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40章 長期休暇を取得してました
539. 休日の狩りなのにお仕事モード
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森を抜ける間に、角兎とオークを倒したルシファーは、予定どおり川沿いに集まったコカトリスの群れを見つける。想像より数が多いので眉をひそめた。繁殖用に移動する群れかもしれない。狩り過ぎ注意だった。
「リリスに任せるから、2匹だけ捕まえてくれ」
「2つだけ?」
常に全体攻撃なので「難しそう」とリリスが困った顔をする。こういった数の調整を必要とする魔法の場合、ルシファーが雷を使うのが確実だった。しかし、ようやく浮上したお姫様のご機嫌を損ねる気はない。少し考えてよい方法を思いついた。
「オレが群れを脅かすから、逸れた奴を2匹だけリリスが雷で落とせばいい。どうだ? 出来そうか」
「うん!」
ワイバーンやコカトリスを始めとした空飛ぶ種族は、脅かされるとバラバラに逃げる習性がある。魔物には時折みられる特性だが、全員が同じ方向へ逃げるより生存確率が高くなるためだろう。全滅による種の断絶を防ぐ彼らなりの本能だった。
脅すなら炎か。いや、いくら水辺が近くて消火が楽でも、魔の森の木々を燃やす可能性がある方法は避けたい。突風は威力が弱いと効果が出ないし、強くしすぎると翼を折ってしまう。リリスが雷を使うなら、消去法で土関連……。
「地味だが確実だ」
ひとつ頷いて、魔法陣を転送した。群れの中央付近に浮かんだ魔法陣が、じわりと色を変える。直後、水辺で休む彼らの真ん中が盛り上がって茶色のドラゴンが顔を出した。もちろん本物ではなく、土で作った張りぼてだ。しかし天敵が目の前に出現したコカトリスは焦った。
ぐぎゃああ! 1匹が警告の叫びをあげると、四方八方へ飛び立つ。
「リリス、いまだ」
「えい! どーん!! どん」
「ん?」
なぜ2回言った? 晴れた空から突然生まれた雷が、コカトリスの1匹を貫いた。即死だったらしく落ちる途中で、別の個体にぶつかる。運が悪い個体を、リリスの2度目の雷が串刺しにする。一言で表すなら、常識外の光景だった。
雷を2度放つことは可能だ。しかしリリスは1度目に生み出した雷を利用して、雷のエネルギーで可視化された槍を作った。貫かれた2匹のコカトリスは暴れることもなく地面に落ち、紫色の毒を口から零している。
「パパ! 上手にできました」
誰かの口真似なのだろう。彼女が接する者の中で、アスタロトかアデーレのどちらかの可能性が高い。自分で手を叩いて喜ぶ幼女は、魔王も創造しなかった新たな雷の槍という技を無造作に繰り出し、嬉しそうに歓声を上げていた。末恐ろしいが、魔王妃に相応しい実力だ。
「うん、良く出来たぞ」
褒めて育てる主義なので、ひとまず褒めて黒髪を撫でる。「ん」と顔を上に向けて待つ幼女の額や頬にキスを落として、何度も褒めた。満足したリリスがぎゅっと抱き着いたところで、まだ可視化されたままの槍に手を伸ばす。
触れた瞬間にピリリと静電気のような痛みを残し、槍は消えた。仕組みを後で調べた方が良さそうだ。雷魔法が使える種族は少ないが、こうして触れられる状態の雷を使う者は初めてだった。ルキフェル程ではないが研究熱心なルシファーの興味を引くのに、十分すぎる技なのだ。
これは新しい魔術の開発に使える! 仕事から離れないルシファーは、今見た魔法を分析しながらリリスに提案する。
「リリス、あとで今のを教えてくれるか?」
「どれぇ?」
「どーん、どんの2回目の雷だ」
「唐揚げ食べたらね」
「そうだな。まずは獲物を持ち帰らないと、オレリア達が待ってる」
リリスの黒髪にキスをしながら近づいた獲物の毒は、15分程ですべて吐き切る。結界に包んで持ち帰れば、周囲の魔物や魔獣に毒をまき散らすこともないだろう。死んでからの処理が面倒なので、食用として活用されなかった毒鳥だが、唐揚げにするリリスの食べ方が広まり、最近は人気食材らしい。
乱獲を防ぐ法律を強化しないと、食べつくされてしまいそうだ。捕まえた魔物の数と場所を明記したメモに、新しい法律の強化案を追加して、部下の机に転送する。休暇中にも拘わらず、結局仕事から離れないルシファーに、メモを見つけたアスタロトが唸るのは翌朝のことだった。
「リリスに任せるから、2匹だけ捕まえてくれ」
「2つだけ?」
常に全体攻撃なので「難しそう」とリリスが困った顔をする。こういった数の調整を必要とする魔法の場合、ルシファーが雷を使うのが確実だった。しかし、ようやく浮上したお姫様のご機嫌を損ねる気はない。少し考えてよい方法を思いついた。
「オレが群れを脅かすから、逸れた奴を2匹だけリリスが雷で落とせばいい。どうだ? 出来そうか」
「うん!」
ワイバーンやコカトリスを始めとした空飛ぶ種族は、脅かされるとバラバラに逃げる習性がある。魔物には時折みられる特性だが、全員が同じ方向へ逃げるより生存確率が高くなるためだろう。全滅による種の断絶を防ぐ彼らなりの本能だった。
脅すなら炎か。いや、いくら水辺が近くて消火が楽でも、魔の森の木々を燃やす可能性がある方法は避けたい。突風は威力が弱いと効果が出ないし、強くしすぎると翼を折ってしまう。リリスが雷を使うなら、消去法で土関連……。
「地味だが確実だ」
ひとつ頷いて、魔法陣を転送した。群れの中央付近に浮かんだ魔法陣が、じわりと色を変える。直後、水辺で休む彼らの真ん中が盛り上がって茶色のドラゴンが顔を出した。もちろん本物ではなく、土で作った張りぼてだ。しかし天敵が目の前に出現したコカトリスは焦った。
ぐぎゃああ! 1匹が警告の叫びをあげると、四方八方へ飛び立つ。
「リリス、いまだ」
「えい! どーん!! どん」
「ん?」
なぜ2回言った? 晴れた空から突然生まれた雷が、コカトリスの1匹を貫いた。即死だったらしく落ちる途中で、別の個体にぶつかる。運が悪い個体を、リリスの2度目の雷が串刺しにする。一言で表すなら、常識外の光景だった。
雷を2度放つことは可能だ。しかしリリスは1度目に生み出した雷を利用して、雷のエネルギーで可視化された槍を作った。貫かれた2匹のコカトリスは暴れることもなく地面に落ち、紫色の毒を口から零している。
「パパ! 上手にできました」
誰かの口真似なのだろう。彼女が接する者の中で、アスタロトかアデーレのどちらかの可能性が高い。自分で手を叩いて喜ぶ幼女は、魔王も創造しなかった新たな雷の槍という技を無造作に繰り出し、嬉しそうに歓声を上げていた。末恐ろしいが、魔王妃に相応しい実力だ。
「うん、良く出来たぞ」
褒めて育てる主義なので、ひとまず褒めて黒髪を撫でる。「ん」と顔を上に向けて待つ幼女の額や頬にキスを落として、何度も褒めた。満足したリリスがぎゅっと抱き着いたところで、まだ可視化されたままの槍に手を伸ばす。
触れた瞬間にピリリと静電気のような痛みを残し、槍は消えた。仕組みを後で調べた方が良さそうだ。雷魔法が使える種族は少ないが、こうして触れられる状態の雷を使う者は初めてだった。ルキフェル程ではないが研究熱心なルシファーの興味を引くのに、十分すぎる技なのだ。
これは新しい魔術の開発に使える! 仕事から離れないルシファーは、今見た魔法を分析しながらリリスに提案する。
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「どれぇ?」
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「唐揚げ食べたらね」
「そうだな。まずは獲物を持ち帰らないと、オレリア達が待ってる」
リリスの黒髪にキスをしながら近づいた獲物の毒は、15分程ですべて吐き切る。結界に包んで持ち帰れば、周囲の魔物や魔獣に毒をまき散らすこともないだろう。死んでからの処理が面倒なので、食用として活用されなかった毒鳥だが、唐揚げにするリリスの食べ方が広まり、最近は人気食材らしい。
乱獲を防ぐ法律を強化しないと、食べつくされてしまいそうだ。捕まえた魔物の数と場所を明記したメモに、新しい法律の強化案を追加して、部下の机に転送する。休暇中にも拘わらず、結局仕事から離れないルシファーに、メモを見つけたアスタロトが唸るのは翌朝のことだった。
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