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77章 解決すれば問題ない
1054. アベルが倒れた?
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栄養失調と同じ、そう判断したアンナはふと気付く。あの爆発に巻き込まれた私達は検査対象だったけど、同じ食生活をしていたのはアベルも含まれる。もしかして彼も同じじゃないかしら。
その疑問を素直に侍従達に相談したところ、すぐにルキフェルが飛んできた。文字通り背の翼で、窓から入室したのはびっくりしたけれど。
「ごめんね、庭にいたから」
話を聞いて直接きたんだよ。そう告げられれば、別に着替え中でもないし反論することもない。頷いたアンナが、慌てて先程の説明を繰り返した。
アンナ達が作った料理を三食共にしていたアベルも、同じ症状が出るのではないか? 単純に突きつけられた疑問に、ルキフェルは頷く。考えられる事態だった。すぐに保護の手配を整え、魔王城から軍を動かしてもらう。
「ありがとう、犠牲が出てからでは遅いし。何より日本人はデータが少ない新種族だから、保護対象なんだよ」
気づけばよかったと苦笑いするルキフェルに、アンナはホッとした。しかし続いて飛び込んだ情報に青ざめる。
「アベルを捕まえた? 魔王城で……倒れて、え?」
通信の内容を繰り返すルキフェルの言葉が詰まり、彼は室内から転移する。消えてしまった大公の残した不吉な言葉に、イザヤもアンナも嫌な想像ばかりが膨らんだ。
魔王城で発見されたアベルが倒れていた。もう手遅れだろうか。自分達のように早く保護されれば、無事だったのか? 疑問は後悔を生み、すぐにアベルを保護してほしいと言わなかった自分達への自責となる。
「アベル、ごめんなさい」
死んでしまうかもしれない。どうしよう、3人で頑張っていこうと決めたのに、彼のことを忘れて兄といちゃつこうとしてしまった。その罪悪感に押しつぶされそうな妹を、イザヤは抱き寄せる。震える肩を包み、大丈夫だと根拠のない願いを繰り返した。
どのくらい経っただろう。実験の食事が運ばれてきた。驚くほど手の込んだ料理は、煮込みだ。湯気が立ち上り、美味しそうな匂いが部屋に広がった。
「シチュー?」
「はい、野菜がたくさん食べられますから」
実験なので、肉や魚より野菜を食べることに重点が置かれたようだ。獣人だと話は違うのだろう。つまり種族により、出されるメニューは異なる可能性がある。
目の前に置かれた料理の前に座ったものの、胸がつかえて入っていかない。今後の魔族のために食べなくてはいけないけれど、今の気持ちのまま食べることは難しかった。少しずつシチューの湯気が減っていく。冷めてしまう。作った人に申し訳ないと思いながら、何とか口に運んだ。
「あ、もう食べてた? アベルを連れてきたよ」
食事中の部屋に転移したルキフェルに気づいたイザヤが、アンナを庇う位置に立った。肩を貸す形で連れてきたアベルを転がす。それから見守っていた侍従達に隣の空き部屋を用意するよう指示した。
転がったアベルは顔色が悪いものの、表情は明るい。
「アベル、大丈夫なの?」
「そうだ。体調が悪いなら……」
仲間に話しかけられたアベルは、口ではなく腹で返事をした。ぐぅ……大きく鳴った腹の虫に、目を見開いたアンナが笑い出す。心配して損したわ。そう思いながら、無事な姿に感謝した。
イザヤも苦笑いして食卓へ誘導する。だがここでストップがかかった。
「分けちゃダメ。実験だから与えられた分は完食すること。アベルの分は用意するから」
ルキフェルの言葉を受けて、1人が部屋を飛び出した。用意されると言われても、空腹を主張する人の前で食べるのは気が引けた。結局、完全にシチューが冷めるのをじっと見つめる。
「先に食べてください」
社交辞令、そう受け取るのは日本人の性なのか。冷めたシチューはルキフェルが温風で温め直し、アベルの分が届けられようやく食事を楽しむことが出来た。
その疑問を素直に侍従達に相談したところ、すぐにルキフェルが飛んできた。文字通り背の翼で、窓から入室したのはびっくりしたけれど。
「ごめんね、庭にいたから」
話を聞いて直接きたんだよ。そう告げられれば、別に着替え中でもないし反論することもない。頷いたアンナが、慌てて先程の説明を繰り返した。
アンナ達が作った料理を三食共にしていたアベルも、同じ症状が出るのではないか? 単純に突きつけられた疑問に、ルキフェルは頷く。考えられる事態だった。すぐに保護の手配を整え、魔王城から軍を動かしてもらう。
「ありがとう、犠牲が出てからでは遅いし。何より日本人はデータが少ない新種族だから、保護対象なんだよ」
気づけばよかったと苦笑いするルキフェルに、アンナはホッとした。しかし続いて飛び込んだ情報に青ざめる。
「アベルを捕まえた? 魔王城で……倒れて、え?」
通信の内容を繰り返すルキフェルの言葉が詰まり、彼は室内から転移する。消えてしまった大公の残した不吉な言葉に、イザヤもアンナも嫌な想像ばかりが膨らんだ。
魔王城で発見されたアベルが倒れていた。もう手遅れだろうか。自分達のように早く保護されれば、無事だったのか? 疑問は後悔を生み、すぐにアベルを保護してほしいと言わなかった自分達への自責となる。
「アベル、ごめんなさい」
死んでしまうかもしれない。どうしよう、3人で頑張っていこうと決めたのに、彼のことを忘れて兄といちゃつこうとしてしまった。その罪悪感に押しつぶされそうな妹を、イザヤは抱き寄せる。震える肩を包み、大丈夫だと根拠のない願いを繰り返した。
どのくらい経っただろう。実験の食事が運ばれてきた。驚くほど手の込んだ料理は、煮込みだ。湯気が立ち上り、美味しそうな匂いが部屋に広がった。
「シチュー?」
「はい、野菜がたくさん食べられますから」
実験なので、肉や魚より野菜を食べることに重点が置かれたようだ。獣人だと話は違うのだろう。つまり種族により、出されるメニューは異なる可能性がある。
目の前に置かれた料理の前に座ったものの、胸がつかえて入っていかない。今後の魔族のために食べなくてはいけないけれど、今の気持ちのまま食べることは難しかった。少しずつシチューの湯気が減っていく。冷めてしまう。作った人に申し訳ないと思いながら、何とか口に運んだ。
「あ、もう食べてた? アベルを連れてきたよ」
食事中の部屋に転移したルキフェルに気づいたイザヤが、アンナを庇う位置に立った。肩を貸す形で連れてきたアベルを転がす。それから見守っていた侍従達に隣の空き部屋を用意するよう指示した。
転がったアベルは顔色が悪いものの、表情は明るい。
「アベル、大丈夫なの?」
「そうだ。体調が悪いなら……」
仲間に話しかけられたアベルは、口ではなく腹で返事をした。ぐぅ……大きく鳴った腹の虫に、目を見開いたアンナが笑い出す。心配して損したわ。そう思いながら、無事な姿に感謝した。
イザヤも苦笑いして食卓へ誘導する。だがここでストップがかかった。
「分けちゃダメ。実験だから与えられた分は完食すること。アベルの分は用意するから」
ルキフェルの言葉を受けて、1人が部屋を飛び出した。用意されると言われても、空腹を主張する人の前で食べるのは気が引けた。結局、完全にシチューが冷めるのをじっと見つめる。
「先に食べてください」
社交辞令、そう受け取るのは日本人の性なのか。冷めたシチューはルキフェルが温風で温め直し、アベルの分が届けられようやく食事を楽しむことが出来た。
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