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17章 リリスのお取り巻き
218. ここにきて人見知り?!
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大広間はがらんとしている。それも当然だ。本来なら魔族すべての爵位持ちが集まっても収容できる広さがあるのに、子供10人とその付き添いしかいない。案内してきた侍女や侍従は広間の外に控えていた。
玉座のある段上へあがり、玉座の前で立ち止まった。今日は謁見ではないので、玉座に腰掛ける必要はない。声掛かりを待つ側近候補達を見回した。
「待たせた」
「「「「魔王陛下、ご機嫌麗しゅう」」」」
「あ、堅苦しい挨拶は省いていいぞ」
ひらひら手を振って挨拶を中断させると、子供達は明らかにほっとした表情になった。緊張させたらしい。まあ、親に「失敗したら殺される」くらいの脅しをかけられた可能性もある。
「リリス、どうした?」
なぜかリリスが黒衣の後ろに隠れている。上位貴族特有のずるずるした引きずる衣装の影から、ちょっと顔を覗かせている状況だった。
今までリリスがこんな態度をとったことはない。誰にでも機嫌よく手を振り、愛想を振りまく子だったが……誰か苦手な子でもいるんだろうか。
「出ておいで」
「やぁ」
前に押し出そうと繋いだ手を引くと、首を横に振って後ろに逃げ込んでしまった。よくぐずった赤子の頃を思い出して、つい頬が緩む。ひとつ深呼吸してから膝をついて、リリスの手を引いた。
ルシファーと向かい合ったリリスは不満そうに唇を尖らせている。
「何か気に入らないなら言わないとダメだ。お友達を作るのに、そんな赤ちゃんじゃ困るぞ」
「赤ちゃんじゃないもん」
「そうだな、お姉さんならちゃんと挨拶できるだろ?」
頷くのに陰から出ようとしない。困ったルシファーが立ち上がると、リリスが泣きそうな顔で見上げてくる。何が嫌で、何を困っているのか。まったく分からなくて、眉尻を下げて肩を落とした。
「陛下……」
小声で呼びかけたアスタロトが近づき、耳元で囁いた。
「アデーレによれば、おそらく人見知りではないかと」
「なんでいきなり? 昨日まで平気だったぞ」
同様に小声で返す。しかし育児経験があり、2人の子の親である侍女のアデーレがもたらす情報は、かなり信憑性が高かった。確かに育児書にあった人見知りの症状に似ている気がする。だが人見知りとは、赤ちゃん状態で始まって3歳くらいで治るものだと書いてあった。
なんで5歳から始まったんだ?
「原因はわかりませんが、症状は似ています」
アスタロトも育児書を一緒になって読み漁った仲間なので、同じ結論に至ったらしい。
少なくとも昨日まで、見知らぬ人族に手を振ったり笑顔だったので平気だった。お友達が泊まりに来ると昨夜は大興奮だったので、別に他の子供と接触することを厭う様子もない。とすれば……この場に来て突然何かに反応したのだ。
目の前にいる子供はぴったり10人。妖精系が3人、獣人系が3人、見た目に特徴がない種族が2人、鱗のある子が1人、最後はエルフだった。リザードマンが平気だったリリスが鱗を嫌がるはずはないし、獣人系も耳や尻尾がある程度だ。
「リリスが嫌なら今日は中止するか」
「残念ですが……リリス姫の側近選びですからね。主役がこの状態では無理でしょう」
さすがのアスタロトも、天気と子供の機嫌はどうにもならない。ため息をついた2人の様子に、リリスはちらっと顔を覗かせた。
「あのね……パパ」
「今日はもうお部屋に帰ろうか」
「違うの、あの子が」
そう言ってリリスが指差したのは、エルフの少女だった。
玉座のある段上へあがり、玉座の前で立ち止まった。今日は謁見ではないので、玉座に腰掛ける必要はない。声掛かりを待つ側近候補達を見回した。
「待たせた」
「「「「魔王陛下、ご機嫌麗しゅう」」」」
「あ、堅苦しい挨拶は省いていいぞ」
ひらひら手を振って挨拶を中断させると、子供達は明らかにほっとした表情になった。緊張させたらしい。まあ、親に「失敗したら殺される」くらいの脅しをかけられた可能性もある。
「リリス、どうした?」
なぜかリリスが黒衣の後ろに隠れている。上位貴族特有のずるずるした引きずる衣装の影から、ちょっと顔を覗かせている状況だった。
今までリリスがこんな態度をとったことはない。誰にでも機嫌よく手を振り、愛想を振りまく子だったが……誰か苦手な子でもいるんだろうか。
「出ておいで」
「やぁ」
前に押し出そうと繋いだ手を引くと、首を横に振って後ろに逃げ込んでしまった。よくぐずった赤子の頃を思い出して、つい頬が緩む。ひとつ深呼吸してから膝をついて、リリスの手を引いた。
ルシファーと向かい合ったリリスは不満そうに唇を尖らせている。
「何か気に入らないなら言わないとダメだ。お友達を作るのに、そんな赤ちゃんじゃ困るぞ」
「赤ちゃんじゃないもん」
「そうだな、お姉さんならちゃんと挨拶できるだろ?」
頷くのに陰から出ようとしない。困ったルシファーが立ち上がると、リリスが泣きそうな顔で見上げてくる。何が嫌で、何を困っているのか。まったく分からなくて、眉尻を下げて肩を落とした。
「陛下……」
小声で呼びかけたアスタロトが近づき、耳元で囁いた。
「アデーレによれば、おそらく人見知りではないかと」
「なんでいきなり? 昨日まで平気だったぞ」
同様に小声で返す。しかし育児経験があり、2人の子の親である侍女のアデーレがもたらす情報は、かなり信憑性が高かった。確かに育児書にあった人見知りの症状に似ている気がする。だが人見知りとは、赤ちゃん状態で始まって3歳くらいで治るものだと書いてあった。
なんで5歳から始まったんだ?
「原因はわかりませんが、症状は似ています」
アスタロトも育児書を一緒になって読み漁った仲間なので、同じ結論に至ったらしい。
少なくとも昨日まで、見知らぬ人族に手を振ったり笑顔だったので平気だった。お友達が泊まりに来ると昨夜は大興奮だったので、別に他の子供と接触することを厭う様子もない。とすれば……この場に来て突然何かに反応したのだ。
目の前にいる子供はぴったり10人。妖精系が3人、獣人系が3人、見た目に特徴がない種族が2人、鱗のある子が1人、最後はエルフだった。リザードマンが平気だったリリスが鱗を嫌がるはずはないし、獣人系も耳や尻尾がある程度だ。
「リリスが嫌なら今日は中止するか」
「残念ですが……リリス姫の側近選びですからね。主役がこの状態では無理でしょう」
さすがのアスタロトも、天気と子供の機嫌はどうにもならない。ため息をついた2人の様子に、リリスはちらっと顔を覗かせた。
「あのね……パパ」
「今日はもうお部屋に帰ろうか」
「違うの、あの子が」
そう言ってリリスが指差したのは、エルフの少女だった。
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