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31章 異世界召喚は違法行為?
414. リリスを愛でると威厳UP
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「以前の決議通り、本物は魔王陛下のご担当ですが偽者は我々大公が処分します」
対処ではなく、処分。その単語の選び方に、偽者の生命は保証されない旨が滲んでいた。しかし迷惑をかけまくる人族に対して、同情の声は上がらない。
「また、この世界で勇者の紋章を持つ者は1名という原則がありましたが、これが崩れた可能性が出てきました。今回捕らえた勇者は、人族が魔術により異世界から召喚した可能性があります」
「大変だ! 1人出たら30人はいる可能性があるぞ」
完全に害虫扱いの勇者だが、叫んだ辺境伯の声に各貴族がひそひそ話を始めた。
「際限なく送り込まれるってこと?」
「人族は魔術得意だったのか」
「異世界ってどこなの?」
「召喚すると隷属も同時に展開しないと危ないだろ。人族は理解してるのか」
魔獣召喚と同じ扱いで騒ぐ連中や、異世界の場所に首をかしげる者が続出し、本題の勇者が召喚される危険性から離れていく。話の軌道修正をすべく、ルシファーが口を開いた。
「異世界から勇者を召喚する魔術ならば、阻む方法を考えればよいではないか」
根本的に解決すればいい。異世界から勇者が召喚されるなら、その召喚魔法陣を壊すなり召喚が行える者を処分するなり方法はある。幼女に微笑みかけながら、些末事と言い切る魔王の姿に貴族達は落ち着きを取り戻した。
「魔の森の成長と異世界召喚に関係性がないか、ルキフェル大公の見解をお伺いしても構いませんか?」
話を進めるために促せば、ルキフェルは肩を竦めて報告書を読み上げた。
「まだ判明してない。だけど、捕らえた勇者の左手にあった痣は人工的なものだね。皮膚の下に焼き印みたいに刻んだ傷跡だ。召喚者を示す文字が読み取れるから、勇者の紋章とは別物。魔力量は多いけど、発音できないから魔法が発動しない。無詠唱で使えるようになれば、意外と厄介だね」
「ルキフェル大公の発言通り、彼の魔力量は多い方です。おそらく伯爵位に届くかどうか。そのため勇者を名乗る召喚者が現れた場合に、各種族での対応を禁止します。必ず我らへ報告し、攻撃を仕掛けずに魔王城へ誘導してください」
下手に手出しして魔族に被害が出ることを防ぐための措置だ。ベール旗下の魔王軍は魔の森全体に散らばっている。魔王軍の誰かに報告を上げれば、自動的にベールまで連絡が届くよう指揮系統は作られていた。そのシステムを使えと言い切ったベールに、手前の魔犬族の男爵から声が上がる。
「質問しても構いませんか」
「どうぞ」
「もし一方的に攻撃された場合の反撃は」
「許されます。近くに展開する魔王軍が気づくよう、派手な魔法を使ってもらえると助かります」
ベールの回答にほっとした様子だが、一部の魔獣系種族が困惑した顔を見せる。彼らの中には魔法を不得手とする者も多い。その不安を払しょくするため、アスタロトが追加措置を提示した。
「合図を統一しましょう。魔力を込めて破壊すれば赤い狼煙が上がる花火を用意させます。各種族、小さな村や集落にも配布するように。離れて生活する種族は多めに申請してください。本日中に数を申請すれば、明日には持ち帰れます」
「僕のところで作ってる花火でいいね。小型で長時間燃えるように火薬を調整させる」
花火や火薬はルキフェルの管理下だ。すぐに部下に指示を出して作らせるらしい。それらの話が順調に進むのを聞きながら、リリスの頬を撫でるルシファーは玉座のひじ掛けに寄り掛かる。穏やかな表情でアスタロトの確認に頷いて許可を与える君主の姿に、貴族達は感動していた。
この程度の襲撃は些末事と流す、さすがは魔王様だと貴族達は護られる安心感と高揚する気持ちにつられて「魔王様、万歳」と数人が叫んだ。あっという間に広がった歓声に、ルシファーは右手を挙げて応える。しかしリリスを撫でる左手は止めなかった。
対処ではなく、処分。その単語の選び方に、偽者の生命は保証されない旨が滲んでいた。しかし迷惑をかけまくる人族に対して、同情の声は上がらない。
「また、この世界で勇者の紋章を持つ者は1名という原則がありましたが、これが崩れた可能性が出てきました。今回捕らえた勇者は、人族が魔術により異世界から召喚した可能性があります」
「大変だ! 1人出たら30人はいる可能性があるぞ」
完全に害虫扱いの勇者だが、叫んだ辺境伯の声に各貴族がひそひそ話を始めた。
「際限なく送り込まれるってこと?」
「人族は魔術得意だったのか」
「異世界ってどこなの?」
「召喚すると隷属も同時に展開しないと危ないだろ。人族は理解してるのか」
魔獣召喚と同じ扱いで騒ぐ連中や、異世界の場所に首をかしげる者が続出し、本題の勇者が召喚される危険性から離れていく。話の軌道修正をすべく、ルシファーが口を開いた。
「異世界から勇者を召喚する魔術ならば、阻む方法を考えればよいではないか」
根本的に解決すればいい。異世界から勇者が召喚されるなら、その召喚魔法陣を壊すなり召喚が行える者を処分するなり方法はある。幼女に微笑みかけながら、些末事と言い切る魔王の姿に貴族達は落ち着きを取り戻した。
「魔の森の成長と異世界召喚に関係性がないか、ルキフェル大公の見解をお伺いしても構いませんか?」
話を進めるために促せば、ルキフェルは肩を竦めて報告書を読み上げた。
「まだ判明してない。だけど、捕らえた勇者の左手にあった痣は人工的なものだね。皮膚の下に焼き印みたいに刻んだ傷跡だ。召喚者を示す文字が読み取れるから、勇者の紋章とは別物。魔力量は多いけど、発音できないから魔法が発動しない。無詠唱で使えるようになれば、意外と厄介だね」
「ルキフェル大公の発言通り、彼の魔力量は多い方です。おそらく伯爵位に届くかどうか。そのため勇者を名乗る召喚者が現れた場合に、各種族での対応を禁止します。必ず我らへ報告し、攻撃を仕掛けずに魔王城へ誘導してください」
下手に手出しして魔族に被害が出ることを防ぐための措置だ。ベール旗下の魔王軍は魔の森全体に散らばっている。魔王軍の誰かに報告を上げれば、自動的にベールまで連絡が届くよう指揮系統は作られていた。そのシステムを使えと言い切ったベールに、手前の魔犬族の男爵から声が上がる。
「質問しても構いませんか」
「どうぞ」
「もし一方的に攻撃された場合の反撃は」
「許されます。近くに展開する魔王軍が気づくよう、派手な魔法を使ってもらえると助かります」
ベールの回答にほっとした様子だが、一部の魔獣系種族が困惑した顔を見せる。彼らの中には魔法を不得手とする者も多い。その不安を払しょくするため、アスタロトが追加措置を提示した。
「合図を統一しましょう。魔力を込めて破壊すれば赤い狼煙が上がる花火を用意させます。各種族、小さな村や集落にも配布するように。離れて生活する種族は多めに申請してください。本日中に数を申請すれば、明日には持ち帰れます」
「僕のところで作ってる花火でいいね。小型で長時間燃えるように火薬を調整させる」
花火や火薬はルキフェルの管理下だ。すぐに部下に指示を出して作らせるらしい。それらの話が順調に進むのを聞きながら、リリスの頬を撫でるルシファーは玉座のひじ掛けに寄り掛かる。穏やかな表情でアスタロトの確認に頷いて許可を与える君主の姿に、貴族達は感動していた。
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