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59章 お祭りはそれでも続行
827. 勇者(本物)が勇者(偽)に捕まった?
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突然の爆発に、ルシファーは溜め息をついて立ち上がった。危機感がないのは大公達も同じだ。眉をひそめたアスタロトが口を開く。
「私が見てきましょうか」
「いや、オレが行く……リリスは」
「一緒に行くわ」
腕を絡めて嬉しそうに見上げてくる黒髪の少女に、ルシファーは素直に同意した。どこに隠したって、魔王の隣以上に安全な場所はないのだから。
見える距離なので転移を使わずに歩いていく。煙が立ち上る広場の入口付近は、巨大なドラゴンが身をもって爆破の衝撃を防いだらしい。咳き込むエルフが数人涙目だが、実害はなかった。歩くルシファーの後ろから駆け寄ったヤンが大きな尻尾を振る。
「我が君、姫。背にお乗りください」
「ああ、任せる」
狭い場所でも器用にすり抜けるヤンに任せることにし、背に飛び乗った。視界が高くなったことで、見晴らしがよくなる。巨大な影となって民を守ったのは、エドモンドと数匹の竜だった。こういう場面では神龍より竜の方が表面積が大きいので盾として向いている。
ドラゴンの鱗は硬く、多少の魔法や爆発は凌げた。爆発の原因が人族側の攻撃であったなら、民に被害はなかっただろう。
「陛下っ?」
エドモンドが振り返りざま、人型に戻りながら叫んだ。慌てたドラゴンも羽を畳んで身を伏せる。魔王軍でサタナキア将軍の下につく彼らは、スムーズな人化が無理だと判断したため頭を低くしてルシファーに礼を尽くした。
「ああ、気にせず頭を上げるがよい。それで爆発の原因はなんだ?」
見る限り、民にケガ人はいなかった。集まった城下町の住人や魔王軍、エルフ達は顔を見合わせて振り返る。その視線が示す先で、人族が5人転がっていた。
もう片付いたのだろうか。怪訝そうなルシファーの表情に、エドモンドが説明役を買って出た。
「ご報告いたします。人族が火薬製の爆弾を取り出し、それを我ら竜族が身をもって防ぎました。投げられた爆弾のいくつかが鱗に弾かれて……その……」
投げた人族に跳ね返ったのだ。言葉を濁すエドモンドも予想外だった様子で、困惑していた。攻撃する意図はなく、笑いすぎて痛い腹を抱えて竜化したら弾いていたのだが……すでに火がついた爆弾は止める間もなく破裂した。
「生きてるのか」
「はい。それは確認していますわ」
オレリアが埃で汚れた薄緑の髪をかき上げて微笑んだ。結界を張るのに一役買ったらしいラウムも、埃を被って咳き込んでいる。爆発の影響でえぐれた地面の向こう側に転がる人族の生存は、魔の森の植物経由で確認したという。
「なら大丈夫ね」
あっさり納得したリリスは、風で舞い上がりそうなスカートを押さえるのに必死だ。苦笑いしたルシファーが小さな魔法陣を作って、風の流れを変更した。ほっとした様子のリリスは、アデーレ達に言い聞かされた「足を見せてはいけない」を守れて頬を緩める。
「ったく、騒ぎが大きいから出てきちまったじゃねえか」
ぼやいたアベルが、慌てて敬礼した。巨大フェンリルの上に乗ったルシファーの純白の姿に気づいたのだ。別に魔王軍の軍魔ではないのだから、敬礼は不要なのだが……。
「魔王様、えっとお騒がせしました?」
どういえばいいのか迷った末、疑問形で謝罪するアベルの様子に周囲が笑いの渦に包まれる。折角笑いの発作が収まったのに、エドモンドは呼吸も苦しそうに転がった。気の毒になるが、一度笑いの敷居が下がった状態では仕方ない。
「うわっ、でかい穴だな」
伏せていたドラゴンが人化したため、巨体で隠れていた穴が見えてアベルが声をあげる。ちょっとした池が作れそうな穴の向こうで気を失った人族を見つけ、呆れ顔で腰に手を当てて溜め息をついた。
「もしかして。また偽勇者ですか?」
「ああ。自称勇者とその一行だが……」
「でしょうね~。胸元に下げてる銀のプレートですけど、あれは勇者認定した教会が発行してますから。昔はオレも貰いましたよ」
どこにしまったかな? そんな呟きを零しながら、向こう側へ渡れそうな場所を探すアベルに、エドモンドが穴の上で竜化した。ひょいっと爪の先に引っかけて向こう側へ渡してくれる。
「助かった! ありがとうございま~す」
人族の元へ近づいたアベルは、用心深く手が届かない距離で止まった。覗き込んで顔を確認していく。それから振り返って大声で報告した。
「この聖女なカッコした子と、魔術師は見たことあります! やっぱ教会が残ってるみたいです……えぇえ? うっそぉ!!」
後ろから短剣を突き付けられ、アベルは驚いて素っ頓狂な声をあげる。背中に感じる鋭い刃のちくちくした感じに、召喚者であり当代勇者である青年は目を瞬いた。
「私が見てきましょうか」
「いや、オレが行く……リリスは」
「一緒に行くわ」
腕を絡めて嬉しそうに見上げてくる黒髪の少女に、ルシファーは素直に同意した。どこに隠したって、魔王の隣以上に安全な場所はないのだから。
見える距離なので転移を使わずに歩いていく。煙が立ち上る広場の入口付近は、巨大なドラゴンが身をもって爆破の衝撃を防いだらしい。咳き込むエルフが数人涙目だが、実害はなかった。歩くルシファーの後ろから駆け寄ったヤンが大きな尻尾を振る。
「我が君、姫。背にお乗りください」
「ああ、任せる」
狭い場所でも器用にすり抜けるヤンに任せることにし、背に飛び乗った。視界が高くなったことで、見晴らしがよくなる。巨大な影となって民を守ったのは、エドモンドと数匹の竜だった。こういう場面では神龍より竜の方が表面積が大きいので盾として向いている。
ドラゴンの鱗は硬く、多少の魔法や爆発は凌げた。爆発の原因が人族側の攻撃であったなら、民に被害はなかっただろう。
「陛下っ?」
エドモンドが振り返りざま、人型に戻りながら叫んだ。慌てたドラゴンも羽を畳んで身を伏せる。魔王軍でサタナキア将軍の下につく彼らは、スムーズな人化が無理だと判断したため頭を低くしてルシファーに礼を尽くした。
「ああ、気にせず頭を上げるがよい。それで爆発の原因はなんだ?」
見る限り、民にケガ人はいなかった。集まった城下町の住人や魔王軍、エルフ達は顔を見合わせて振り返る。その視線が示す先で、人族が5人転がっていた。
もう片付いたのだろうか。怪訝そうなルシファーの表情に、エドモンドが説明役を買って出た。
「ご報告いたします。人族が火薬製の爆弾を取り出し、それを我ら竜族が身をもって防ぎました。投げられた爆弾のいくつかが鱗に弾かれて……その……」
投げた人族に跳ね返ったのだ。言葉を濁すエドモンドも予想外だった様子で、困惑していた。攻撃する意図はなく、笑いすぎて痛い腹を抱えて竜化したら弾いていたのだが……すでに火がついた爆弾は止める間もなく破裂した。
「生きてるのか」
「はい。それは確認していますわ」
オレリアが埃で汚れた薄緑の髪をかき上げて微笑んだ。結界を張るのに一役買ったらしいラウムも、埃を被って咳き込んでいる。爆発の影響でえぐれた地面の向こう側に転がる人族の生存は、魔の森の植物経由で確認したという。
「なら大丈夫ね」
あっさり納得したリリスは、風で舞い上がりそうなスカートを押さえるのに必死だ。苦笑いしたルシファーが小さな魔法陣を作って、風の流れを変更した。ほっとした様子のリリスは、アデーレ達に言い聞かされた「足を見せてはいけない」を守れて頬を緩める。
「ったく、騒ぎが大きいから出てきちまったじゃねえか」
ぼやいたアベルが、慌てて敬礼した。巨大フェンリルの上に乗ったルシファーの純白の姿に気づいたのだ。別に魔王軍の軍魔ではないのだから、敬礼は不要なのだが……。
「魔王様、えっとお騒がせしました?」
どういえばいいのか迷った末、疑問形で謝罪するアベルの様子に周囲が笑いの渦に包まれる。折角笑いの発作が収まったのに、エドモンドは呼吸も苦しそうに転がった。気の毒になるが、一度笑いの敷居が下がった状態では仕方ない。
「うわっ、でかい穴だな」
伏せていたドラゴンが人化したため、巨体で隠れていた穴が見えてアベルが声をあげる。ちょっとした池が作れそうな穴の向こうで気を失った人族を見つけ、呆れ顔で腰に手を当てて溜め息をついた。
「もしかして。また偽勇者ですか?」
「ああ。自称勇者とその一行だが……」
「でしょうね~。胸元に下げてる銀のプレートですけど、あれは勇者認定した教会が発行してますから。昔はオレも貰いましたよ」
どこにしまったかな? そんな呟きを零しながら、向こう側へ渡れそうな場所を探すアベルに、エドモンドが穴の上で竜化した。ひょいっと爪の先に引っかけて向こう側へ渡してくれる。
「助かった! ありがとうございま~す」
人族の元へ近づいたアベルは、用心深く手が届かない距離で止まった。覗き込んで顔を確認していく。それから振り返って大声で報告した。
「この聖女なカッコした子と、魔術師は見たことあります! やっぱ教会が残ってるみたいです……えぇえ? うっそぉ!!」
後ろから短剣を突き付けられ、アベルは驚いて素っ頓狂な声をあげる。背中に感じる鋭い刃のちくちくした感じに、召喚者であり当代勇者である青年は目を瞬いた。
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