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45章 魔王の王冠髪飾り紛失事件
598. ドレスの色は鶴の一声
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これでしばらく勇者は現れないだろう。わずか10年程度のことだが、今の魔族にその時間は大切な猶予だった。
敵を排除するのは魔王軍を含め、多くの魔族が協力してくれる。しかし今は春先に控えた即位記念祭の準備で忙しかった。この時期に本物の勇者を片付けたことで、生まれ変わり襲ってくるまでの時間が稼げた。
また、今回の会議で「勇者は魔王の対ではない」ことが判明したので、今後は魔王軍なり、別の種族が対応することも可能になる。今後正式な会議を経て決定されるが、勇者を名乗る人族の対応は全面的に魔王の業務から除かれる予定だった。
大公達がその気になったので、今後は魔王と対峙する前に、アスタロト達を突破する必要が出てきた。後日、召喚者であるアベルに「僕たちの世界だと、先に四天王を倒してからラスボスで魔王様なので普通です」と太鼓判を押される。偽物でも本物でも関係なく排除できるとあって、全員が大喜びだった。
「お前ら、やりすぎるなよ」
ルシファーに出来るのは、暴走しそうな大公達を嗜めるくらいだ。
「我々がそんな失敗をするわけがないでしょう」
「そうですよ。あなたではないのですから」
「僕はきちんと弁えてるよ」
「あたくしだって、バカじゃありませんわ」
ベール、アスタロト、ルキフェル、ベルゼビュートの順番だが、どの返答も不安を膨らます種だった。絶対に何かやらかす気がする。
「訪ねてきた勇者をルシファーが倒さないと、民は不満なのではなくて?」
小首をかしげるリリスの言葉に、ベールが呟く。
「確かに。ダークプレイスの住人の娯楽ですから……」
「問題ないよ。僕たちが派手にやっつければいいんでしょ」
ルキフェルがけろりと言い放ち、ベルゼビュートも大きく頷いて同意した。
「それより、即位記念祭の心配をしてください。リリス姫の衣装はもちろん、今回はルシファー様も衣装を新調していただきます」
揃いのデザイン画を数枚取り出して並べるアスタロトが、2人に決断を迫る。
「今日中に選んでください」
「これはどうだ? お揃いのデザインで可愛いぞ」
ルシファーが選んだのは、リリスのスカートが大きく膨らんだデザインだった。リリスはすぐに別の絵を手に取った。
「こっちの方がルシファーがカッコいいわ」
「でも魔王の象徴である髪飾りには、こちらの方が似合うと思いますわ」
途中から大公達が口を挟み、デザイン決めは一大会議へと変わっていく。真剣に顔を突き合わせて検討した結果、デザイナーであるアラクネが一押しの黒に決まった。
「リリスが黒髪なのに」
色が被って目立たなくなるとぼやくルシファーへ、アスタロトが首をかしげる。説得するように説明を始めた。
「黒髪は上に結い上げますし、白い肌を覆うほとんどの部分がレース生地ですから。腕や裾は肌が薄く透けます。白い肌に映えて美しいと思いますよ」
うーんと唸っていたルシファーが「そういうものか?」と絆されかける。追い討ちをかける形で、ベルゼビュートが口を挟んだ。
「白い肌には濃色が映えますし、色っぽく見えるから大人っぽくなりますわ」
「私、黒がいいわ!」
大人っぽいという表現に食いついたリリスの発言に、ルシファーは笑顔で頷いた。
「そうか、黒にしよう」
嬉しそうに互いに微笑み合う2人を前に、側近達はある疑惑に顔をしかめた。
「今後すべての決定権は、リリスの鶴の一声で決まる気がするんだけど?」
「「「同意します(わ)」」」
ルキフェルの本音に、反論できる大公はいなかった。
敵を排除するのは魔王軍を含め、多くの魔族が協力してくれる。しかし今は春先に控えた即位記念祭の準備で忙しかった。この時期に本物の勇者を片付けたことで、生まれ変わり襲ってくるまでの時間が稼げた。
また、今回の会議で「勇者は魔王の対ではない」ことが判明したので、今後は魔王軍なり、別の種族が対応することも可能になる。今後正式な会議を経て決定されるが、勇者を名乗る人族の対応は全面的に魔王の業務から除かれる予定だった。
大公達がその気になったので、今後は魔王と対峙する前に、アスタロト達を突破する必要が出てきた。後日、召喚者であるアベルに「僕たちの世界だと、先に四天王を倒してからラスボスで魔王様なので普通です」と太鼓判を押される。偽物でも本物でも関係なく排除できるとあって、全員が大喜びだった。
「お前ら、やりすぎるなよ」
ルシファーに出来るのは、暴走しそうな大公達を嗜めるくらいだ。
「我々がそんな失敗をするわけがないでしょう」
「そうですよ。あなたではないのですから」
「僕はきちんと弁えてるよ」
「あたくしだって、バカじゃありませんわ」
ベール、アスタロト、ルキフェル、ベルゼビュートの順番だが、どの返答も不安を膨らます種だった。絶対に何かやらかす気がする。
「訪ねてきた勇者をルシファーが倒さないと、民は不満なのではなくて?」
小首をかしげるリリスの言葉に、ベールが呟く。
「確かに。ダークプレイスの住人の娯楽ですから……」
「問題ないよ。僕たちが派手にやっつければいいんでしょ」
ルキフェルがけろりと言い放ち、ベルゼビュートも大きく頷いて同意した。
「それより、即位記念祭の心配をしてください。リリス姫の衣装はもちろん、今回はルシファー様も衣装を新調していただきます」
揃いのデザイン画を数枚取り出して並べるアスタロトが、2人に決断を迫る。
「今日中に選んでください」
「これはどうだ? お揃いのデザインで可愛いぞ」
ルシファーが選んだのは、リリスのスカートが大きく膨らんだデザインだった。リリスはすぐに別の絵を手に取った。
「こっちの方がルシファーがカッコいいわ」
「でも魔王の象徴である髪飾りには、こちらの方が似合うと思いますわ」
途中から大公達が口を挟み、デザイン決めは一大会議へと変わっていく。真剣に顔を突き合わせて検討した結果、デザイナーであるアラクネが一押しの黒に決まった。
「リリスが黒髪なのに」
色が被って目立たなくなるとぼやくルシファーへ、アスタロトが首をかしげる。説得するように説明を始めた。
「黒髪は上に結い上げますし、白い肌を覆うほとんどの部分がレース生地ですから。腕や裾は肌が薄く透けます。白い肌に映えて美しいと思いますよ」
うーんと唸っていたルシファーが「そういうものか?」と絆されかける。追い討ちをかける形で、ベルゼビュートが口を挟んだ。
「白い肌には濃色が映えますし、色っぽく見えるから大人っぽくなりますわ」
「私、黒がいいわ!」
大人っぽいという表現に食いついたリリスの発言に、ルシファーは笑顔で頷いた。
「そうか、黒にしよう」
嬉しそうに互いに微笑み合う2人を前に、側近達はある疑惑に顔をしかめた。
「今後すべての決定権は、リリスの鶴の一声で決まる気がするんだけど?」
「「「同意します(わ)」」」
ルキフェルの本音に、反論できる大公はいなかった。
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