に頷いた。
いろいろ落ち着かせたルシファーが迎えに行くと、鼻を啜り涙を零すリリスに迎えられる。抱きしめて落ち着かせ、その夜は静かに過ぎていった。
翌朝、ルシファーの悲鳴を聞いた侍従達は「ご無事で何よりです」「ご武運を」と気の毒そうに同情を露わにした。なお、浴室内の話がここまで漏れた原因のひとつは、ベルゼビュートの軽口だったとか。
「明日も朝から頑張るわ」
「数日続くから、気合を入れると続かないぞ」
お祭り騒ぎになってしまえば、通常一週間は騒ぎっぱなしだ。慣れている分、ルシファーは冷静だった。洗ったばかりのリリスの黒髪を結い上げ、湯船に浸かるよう促す。その間に自分の体を洗おうとしたのだが、スポンジを手にしたリリスが後ろに回り込んだ。
「ん?」
「私が洗うわ」
幼い頃もやりたがったし、何かのスイッチが入ったのだろう。ここしばらくはテント生活で、一緒に入浴していなかった。しかも離れている時間も長かったため、触れ合いを求めているのか。かつて育児書を丸暗記したルシファーは、曖昧な知識で納得した。
背中を洗うリリスのために純白の三つ編みをくるりと巻いて固定する。背中が終わったら満足すると思いきや、腕を洗い始めた。微笑ましい感覚で好きにさせていると、首周りから胸の方へ回り込む。さすがにそろそろ……と思ったところで、リリスは方向転換した。
「足を忘れたわ」
ルシファーの足首あたりから上にスポンジを滑らせる。際どい所で反対の足を洗い始めた。止めた方がいいと思ったが、判断が遅かったらしい。無造作にスポンジで大事な魔王の魔王を擦られ、悲鳴が出た。びっくりしたリリスが立ち上がり、泡で滑って転ぶ。結界はあるが危険を察知して受け止めるルシファーを下敷きにして、リリスはルシファーの腹の上に足を突いた。
な、内臓がでる。痛みに転がったルシファーの上に覆いかぶさるリリスが、焦った様子でアデーレを呼んだ。
「大変なことになってしまったわ、ごめんなさい」
謝る彼女にタオルを被せるアデーレは、溜め息をついた。
「……この状況は、いろいろと問題ですわ。陛下」
「ぐっ、う……わか、って」
分かっているが、不可抗力だ。呻きながら訴えるルシファーを残し、泡を流したリリスはアデーレに回収された。ひとまず体を覆い隠さなくては、助けを呼ぶことも出来ない。しょんぼりしたリリスは鼻を啜った。
「ごめんなさい、ルシファーを洗ってゆっくりして欲しかったの」
「お気持ちは間違っておりませんが、少しお勉強してからにいたしましょうか」
股間を手で押さえる様子から、乱暴に扱われたのは間違いない。リリスは腹を踏んだせいだと思っているようだった。いろいろな部分を含め、性教育のやり直しのスケジュールを早急に立てた方がいいですね。アデーレは溜め息をついてから、夫であるアスタロトを呼んだ。
「陛下、まさかとは思いますが襲って返り討ちですか?」
勢いよく首を横に振るルシファーの魔王の状態を確認し、アスタロトはうわぁと顔をしかめた。これは痛そうだ、というか絶対に痛い。リリス以外なら問題なかったのだが、常時展開の結界を通過するお姫様の一撃は魔王を撃沈していた。
「同情申し上げますよ」
さすがに追い打ちをかける気になれず、アスタロトに心底同情された。湯で泡を流した後に治癒を施したルシファーは、まずリリスを心配した。魔王妃用の隣室へ隔離されたリリスに会いに行こうとするルシファーを引き留め、アスタロトは言い聞かせる。
「この祭りが終わったら、リリス姫の性教育をやり直します。いいですね?」
「逆にこちらから頼む」
同じ惨劇を引き起こさないよう、しっかり教育してくれ。ルシファーの許可が出たことで、アデーレも動きやすい。ついでに大公女達も一緒に復習させた方がいいでしょうか。リリスと同じ教育しか受けていないと考えると不安になってきました。側近の呟きに、まだ顔色の悪いルシファーは神妙に頷いた。
いろいろ落ち着かせたルシファーが迎えに行くと、鼻を啜り涙を零すリリスに迎えられる。抱きしめて落ち着かせ、その夜は静かに過ぎていった。
翌朝、ルシファーの悲鳴を聞いた侍従達は「ご無事で何よりです」「ご武運を」と気の毒そうに同情を露わにした。なお、浴室内の話がここまで漏れた原因のひとつは、ベルゼビュートの軽口だったとか。
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