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52章 不夜城のお祭り騒ぎ
716. 幸せカップル多発警報
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その後もドライアド、魔獣、麒麟、リザードマン、デュラハン、ガギエルと続き……最終的にヴァンパイアで締め括られた。
ご令嬢や奥様方が熱い視線を注いだのは、今回の出場者の中で魔王から褒美を賜った日本人達だ。アベルに恋人ができる日も近いだろう。すでに事実上の妻がいるイザヤですら「第二夫人でいい」と一夫多妻系の獣人女性に狙われていた。
全部で17名、全員を退けたルシファーがヤンに近づく。尻尾を大きく振って信愛を示すフェンリルが地面にぺたんと伏せた。
鼻先を地面につけて伏せたため、背に乗るリリスが近づく。
「もう終わり?」
「いや、最後のイベントがある。このままヤンの上にいてくれ」
ある意味、魔王チャレンジの山場はこの後なのだ。最後のイベントこそ目的であり、見学者がぞろぞろと増えていく。中庭は狭くて危険だと歩き出すルシファーに、リリスが手を伸ばした。
「向こうまで抱っこがいいわ」
「ずっと抱っこしてたいが……さすがにラストは危険だからな」
最強の魔王をして危険だと言わしめるイベントに、レライエは目を輝かせた。今までの壮絶バトルを思い出し、もっと激戦が繰り広げられるのではと期待が高まる。
お姫様抱っこされた、魔王のローブを羽織った寝着の魔王妃候補リリスの姿は、民にとって目の保養だった。幸せそうなルシファーの表情はもちろん、愛らしく手を振って笑顔を振りまく彼女は人気者だ。
「赤ちゃん生まれたのね、おめでとう」
城下町でたまに話をする兎獣人に手を振り、赤子を抱いたリザードマンに声をかける。続いて握手を求めた精霊に指先で応じ、ハルピュイアの青年にも笑顔を振りまいた。おかげで、ぞろぞろと後ろをついてくる人数は増える一方だ。
城門をくぐると、どっと歓声が上がった。夜中とは思えない人の多さに、リリスは驚いて目を見開く。城門の外に駆け付けた人々は、行儀よく広場をあけて輪を描いていた。よく見れば、多数の屋台が店を開き、忙しそうに働く。
焼ける肉の匂いや、甘い菓子類の店がずらりと並ぶ。夜店の多さに、アンナはイザヤと腕を組んで駆け出した。アベルの周囲を複数の女性が囲み、奪い合う様に腕を組んだり手を繋ぐ。オレリアは婚約者の吸血鬼青年と微笑みあい、近くの大木の枝を確保していた。完全に見物モードだ。
「リリス様!!」
魔王妃ご愛用の一文で爆発的に広がった、鎖を編んだり絡める髪型の女性達が一斉に手を振る。青年たちは控えめに手を振るが、ルシファーの視界に入りそうになると手を引っ込めた。アスタロトやベールから出された「魔王陛下に睨まれないための事前通達」が行き届いている証拠だ。
「リリスは人気者だな」
微笑ましいと見守るルシファーへ、リリスは満面の笑みで「ルシファーのお嫁さんだもの」と返す。額と頬にキスをもらうお姫様を見つめ、レライエは複雑な気持ちで腕の中の翡翠竜に視線を落とした。
「もう少し優しくすべきだろうか」
リリスのような愛想の良さも優しさも欠けている気がする。そんな婚約者の呟きに、アムドゥスキアスは疲れた身で起き上がり、ぺろりと口の脇を舐めた。
「私は十分幸せですよ。ライはそのままで魅力的です」
ご令嬢や奥様方が熱い視線を注いだのは、今回の出場者の中で魔王から褒美を賜った日本人達だ。アベルに恋人ができる日も近いだろう。すでに事実上の妻がいるイザヤですら「第二夫人でいい」と一夫多妻系の獣人女性に狙われていた。
全部で17名、全員を退けたルシファーがヤンに近づく。尻尾を大きく振って信愛を示すフェンリルが地面にぺたんと伏せた。
鼻先を地面につけて伏せたため、背に乗るリリスが近づく。
「もう終わり?」
「いや、最後のイベントがある。このままヤンの上にいてくれ」
ある意味、魔王チャレンジの山場はこの後なのだ。最後のイベントこそ目的であり、見学者がぞろぞろと増えていく。中庭は狭くて危険だと歩き出すルシファーに、リリスが手を伸ばした。
「向こうまで抱っこがいいわ」
「ずっと抱っこしてたいが……さすがにラストは危険だからな」
最強の魔王をして危険だと言わしめるイベントに、レライエは目を輝かせた。今までの壮絶バトルを思い出し、もっと激戦が繰り広げられるのではと期待が高まる。
お姫様抱っこされた、魔王のローブを羽織った寝着の魔王妃候補リリスの姿は、民にとって目の保養だった。幸せそうなルシファーの表情はもちろん、愛らしく手を振って笑顔を振りまく彼女は人気者だ。
「赤ちゃん生まれたのね、おめでとう」
城下町でたまに話をする兎獣人に手を振り、赤子を抱いたリザードマンに声をかける。続いて握手を求めた精霊に指先で応じ、ハルピュイアの青年にも笑顔を振りまいた。おかげで、ぞろぞろと後ろをついてくる人数は増える一方だ。
城門をくぐると、どっと歓声が上がった。夜中とは思えない人の多さに、リリスは驚いて目を見開く。城門の外に駆け付けた人々は、行儀よく広場をあけて輪を描いていた。よく見れば、多数の屋台が店を開き、忙しそうに働く。
焼ける肉の匂いや、甘い菓子類の店がずらりと並ぶ。夜店の多さに、アンナはイザヤと腕を組んで駆け出した。アベルの周囲を複数の女性が囲み、奪い合う様に腕を組んだり手を繋ぐ。オレリアは婚約者の吸血鬼青年と微笑みあい、近くの大木の枝を確保していた。完全に見物モードだ。
「リリス様!!」
魔王妃ご愛用の一文で爆発的に広がった、鎖を編んだり絡める髪型の女性達が一斉に手を振る。青年たちは控えめに手を振るが、ルシファーの視界に入りそうになると手を引っ込めた。アスタロトやベールから出された「魔王陛下に睨まれないための事前通達」が行き届いている証拠だ。
「リリスは人気者だな」
微笑ましいと見守るルシファーへ、リリスは満面の笑みで「ルシファーのお嫁さんだもの」と返す。額と頬にキスをもらうお姫様を見つめ、レライエは複雑な気持ちで腕の中の翡翠竜に視線を落とした。
「もう少し優しくすべきだろうか」
リリスのような愛想の良さも優しさも欠けている気がする。そんな婚約者の呟きに、アムドゥスキアスは疲れた身で起き上がり、ぺろりと口の脇を舐めた。
「私は十分幸せですよ。ライはそのままで魅力的です」
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