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19章 神獣は番を突き落とす
249. 幼すぎて判断つきません
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「ヤン、ピヨを借りるぞ」
大型犬サイズの孔雀に似た青鳥の首をひょいっと掴む。左腕が愛しのリリスで塞がっているので、右手だけで持ち上げると多少乱暴になった。じたばた暴れるピヨだが、威圧を掛けると大人しくなる。
気絶したピヨを、鳳凰の前に置く。後ろで唸って威嚇するヤンに肩を竦めるが、ルシファーは注意しようとしなかった。そのため、じりじりと近づいたフェンリルの影が鳳凰にかかる。
「本当に番なら、どうしてピヨが反応しない?」
鳳凰の生態は神龍族のタカミヤ公爵から聞いた程度で、他の神獣や幻獣との違いは不明だ。しかしどの種族も番に対しては、オスもメスも過剰反応する。相手を見つけた時点で、それまでの生き方をすべて否定しても番の元へ走る傾向が見られた。
鳳凰はピヨを番だと言い切ったが、ピヨは反応していない。アスタロトの結界から解放された途端に、刷り込み現象で母親と認識したヤンへ走ったことが証拠だった。
本当に番同士なら、ピヨはヤンを無視して鳳凰へ駆け寄るはずなのだ。
『……幼すぎるのだ』
鳳凰は地面に懐いたまま、苦しそうに息を繰り返す。魔王の強烈な冷気で弱り、フェンリルに狩られかけた身体は限界が近かった。縛り付ける闇の蔓が消えても、ベールが施した氷の檻を破るほどの魔力や霊力は残っていない。
「それでピヨを火口に落としたのですか」
強制的に再生を促して、なんとか反応する年齢までピヨを引き上げようと考えたのだろう。しかし沈んだピヨは幼すぎて、炎の中で再生を果たしても飛ぶことが出来なかった。炎の海に沈んでも死ぬ心配はないが、短期間で再生を繰り返せば負担が大きい。
「無理やりは感心しないが……」
ルシファーも呆れて首を横に振る。一歩間違えば、負担に耐えかねたピヨは再生できずに燃え尽きた可能性があったのではないか? 睨み付ける先で、鳳凰は必死にピヨへ近づこうとしていた。しかし氷の檻に阻まれて、倒れこむ。
「ベール、檻を消してやれ」
「よろしいのですか?」
この程度の処罰で許すのかと眉をひそめる側近に、ルシファーがにやりと笑った。それは罪人を許す者の顔ではない。
「ピヨが反応しなければ、鳳凰は城の地下へ幽閉する。もしピヨが彼を番と判断するなら、城門で番人でもさせるさ」
どっちに転んでも無罪放免はない。そう断じたルシファーへ、ベールは優雅に一礼して氷の檻を消した。漂う冷気が風により吹き飛ばされ、ようやく遮るものがなくなる。鳳凰が必死にピヨの上に覆いかぶさった。
「ピヨ!? 我が君っ!」
「ふむ……これはまた」
予想外というべきか。目を覚ましたピヨがじたばた暴れ、鳳凰の目を見るなり動きを止めた。じっと見つめ合う2匹――そこに番としての運命があるのか。
息を飲んで見守る中、左腕の幼女は目を擦りながら欠伸をした。
「パパ、ピヨが食べられてる」
「あ~、食べられてはいないぞ。まだ大丈夫だ」
違う意味で将来食べられるかも知れないが、現在の幼さでは手が出せまい。そう考えた途端、この鳳凰に同情していまう。もしかしたら似た境遇じゃないか……と気付いてしまった。
「見詰め合ってるね」
「そうだな」
リリスの指摘に、誰もが「早く結論をだせ」と願うが……ピヨはゆっくり目をそらし、ヤンの姿を見るなり騒ぎ出した。
「ママ~!! ママ」
「……本当に幼すぎる」
見詰め合った時間が何かわからぬまま、母親と思い込んだフェンリルに駆け寄る大型犬サイズの鸞鳥に、見守った全員ががくりと項垂れた。しかもまだ飛べないらしい。
「番かどうかは保留。中身が成長してからもう一度判定するとしよう」
苦笑いして右手に魔法陣を作る。それを鳳凰の下へ転送すると、魔力を込めて発動させた。
大型犬サイズの孔雀に似た青鳥の首をひょいっと掴む。左腕が愛しのリリスで塞がっているので、右手だけで持ち上げると多少乱暴になった。じたばた暴れるピヨだが、威圧を掛けると大人しくなる。
気絶したピヨを、鳳凰の前に置く。後ろで唸って威嚇するヤンに肩を竦めるが、ルシファーは注意しようとしなかった。そのため、じりじりと近づいたフェンリルの影が鳳凰にかかる。
「本当に番なら、どうしてピヨが反応しない?」
鳳凰の生態は神龍族のタカミヤ公爵から聞いた程度で、他の神獣や幻獣との違いは不明だ。しかしどの種族も番に対しては、オスもメスも過剰反応する。相手を見つけた時点で、それまでの生き方をすべて否定しても番の元へ走る傾向が見られた。
鳳凰はピヨを番だと言い切ったが、ピヨは反応していない。アスタロトの結界から解放された途端に、刷り込み現象で母親と認識したヤンへ走ったことが証拠だった。
本当に番同士なら、ピヨはヤンを無視して鳳凰へ駆け寄るはずなのだ。
『……幼すぎるのだ』
鳳凰は地面に懐いたまま、苦しそうに息を繰り返す。魔王の強烈な冷気で弱り、フェンリルに狩られかけた身体は限界が近かった。縛り付ける闇の蔓が消えても、ベールが施した氷の檻を破るほどの魔力や霊力は残っていない。
「それでピヨを火口に落としたのですか」
強制的に再生を促して、なんとか反応する年齢までピヨを引き上げようと考えたのだろう。しかし沈んだピヨは幼すぎて、炎の中で再生を果たしても飛ぶことが出来なかった。炎の海に沈んでも死ぬ心配はないが、短期間で再生を繰り返せば負担が大きい。
「無理やりは感心しないが……」
ルシファーも呆れて首を横に振る。一歩間違えば、負担に耐えかねたピヨは再生できずに燃え尽きた可能性があったのではないか? 睨み付ける先で、鳳凰は必死にピヨへ近づこうとしていた。しかし氷の檻に阻まれて、倒れこむ。
「ベール、檻を消してやれ」
「よろしいのですか?」
この程度の処罰で許すのかと眉をひそめる側近に、ルシファーがにやりと笑った。それは罪人を許す者の顔ではない。
「ピヨが反応しなければ、鳳凰は城の地下へ幽閉する。もしピヨが彼を番と判断するなら、城門で番人でもさせるさ」
どっちに転んでも無罪放免はない。そう断じたルシファーへ、ベールは優雅に一礼して氷の檻を消した。漂う冷気が風により吹き飛ばされ、ようやく遮るものがなくなる。鳳凰が必死にピヨの上に覆いかぶさった。
「ピヨ!? 我が君っ!」
「ふむ……これはまた」
予想外というべきか。目を覚ましたピヨがじたばた暴れ、鳳凰の目を見るなり動きを止めた。じっと見つめ合う2匹――そこに番としての運命があるのか。
息を飲んで見守る中、左腕の幼女は目を擦りながら欠伸をした。
「パパ、ピヨが食べられてる」
「あ~、食べられてはいないぞ。まだ大丈夫だ」
違う意味で将来食べられるかも知れないが、現在の幼さでは手が出せまい。そう考えた途端、この鳳凰に同情していまう。もしかしたら似た境遇じゃないか……と気付いてしまった。
「見詰め合ってるね」
「そうだな」
リリスの指摘に、誰もが「早く結論をだせ」と願うが……ピヨはゆっくり目をそらし、ヤンの姿を見るなり騒ぎ出した。
「ママ~!! ママ」
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