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81章 予行演習? 誰の入れ知恵だ
1125. あっちでも発見された
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ころんと転がり出たレラジェは、自分を抱き締める形で寝転がる。卵の殻は綺麗に割れたが、中身は無事だろうか。慌てて駆け寄って抱き上げた。ルシファーの腕の中で、レラジェはもごもごと口を動かす。おしゃぶりを思い出し、口に宛がってみた。
ぱくりと咥えたレラジェが、大きな目をぱちりと開ける。きょろきょろと周囲を確認して、ふわぁと欠伸をした。口の中に落ちるおしゃぶりを、慌てて指で確保した。うっかり飲み込もうとしたら、喉に詰まってしまう。涎だらけのおしゃぶりを手に、反対の腕で赤子を抱く魔王――既視感のある光景に、アスタロトが苦笑いした。
「レラジェを攫ったワイバーンはどこへ行ったんだ?」
「まだ判明しておりません」
アスタロトもまだ情報は掴んでいない。状況があまりよい方向ではない気がした。アスタロトとルキフェルが調査して、ベールが魔王軍を動かしているのに判明しない犯人……ルキフェルは何やら心当たりがあると言ってたが。
コウモリがいる洞窟に子供を置いていけば、アスタロトに連絡が入る。だが、ここに置いて行かれたレラジェは卵だった。だからコウモリ達も報告しなかったとしたら。どこまでが作戦で、どこからが偶然なのか。レラジェが卵に戻る状況を考えれば、攻撃から身を守った可能性がある。
嫌な予測ばかりが現実味を帯びる状況で、ルシファーとアスタロトは顔を見合わせた。レラジェはルシファーの持つおしゃぶりに噛みつき、ぎりぎりと歯を立てている。覗くリリスは「可愛いわ」とのんびりした感想で、赤子の黒髪を撫でていた。
――ルシファー、来て! 見つけた!!
すでに卵は見つけたのに、見つけた? 主犯か、ワイバーンだろう。ルキフェルの魔力の位置を特定し、アスタロトごと転移する。残された卵の殻を、コウモリ達が不思議そうに突いた。
どんっ!
激しい爆風に押される。結界を広げたルシファーだが、外側が埃まみれになってしまった。視界が遮られた状態に眉を寄せれば、腕を組んだリリスが無邪気に強請る。
「レラジェは私が抱っこするから、ルシファーは戦ってきていいわよ」
譲ってあげる、そんなニュアンスにルシファーも対応に困る。積極的に戦う気はないし、ルキフェルの獲物を取ったら泣かれそうだ。あとでベールの説教を聞くのも御免だった。結界内でアスタロトが肩を竦める。
「様子を見ましょう」
それもどうかと思うが、ルキフェルを負かす敵もいないだろう。下手に手出しするより見守る方が被害が少ない。あっさり割り切ったルシファーは頷いた。
「そうするか。リリス、落とすなよ」
レラジェを抱っこするリリスは、その髪色などが同じことも相まって親子でも通る。多少幼い外見と口調が、すごく背徳的だった。うっとり見惚れるルシファーを、アスタロトが肘で小突いた。
「まだ手出しは出来ませんよ」
「わかってる」
リリスに関する意見交換だが、リリスは違う意味に受け取った。外の戦いの話と考え、笑顔で口を挟む。
「問題ないと思うわ」
「問題あります。くれぐれも自重してください」
アスタロトは遮って念を押した。言われなくてもリリスに負担を強いる気はないし、先日の性教育が未完了状態の彼女を押し倒す勇気はない。平手ならまだしも「二度と触らないで」と言われたら、立ち直れなくなること請け合いだった。
結界の外では火花が飛び散り、巨大な青いドラゴンが別の大型魔獣を掴んで放り投げている。珍しく竜化して戦ったようだ。その分被害も大きく、周囲の森がかなり焼けていた。
「ここ……ベールの領地ですね」
「ああ、それなら叱られる心配はない」
壊しているのは、ベールが目に入れても痛くないほど可愛がるルキフェルだ。領地が灰になろうと許すだろう。問題はこの近くに生息する貴重な神獣や幻獣がいないかどうか。撒き散らしたブレスのせいで荒れた磁場の向こう側をさらりと確認し、ルシファーは頷いた。
「避難は終わってるようだ」
どうやら準備万全で仕掛けたらしい。ここはルキフェル大公のお手並み拝見と行こう。そんな魔王一行は、頑丈な結界内で赤子を抱いて戦いが落ち着くのを待った。
ぱくりと咥えたレラジェが、大きな目をぱちりと開ける。きょろきょろと周囲を確認して、ふわぁと欠伸をした。口の中に落ちるおしゃぶりを、慌てて指で確保した。うっかり飲み込もうとしたら、喉に詰まってしまう。涎だらけのおしゃぶりを手に、反対の腕で赤子を抱く魔王――既視感のある光景に、アスタロトが苦笑いした。
「レラジェを攫ったワイバーンはどこへ行ったんだ?」
「まだ判明しておりません」
アスタロトもまだ情報は掴んでいない。状況があまりよい方向ではない気がした。アスタロトとルキフェルが調査して、ベールが魔王軍を動かしているのに判明しない犯人……ルキフェルは何やら心当たりがあると言ってたが。
コウモリがいる洞窟に子供を置いていけば、アスタロトに連絡が入る。だが、ここに置いて行かれたレラジェは卵だった。だからコウモリ達も報告しなかったとしたら。どこまでが作戦で、どこからが偶然なのか。レラジェが卵に戻る状況を考えれば、攻撃から身を守った可能性がある。
嫌な予測ばかりが現実味を帯びる状況で、ルシファーとアスタロトは顔を見合わせた。レラジェはルシファーの持つおしゃぶりに噛みつき、ぎりぎりと歯を立てている。覗くリリスは「可愛いわ」とのんびりした感想で、赤子の黒髪を撫でていた。
――ルシファー、来て! 見つけた!!
すでに卵は見つけたのに、見つけた? 主犯か、ワイバーンだろう。ルキフェルの魔力の位置を特定し、アスタロトごと転移する。残された卵の殻を、コウモリ達が不思議そうに突いた。
どんっ!
激しい爆風に押される。結界を広げたルシファーだが、外側が埃まみれになってしまった。視界が遮られた状態に眉を寄せれば、腕を組んだリリスが無邪気に強請る。
「レラジェは私が抱っこするから、ルシファーは戦ってきていいわよ」
譲ってあげる、そんなニュアンスにルシファーも対応に困る。積極的に戦う気はないし、ルキフェルの獲物を取ったら泣かれそうだ。あとでベールの説教を聞くのも御免だった。結界内でアスタロトが肩を竦める。
「様子を見ましょう」
それもどうかと思うが、ルキフェルを負かす敵もいないだろう。下手に手出しするより見守る方が被害が少ない。あっさり割り切ったルシファーは頷いた。
「そうするか。リリス、落とすなよ」
レラジェを抱っこするリリスは、その髪色などが同じことも相まって親子でも通る。多少幼い外見と口調が、すごく背徳的だった。うっとり見惚れるルシファーを、アスタロトが肘で小突いた。
「まだ手出しは出来ませんよ」
「わかってる」
リリスに関する意見交換だが、リリスは違う意味に受け取った。外の戦いの話と考え、笑顔で口を挟む。
「問題ないと思うわ」
「問題あります。くれぐれも自重してください」
アスタロトは遮って念を押した。言われなくてもリリスに負担を強いる気はないし、先日の性教育が未完了状態の彼女を押し倒す勇気はない。平手ならまだしも「二度と触らないで」と言われたら、立ち直れなくなること請け合いだった。
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「ここ……ベールの領地ですね」
「ああ、それなら叱られる心配はない」
壊しているのは、ベールが目に入れても痛くないほど可愛がるルキフェルだ。領地が灰になろうと許すだろう。問題はこの近くに生息する貴重な神獣や幻獣がいないかどうか。撒き散らしたブレスのせいで荒れた磁場の向こう側をさらりと確認し、ルシファーは頷いた。
「避難は終わってるようだ」
どうやら準備万全で仕掛けたらしい。ここはルキフェル大公のお手並み拝見と行こう。そんな魔王一行は、頑丈な結界内で赤子を抱いて戦いが落ち着くのを待った。
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