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11章 即位記念祭は危険がいっぱい
133. 翼の出し方
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「リリスちゃんは今年お披露目を行うのですか?」
担任のガミジン先生の声に、ルシファーは機嫌よく振り返った。
「ああ、側近からの勧めだ。すでに魔力の流れも感知しているから問題ないだろう」
「それなら今年の代表をお任せしましょうか」
途中で話に口を挟んだドライアドのミュルミュール先生が、笑顔で提案する。しかし、ここで綿菓子を振っていたリリスが強権発動した。
「いやぁ!」
苦笑いした大人をよそに、リリスは楽しそうに綿飴を食べ始める。機嫌は悪くないようだ。気づくと綿飴を手離して、ルシファーの髪飾りに手を伸ばしていた。
しゃらしゃら…音を立てて飾りを揺らす幼女は、無造作に魔法で綿菓子を浮かせたまま、両手で遊び始める。着付けたアスタロトやベリアルが見たら、悲鳴をあげそうな光景だった。
ひとつ飾りを手に入れてご機嫌のリリスに、ルシファーが再び提案する。手に馴染む黒髪を手早く結って、自分の髪から外した飾りをつけて留めた。
「リリスが代表しないなら、パパがやろうかな~」
「だめ! いや!!」
「どうして?」
「リリスがやるもん」
得意げなリリスの宣言に、ミュルミュールがくすくす笑う。見事な手並みに、ガミジンも驚いて魔王を凝視した。
「すっかりパパですね」
「難癖つける貴族より、素直な分だけ楽だぞ」
ルシファーに撫でられるリリスは、黒髪についた飾りに満足げだ。手にしたもう1つも差し出した。
「これも!」
「左右につけるか。似合うぞ、リリス」
先ほどの飾りの位置を直し、左右対称になるよう付け直した。リリスが頭を動かすと、しゃらんと涼しげな音がする。
宙に浮いたまま放置された綿菓子を消すと、リリスに頬ずりした。
「パパ、おかしは?」
「お部屋にあるよ」
ふーんと納得したリリスは、ルシファーの首に手を回した。抱き着いた娘を抱き締め返すルシファーの頬が笑み崩れる。
「本当に可愛い」
「リリス、かわいいの?」
「パパが知る誰より可愛いぞ!」
全力で愛情を伝えるルシファーが、ふと我に返って振り返った。
「ところで、お披露目の代表とは何をするんだ?」
子供がいなかった魔王が、子供のイベントの詳細を知っているはずがない。当然の疑問へ、ミュルミュールが笑顔で答えた。
「種族によって違いますが、魔法を使ったり、魔力を解放したり。魔獣の子だと変化したりしますね。子供によって違いますよ」
「リリスは種族がわからないから……翼でも出すか?」
そこではたと気づく。リリスが羽を出したとき、彼女は自分の魔力を暴走させていた。自分の自由意志で翼の出し入れが出来るのか?
教えた覚えがないので、焦りで汗が滲む。教えておけばよかった。
「リリス、翼出せる? パパみたいに、こうやって」
4枚ある背中の翼を広げてみせると、リリスが考え込んでしまった。と、突然ばさりと翼が生える。
落としそうになって、慌てて魔力でリリスを支えた。リリスの背に白い翼が2枚現れると、頭上に光の輪が浮かぶ。どうやらセットらしい。
「こう?」
「そうだ! よく出来た、すごく似合うぞ」
ぶわっと周囲の風が動いた。旋風のように巻く風を、ルシファーが中和する。魔王の魔力に反応したリリスが首をかしげた。
「あったかいかんじする」
「それなら良かった」
冷たいとか、気持ち悪いと言われずにほっとする。翼を広げた黒髪の天使を抱き締めた、純白の魔王は幸せそうに笑った。
担任のガミジン先生の声に、ルシファーは機嫌よく振り返った。
「ああ、側近からの勧めだ。すでに魔力の流れも感知しているから問題ないだろう」
「それなら今年の代表をお任せしましょうか」
途中で話に口を挟んだドライアドのミュルミュール先生が、笑顔で提案する。しかし、ここで綿菓子を振っていたリリスが強権発動した。
「いやぁ!」
苦笑いした大人をよそに、リリスは楽しそうに綿飴を食べ始める。機嫌は悪くないようだ。気づくと綿飴を手離して、ルシファーの髪飾りに手を伸ばしていた。
しゃらしゃら…音を立てて飾りを揺らす幼女は、無造作に魔法で綿菓子を浮かせたまま、両手で遊び始める。着付けたアスタロトやベリアルが見たら、悲鳴をあげそうな光景だった。
ひとつ飾りを手に入れてご機嫌のリリスに、ルシファーが再び提案する。手に馴染む黒髪を手早く結って、自分の髪から外した飾りをつけて留めた。
「リリスが代表しないなら、パパがやろうかな~」
「だめ! いや!!」
「どうして?」
「リリスがやるもん」
得意げなリリスの宣言に、ミュルミュールがくすくす笑う。見事な手並みに、ガミジンも驚いて魔王を凝視した。
「すっかりパパですね」
「難癖つける貴族より、素直な分だけ楽だぞ」
ルシファーに撫でられるリリスは、黒髪についた飾りに満足げだ。手にしたもう1つも差し出した。
「これも!」
「左右につけるか。似合うぞ、リリス」
先ほどの飾りの位置を直し、左右対称になるよう付け直した。リリスが頭を動かすと、しゃらんと涼しげな音がする。
宙に浮いたまま放置された綿菓子を消すと、リリスに頬ずりした。
「パパ、おかしは?」
「お部屋にあるよ」
ふーんと納得したリリスは、ルシファーの首に手を回した。抱き着いた娘を抱き締め返すルシファーの頬が笑み崩れる。
「本当に可愛い」
「リリス、かわいいの?」
「パパが知る誰より可愛いぞ!」
全力で愛情を伝えるルシファーが、ふと我に返って振り返った。
「ところで、お披露目の代表とは何をするんだ?」
子供がいなかった魔王が、子供のイベントの詳細を知っているはずがない。当然の疑問へ、ミュルミュールが笑顔で答えた。
「種族によって違いますが、魔法を使ったり、魔力を解放したり。魔獣の子だと変化したりしますね。子供によって違いますよ」
「リリスは種族がわからないから……翼でも出すか?」
そこではたと気づく。リリスが羽を出したとき、彼女は自分の魔力を暴走させていた。自分の自由意志で翼の出し入れが出来るのか?
教えた覚えがないので、焦りで汗が滲む。教えておけばよかった。
「リリス、翼出せる? パパみたいに、こうやって」
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落としそうになって、慌てて魔力でリリスを支えた。リリスの背に白い翼が2枚現れると、頭上に光の輪が浮かぶ。どうやらセットらしい。
「こう?」
「そうだ! よく出来た、すごく似合うぞ」
ぶわっと周囲の風が動いた。旋風のように巻く風を、ルシファーが中和する。魔王の魔力に反応したリリスが首をかしげた。
「あったかいかんじする」
「それなら良かった」
冷たいとか、気持ち悪いと言われずにほっとする。翼を広げた黒髪の天使を抱き締めた、純白の魔王は幸せそうに笑った。
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