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21章 お姫様はお勉強で忙しい
269. リリスの手書きアルファベットをGET
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同じ部屋で大人しく読み書きの練習をしている愛娘の姿に、ルシファーの頬が崩れる。幸せそうな笑みを浮かべながらも、その手は止まることなく書類処理を続けていた。
ここまではアスタロトとベールの目算通りである。
「お仕事してるパパはカッコいい」
アスタロトがリリスに頼んだ一言で、魔王のやる気は振り切れた。それはもう、カッコいいパパをアピールするため、午前中も午後もノンストップで稼働しているほどだ。
「お茶のご用意が出来ましたわ」
アデーレが子供達に休憩を促し、誘って欲しいルシファーの視線がちらちら向けられる。するとリリスはとことこ歩いて、ルシファーのローブの裾を掴んだ。カッコいいパパを維持するため、今日は真剣に書類に向き合う姿勢を崩さない彼に、こてりと首をかしげて声をかける。
「パパもお茶しよう」
「ありがとう、リリス。ちょうど区切りがついたところだよ」
押印した書類を分類箱に入れる。無駄に風の魔法を多用して魔法陣を浮かせるルシファーは、嬉しくてリリスの黒髪に唇を押し当てた。屈んだルシファーの純白の髪が、絨毯に触れてもお構いなしである。
思ったより効果が高い劇薬リリスの効能に、アスタロトは「もっと早く活用すればよかった」と苦笑いした。苦労して書類処理させるより、こうやってやる気を引き出した方が楽だ。しかもミスが減っている。
箱の中の書類を確認しながら、アスタロトは魔王へ声をかけた。
「今日の書類は終わりです。お疲れさまでした」
「アスタロト、お前も一緒に休憩だ」
機嫌がよすぎて、幸せのおすそ分けを始めるルシファーである。愛娘と手を繋いで室内を移動し始めたところに、ドアがノックされた。執務室側のドアが開き、衛兵の犬人族が飛び込んでくる。
「陛下、勇者襲来です」
「ん? お茶の時間だ。後にしてもらえ」
気軽に延期を申し付けるルシファーだが、アスタロトは眉をひそめていた。ルシファーと手を繋いだリリスの左手の甲に浮かんだ紋章は消えていない。つまり、勇者は代替わりしていないのだ。また偽者だと溜息を吐いた。
「ルシファー様、私が処分いたしましょうか」
対処ですらない。あくまでも処分だった。
アスタロトの選んだ単語に少し考えるも、どうせ偽者だからいいかと頷いた。いい加減、ルシファーも偽者騒動に飽き飽きしている。実力のない人族が必死に考えた方法なのかもしれないが、自称すれば勇者の能力を授かるものではない。
大した力のない、ちょっと腕に覚えのある剣士が名乗る肩書に興味はない。ひらひら手を振ってアスタロトを見送ると、お茶の席に着いた。
「パパ、今日はこれ書いた」
よれよれの紙に、AからZまで順番に並んでいる。横線が引かれているのにはみ出して、かなり元気のいい文字が躍っていた。その文字を見るなり、ルシファーが満面の笑みでリリスの頭を撫でる。
「すごいな、リリスは上手に書けたね。この紙はパパがもらってもいい?」
「うん、あげる」
「ありがとう、嬉しいな」
リリスの気が変わらないうちに胸の内ポケットへ確保する。間違っても紛失しないよう、魔力で目印も付けておいた。あとで額縁をつけて私室に飾ろうと決意した。
「ルーサルカ、ルーシア、シトリー、レライエも見せてさしあげて」
「は、はい」
それぞれに畳んだ紙を広げて見せてくれた。ルーシア以外はリリスより年上なので上手に枠に収めて書いている。ルーシアも貴族家の子なので、文字はすでに習っていたらしい。やはり綺麗に並んでいた。
「これからも勉強を頑張って、リリスをしっかり支えてくれると嬉しい」
にっこり笑うと、なぜか4人は頬を赤く染めた。ルシファー本人に自覚はないが、顔立ちは絶世の美貌と謳われるほど整っている。まだ年頃には遠い幼女や少女であっても、やはり女は女だった。綺麗な顔は大好きなのだ。
きょとんとした顔で4人とルシファーを見比べたリリスが、ぐいっとルシファーの髪を引っ張る。すると自分へ笑顔を向けてもらえたリリスが満足そうに笑った。
幼い嫉妬に気づいたアデーレは「あらあら」と微笑ましく見守り、その態度で気づいたルシファーは自分の膝を叩いて促す。
「リリス、お嫁さんにここに座って欲しいな」
「うん!」
よじ登った膝の上で、リリスがお菓子を手に取る。今日はお勉強中心だったので、この焼き菓子はイフリートの手によるものだろう。花を象った焼き菓子は、シトリーが好きなココナッツの匂いがした。
「あーんして」
「あーん」
素直に口を開けて焼き菓子を口に入れたところに、ベールが飛び込んできた。
「陛下、一大事………っ!?」
驚いて喉に詰まらせたルシファーが紅茶を一気飲みして咳き込み、落ち着いた頃にはベールが呆れ顔で腕を組んでいた。
ここまではアスタロトとベールの目算通りである。
「お仕事してるパパはカッコいい」
アスタロトがリリスに頼んだ一言で、魔王のやる気は振り切れた。それはもう、カッコいいパパをアピールするため、午前中も午後もノンストップで稼働しているほどだ。
「お茶のご用意が出来ましたわ」
アデーレが子供達に休憩を促し、誘って欲しいルシファーの視線がちらちら向けられる。するとリリスはとことこ歩いて、ルシファーのローブの裾を掴んだ。カッコいいパパを維持するため、今日は真剣に書類に向き合う姿勢を崩さない彼に、こてりと首をかしげて声をかける。
「パパもお茶しよう」
「ありがとう、リリス。ちょうど区切りがついたところだよ」
押印した書類を分類箱に入れる。無駄に風の魔法を多用して魔法陣を浮かせるルシファーは、嬉しくてリリスの黒髪に唇を押し当てた。屈んだルシファーの純白の髪が、絨毯に触れてもお構いなしである。
思ったより効果が高い劇薬リリスの効能に、アスタロトは「もっと早く活用すればよかった」と苦笑いした。苦労して書類処理させるより、こうやってやる気を引き出した方が楽だ。しかもミスが減っている。
箱の中の書類を確認しながら、アスタロトは魔王へ声をかけた。
「今日の書類は終わりです。お疲れさまでした」
「アスタロト、お前も一緒に休憩だ」
機嫌がよすぎて、幸せのおすそ分けを始めるルシファーである。愛娘と手を繋いで室内を移動し始めたところに、ドアがノックされた。執務室側のドアが開き、衛兵の犬人族が飛び込んでくる。
「陛下、勇者襲来です」
「ん? お茶の時間だ。後にしてもらえ」
気軽に延期を申し付けるルシファーだが、アスタロトは眉をひそめていた。ルシファーと手を繋いだリリスの左手の甲に浮かんだ紋章は消えていない。つまり、勇者は代替わりしていないのだ。また偽者だと溜息を吐いた。
「ルシファー様、私が処分いたしましょうか」
対処ですらない。あくまでも処分だった。
アスタロトの選んだ単語に少し考えるも、どうせ偽者だからいいかと頷いた。いい加減、ルシファーも偽者騒動に飽き飽きしている。実力のない人族が必死に考えた方法なのかもしれないが、自称すれば勇者の能力を授かるものではない。
大した力のない、ちょっと腕に覚えのある剣士が名乗る肩書に興味はない。ひらひら手を振ってアスタロトを見送ると、お茶の席に着いた。
「パパ、今日はこれ書いた」
よれよれの紙に、AからZまで順番に並んでいる。横線が引かれているのにはみ出して、かなり元気のいい文字が躍っていた。その文字を見るなり、ルシファーが満面の笑みでリリスの頭を撫でる。
「すごいな、リリスは上手に書けたね。この紙はパパがもらってもいい?」
「うん、あげる」
「ありがとう、嬉しいな」
リリスの気が変わらないうちに胸の内ポケットへ確保する。間違っても紛失しないよう、魔力で目印も付けておいた。あとで額縁をつけて私室に飾ろうと決意した。
「ルーサルカ、ルーシア、シトリー、レライエも見せてさしあげて」
「は、はい」
それぞれに畳んだ紙を広げて見せてくれた。ルーシア以外はリリスより年上なので上手に枠に収めて書いている。ルーシアも貴族家の子なので、文字はすでに習っていたらしい。やはり綺麗に並んでいた。
「これからも勉強を頑張って、リリスをしっかり支えてくれると嬉しい」
にっこり笑うと、なぜか4人は頬を赤く染めた。ルシファー本人に自覚はないが、顔立ちは絶世の美貌と謳われるほど整っている。まだ年頃には遠い幼女や少女であっても、やはり女は女だった。綺麗な顔は大好きなのだ。
きょとんとした顔で4人とルシファーを見比べたリリスが、ぐいっとルシファーの髪を引っ張る。すると自分へ笑顔を向けてもらえたリリスが満足そうに笑った。
幼い嫉妬に気づいたアデーレは「あらあら」と微笑ましく見守り、その態度で気づいたルシファーは自分の膝を叩いて促す。
「リリス、お嫁さんにここに座って欲しいな」
「うん!」
よじ登った膝の上で、リリスがお菓子を手に取る。今日はお勉強中心だったので、この焼き菓子はイフリートの手によるものだろう。花を象った焼き菓子は、シトリーが好きなココナッツの匂いがした。
「あーんして」
「あーん」
素直に口を開けて焼き菓子を口に入れたところに、ベールが飛び込んできた。
「陛下、一大事………っ!?」
驚いて喉に詰まらせたルシファーが紅茶を一気飲みして咳き込み、落ち着いた頃にはベールが呆れ顔で腕を組んでいた。
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