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52章 不夜城のお祭り騒ぎ
711. 恒例の騒動
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近づくアスタロトの気配に気付いたルシファーは、腕の中で眠るリリスを優しく離した。腕枕をそっと外した辺りで、アスタロトが到着する。中の様子を窺う側近へ、ひらりと手を振って待つように伝えた。
抜き足差し足でベッドから降り、彼女が起きないか確認してから部屋を出た。呪われた指輪事件で壊れた私室はまだ修復前なので、客間の一角を繋げて使用している。
リリスが眠る寝室を結界で囲い、遮音も補強した。それからようやく口を開く。ぱちんと指を鳴らして着替えたものの、服装は簡易なローブだった。また戻って眠るつもりなのだろう。
「どうした?」
事件か襲撃か。問うルシファーの表情は、愛し子に微笑む姿が嘘のように凛々しい。幾分険しい声で尋ねた魔王へ、臣下の礼をとった側近は言葉を選びながら状況を報告した。
「恒例の騒動です」
言われてすぐに思い当たるのも悲しいが、それだけ繰り返された騒動だ。仲裁も飽きるほど行ってきた。
幸いにして前回は簡単に収まったが、寝ているのを承知で迎えに来たのなら、今回も大きく発展してしまったのだろう。
「わかった」
対応すると伝えたルシファーだが、後ろで開いたドアに慌てて振り向いた。薄く開いた赤い瞳の眦を擦るリリスが、小さな欠伸を噛み殺しながら歩み寄る。
お気に入りのクッションを抱えた姿は幼く、愛らしい。申し訳なさそうなアスタロトに会釈したリリスは、駆け寄ったルシファーの袖を掴んだ。
「私も行くわ」
眠そうなリリスの発言に、ルシファーは黒髪を撫でてから膝をついて下から覗き込んだ。
「すぐ戻れるから、ベッドで待っていて。夜はすこし寒いし、風邪を引くといけない」
「いや」
「みんながいる場所に行くから着替えるのも面倒だろう?」
「ワンピースならすぐよ」
寝着からワンピースへ着替えるなら時間が掛からないと告げ、ルシファーが折れるのを待つ。
「ルシファー様、こうしている時間を考えますと……リリス様をお連れした方が早いですよ」
「わかってるが」
普段はちゃんとしている貴族達のだらしない姿を見せるのも気が引けるし、荒れている彼らの前にリリスを連れて行くのも嫌だ。万が一にも心ない言葉をかける奴がいたら、抹殺してしまいそうだ。
幸せな時間を邪魔された機嫌の悪さも手伝って、ルシファーの考えは暗い方へ走る。引き戻すように、リリスは唇を尖らせて抗議した。
「私も行くの! じゃないと、帰ってきても一緒に寝てあげないから」
「よし、一緒に行こう」
秒殺で降伏する最強の純白魔王は、呆れ顔の側近に指示を出した。
「いつも通り、最後はアレで誤魔化すぞ」
「承知しております」
恒例すぎて打ち合わせも簡素化された対応だが、一度は魔王の姿を見ないと落ち着かない彼らの騒動は激しさを増す一方だ。急ぎ戻るアスタロトに促されたルシファーは、自分の黒いローブを取り出してリリスに被せた。
すぐ戻って寝るのなら、着替える必要はない。こうして寝着姿を隠してしまえばいい。その上で、幼女の頃と同じように抱き上げた。
「両手が塞がりますよ、陛下」
呼び方を変えて注意するアスタロトへ、笑顔で切り返した。
「恒例のあれなら問題ない」
抜き足差し足でベッドから降り、彼女が起きないか確認してから部屋を出た。呪われた指輪事件で壊れた私室はまだ修復前なので、客間の一角を繋げて使用している。
リリスが眠る寝室を結界で囲い、遮音も補強した。それからようやく口を開く。ぱちんと指を鳴らして着替えたものの、服装は簡易なローブだった。また戻って眠るつもりなのだろう。
「どうした?」
事件か襲撃か。問うルシファーの表情は、愛し子に微笑む姿が嘘のように凛々しい。幾分険しい声で尋ねた魔王へ、臣下の礼をとった側近は言葉を選びながら状況を報告した。
「恒例の騒動です」
言われてすぐに思い当たるのも悲しいが、それだけ繰り返された騒動だ。仲裁も飽きるほど行ってきた。
幸いにして前回は簡単に収まったが、寝ているのを承知で迎えに来たのなら、今回も大きく発展してしまったのだろう。
「わかった」
対応すると伝えたルシファーだが、後ろで開いたドアに慌てて振り向いた。薄く開いた赤い瞳の眦を擦るリリスが、小さな欠伸を噛み殺しながら歩み寄る。
お気に入りのクッションを抱えた姿は幼く、愛らしい。申し訳なさそうなアスタロトに会釈したリリスは、駆け寄ったルシファーの袖を掴んだ。
「私も行くわ」
眠そうなリリスの発言に、ルシファーは黒髪を撫でてから膝をついて下から覗き込んだ。
「すぐ戻れるから、ベッドで待っていて。夜はすこし寒いし、風邪を引くといけない」
「いや」
「みんながいる場所に行くから着替えるのも面倒だろう?」
「ワンピースならすぐよ」
寝着からワンピースへ着替えるなら時間が掛からないと告げ、ルシファーが折れるのを待つ。
「ルシファー様、こうしている時間を考えますと……リリス様をお連れした方が早いですよ」
「わかってるが」
普段はちゃんとしている貴族達のだらしない姿を見せるのも気が引けるし、荒れている彼らの前にリリスを連れて行くのも嫌だ。万が一にも心ない言葉をかける奴がいたら、抹殺してしまいそうだ。
幸せな時間を邪魔された機嫌の悪さも手伝って、ルシファーの考えは暗い方へ走る。引き戻すように、リリスは唇を尖らせて抗議した。
「私も行くの! じゃないと、帰ってきても一緒に寝てあげないから」
「よし、一緒に行こう」
秒殺で降伏する最強の純白魔王は、呆れ顔の側近に指示を出した。
「いつも通り、最後はアレで誤魔化すぞ」
「承知しております」
恒例すぎて打ち合わせも簡素化された対応だが、一度は魔王の姿を見ないと落ち着かない彼らの騒動は激しさを増す一方だ。急ぎ戻るアスタロトに促されたルシファーは、自分の黒いローブを取り出してリリスに被せた。
すぐ戻って寝るのなら、着替える必要はない。こうして寝着姿を隠してしまえばいい。その上で、幼女の頃と同じように抱き上げた。
「両手が塞がりますよ、陛下」
呼び方を変えて注意するアスタロトへ、笑顔で切り返した。
「恒例のあれなら問題ない」
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