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18章 魔王城改築の意外な効果
226. お取り巻きの引越し準備は順調です
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隣は黒檀の家具が並ぶ、重厚なイメージだった。隣のルーシアの軽やかな雰囲気とは真逆だ。部屋の改築の立会いはレライエの母親だが、ルキフェルも顔を見せていた。
「ロキちゃん! ……パパ、ロキちゃんも呼び捨てるの?」
「難しいな。リリスの側近じゃないけど、呼び捨てがいいぞ」
水の妖精族はうっすらと肌に鱗が透けるのが特徴だが、竜人族は刺青に似た模様が肌に浮いていることが多い。レライエの母は見える場所に見当たらないが、レライエは額と両手の甲に炎のような模様があった。
リリスが初対面で好印象を抱いた要因のひとつが、この模様だった。彼女は左手の甲に勇者の紋章があるため、同じような模様がある子供に親しみを覚えたのだろう。
性格はキツい子だが、はっきり自分の意見を表明できるのは長所だ。そして納得すれば己の意見を引っ込めることに抵抗がないのも、アスタロト達が評価した部分だった。
「リリス様」
笑って手を振るリリスへ一礼するレライエは、参謀タイプだろう。思慮深く、リリスより2歳ほど年上だった。鮮やかなオレンジ色の髪と柔らかなベージュ系の肌に、深い緑の瞳が印象的な少女だ。彼女はすでにドラゴン族上位種の特徴である翼を持っているらしい。
ルキフェルにとって遠縁に当たるらしく、魔王と魔王妃の側近に竜族と竜人族がそれぞれ選ばれたと一族総出でお祝いがあったと聞いた。
「何か足りない物はないか?」
「大丈夫。僕が手配するから」
竜族と神龍族のハーフであるルキフェルは、リリスが伸ばした手を繋ぐために宙に浮きながら答える。握手のように手を繋いだリリスが嬉しそうにルシファーを振り返った。
「パパ、飴だして」
「はいよ」
リリスのポシェットから小瓶を取り出す。大瓶と魔力を繋いで振ってみせた。増える飴に頬を緩めたリリスが、蓋を開けた小瓶から飴をひとつルキフェルに渡す。礼を言って口に放るルキフェルの次は、赤い飴をレライエへ差し出した。
受け取ったレライエの手の上に、もうひとつ黄色い飴も乗せる。
「お母さんと食べて」
「ありがとうございます」
母親と礼を口にしたレライエに手を振り、リリスは瓶に蓋をした。
「リリスは食べないのか?」
「だって、お口の中いっぱいになるもん」
まだシトリーとルーサルカの部屋を見に行くのに、口がいっぱいだと困ると頬を膨らませた。それから小瓶をポシェットにぐいっと押し込む。
リリスは魔法の小瓶だと思っているので疑問を抱かないが、実は部屋の大瓶はとっくに空になっていた。あちこちで飴をくれていたので、当然の結果だ。こっそり同じ飴を補充するルシファーの姿を知っているのは、取り寄せに協力したルキフェルだけだった。
互いに目配せしたルキフェルとルシファーは、ポシェットに小瓶をしまうリリスを微笑ましく見守る。
「お隣はシトリー?」
「いや、ルーサルカだったぞ」
話をしながら部屋をでて、隣のドアを開いた。驚くほどアンティークな家具が並んでいる。ルシファーは「アスタロトの部屋に似てる」と呟いた。吸血種族は基本的に長寿が多い。アスタロトは特殊例だと思うが、ほとんどが数万年単位の寿命を持っていた。
侍女のアデーレも……女性なので詳細は省くが1万歳は超えている。その彼女が立会人として、壁紙の指示を出していた。朝から忙しそうだと思ったが、こういう事情だったのか。
「大切な娘の部屋ですもの、きっちり仕上げてくださいね。その端の処理が甘いです」
クリーム色の壁紙を貼る職人に口出しするアデーレに、後ろでルーサルカがおたおたしている。
「あの、お義母様。魔王様とリリス様がいらっしゃったので……」
「あら本当。大変失礼いたしました」
にっこり笑って一礼するアデーレについて、ルーサルカもぎこちないながら貴族の礼をする。行儀見習い真っ最中のルーサルカは、アデーレによれば「筋がいい」らしい。
どこか艶のある猫足デザイン主流の家具は、濃い緑のベルベット調の布を貼った豪華なものばかりだ。
「どこかで見たことある家具だ」
「アスタロト様のお城からいただいてきましたの」
譲ってもらったんじゃなく、頂いてきた。けろりと爆弾発言をしたアデーレだが、ルシファーは気付かないフリをして頷く。
「なるほど、滞在中に見たのかも知れないな」
亜麻色の肌にかかる濃茶の髪はさらさらと柔らかそうだ。以前は暗い色をしていると思った瞳は、よく見れば銀に近いグレーだった。狐尻尾は白茶系の毛皮で、やはり頭の上に狐耳はない。
まだ自信がなくおどおどしているが、彼女が一番背も高く年上だった。性格も穏やかで周囲に気配りが出来ることから、アスタロトお勧めのまとめ役として期待している。アデーレと養子縁組の申請書が出ていたので、つい先日許可を出したばかりだ。
「ルカちゃんも呼び捨て?」
「そうだ」
「ルカにも飴あげる」
アデーレの分も飴を渡したリリスは、にこにこと職人さんにも笑顔を振りまきながら移動した。
「ロキちゃん! ……パパ、ロキちゃんも呼び捨てるの?」
「難しいな。リリスの側近じゃないけど、呼び捨てがいいぞ」
水の妖精族はうっすらと肌に鱗が透けるのが特徴だが、竜人族は刺青に似た模様が肌に浮いていることが多い。レライエの母は見える場所に見当たらないが、レライエは額と両手の甲に炎のような模様があった。
リリスが初対面で好印象を抱いた要因のひとつが、この模様だった。彼女は左手の甲に勇者の紋章があるため、同じような模様がある子供に親しみを覚えたのだろう。
性格はキツい子だが、はっきり自分の意見を表明できるのは長所だ。そして納得すれば己の意見を引っ込めることに抵抗がないのも、アスタロト達が評価した部分だった。
「リリス様」
笑って手を振るリリスへ一礼するレライエは、参謀タイプだろう。思慮深く、リリスより2歳ほど年上だった。鮮やかなオレンジ色の髪と柔らかなベージュ系の肌に、深い緑の瞳が印象的な少女だ。彼女はすでにドラゴン族上位種の特徴である翼を持っているらしい。
ルキフェルにとって遠縁に当たるらしく、魔王と魔王妃の側近に竜族と竜人族がそれぞれ選ばれたと一族総出でお祝いがあったと聞いた。
「何か足りない物はないか?」
「大丈夫。僕が手配するから」
竜族と神龍族のハーフであるルキフェルは、リリスが伸ばした手を繋ぐために宙に浮きながら答える。握手のように手を繋いだリリスが嬉しそうにルシファーを振り返った。
「パパ、飴だして」
「はいよ」
リリスのポシェットから小瓶を取り出す。大瓶と魔力を繋いで振ってみせた。増える飴に頬を緩めたリリスが、蓋を開けた小瓶から飴をひとつルキフェルに渡す。礼を言って口に放るルキフェルの次は、赤い飴をレライエへ差し出した。
受け取ったレライエの手の上に、もうひとつ黄色い飴も乗せる。
「お母さんと食べて」
「ありがとうございます」
母親と礼を口にしたレライエに手を振り、リリスは瓶に蓋をした。
「リリスは食べないのか?」
「だって、お口の中いっぱいになるもん」
まだシトリーとルーサルカの部屋を見に行くのに、口がいっぱいだと困ると頬を膨らませた。それから小瓶をポシェットにぐいっと押し込む。
リリスは魔法の小瓶だと思っているので疑問を抱かないが、実は部屋の大瓶はとっくに空になっていた。あちこちで飴をくれていたので、当然の結果だ。こっそり同じ飴を補充するルシファーの姿を知っているのは、取り寄せに協力したルキフェルだけだった。
互いに目配せしたルキフェルとルシファーは、ポシェットに小瓶をしまうリリスを微笑ましく見守る。
「お隣はシトリー?」
「いや、ルーサルカだったぞ」
話をしながら部屋をでて、隣のドアを開いた。驚くほどアンティークな家具が並んでいる。ルシファーは「アスタロトの部屋に似てる」と呟いた。吸血種族は基本的に長寿が多い。アスタロトは特殊例だと思うが、ほとんどが数万年単位の寿命を持っていた。
侍女のアデーレも……女性なので詳細は省くが1万歳は超えている。その彼女が立会人として、壁紙の指示を出していた。朝から忙しそうだと思ったが、こういう事情だったのか。
「大切な娘の部屋ですもの、きっちり仕上げてくださいね。その端の処理が甘いです」
クリーム色の壁紙を貼る職人に口出しするアデーレに、後ろでルーサルカがおたおたしている。
「あの、お義母様。魔王様とリリス様がいらっしゃったので……」
「あら本当。大変失礼いたしました」
にっこり笑って一礼するアデーレについて、ルーサルカもぎこちないながら貴族の礼をする。行儀見習い真っ最中のルーサルカは、アデーレによれば「筋がいい」らしい。
どこか艶のある猫足デザイン主流の家具は、濃い緑のベルベット調の布を貼った豪華なものばかりだ。
「どこかで見たことある家具だ」
「アスタロト様のお城からいただいてきましたの」
譲ってもらったんじゃなく、頂いてきた。けろりと爆弾発言をしたアデーレだが、ルシファーは気付かないフリをして頷く。
「なるほど、滞在中に見たのかも知れないな」
亜麻色の肌にかかる濃茶の髪はさらさらと柔らかそうだ。以前は暗い色をしていると思った瞳は、よく見れば銀に近いグレーだった。狐尻尾は白茶系の毛皮で、やはり頭の上に狐耳はない。
まだ自信がなくおどおどしているが、彼女が一番背も高く年上だった。性格も穏やかで周囲に気配りが出来ることから、アスタロトお勧めのまとめ役として期待している。アデーレと養子縁組の申請書が出ていたので、つい先日許可を出したばかりだ。
「ルカちゃんも呼び捨て?」
「そうだ」
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