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8章 魔王陛下の嫁取り騒動勃発
97. 多すぎる候補にうんざり
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「この中からお選びください」
城門から見下ろす丘は見渡す限り女性達が並んでいた。幼女から老婆まで、年齢も種族もバラバラの集め方だ。手当たり次第『未婚の女』に分類される魔族を集めたような光景に、ルシファーは溜め息を吐く。
「……なぜ、余が嫁を選ばねばならぬ」
混乱しすぎて、口調が魔王陛下バージョンになったルシファーだが、この中から選べといわれても全員同じに見える。分類は出来る。角の有無、翼の有無、魔力量、種族などで分類は出来るが、嫁を取る気もないのに選べるわけがなく……。
「全部いやだ」
どれでもいいと言ったが最後、どれを押し付けられるかわからない。愛せないのに嫁がせるのは、相手に気の毒だと首を横に振った。選ぶことが出来ないなら、選ばなければいい。とんでもない理論で断ったルシファーは、その場でしゃがみこんだ。
項垂れたルシファーの姿に、大公達は顔を見合わせる。それぞれの派閥から申し出のあった未婚女性を並べたのだが、逆に『嫁なんて要らない』と拗ねさせてしまった。
「全部断る。絶対に嫌だ。嫁は要らない!」
きっぱり言い切ると、踵を返して城門を降りた。今回は嫁候補を選択させるつもりだったので、リリス嬢が保育園に通っている時間を利用した公務として時間を割いたが、完全に裏目にでた。拗ねたルシファーは執務用の仮部屋に閉じこもり、黙々と書類整理を始める。
まだ右手が痛むが、あの女性達の相手をするなら痛みを我慢する。不満を隠そうとせず不機嫌な表情で書類を引き寄せ、目を通して署名を行う。てきぱきした姿は、それだけルシファーが怒っている証拠だった。
「陛下……」
「次の書類」
執り成そうとするベールの声を切り捨てて、次の書類を捲る。内容を確かめて署名をした。次の書類は修正線を引いて書き直し、そのまま返却箱に積む。書類以外見ようとしない頑なな態度に、ベールは諦めた様子で部屋を辞した。
「どうですか?」
「書類以外を無視します」
「そこまで怒らせましたか」
溜め息をついたアスタロトは、城門の外の騒ぎを思い浮かべる。魔王の嫁取りは、国民がこぞって注目する大イベントとなっていた。騒ぎが大きすぎて、候補だけでも絞らないと収集がつかない。だが今のルシファーに無理押しすれば、魔王を降りると言い出しかねなかった。
「ベール、あなたは来春の即位記念祭の準備をしてください。そこで王妃候補の発表をします」
問題の先延ばしのようだが、アスタロトは何か秘策があるようだ。口元が僅かに笑みに歪んでいる。後を任せることにしたベールが、ふと窓の外の日差しに気付いた。かなり傾いている。
保育園はお迎えが始まっている頃だろう。リリス嬢のことを忘れるはずはないが、今日のルシファーが外出して無事に帰ってこれる保証はない。
「陛下に、今日のリリス嬢のお迎えは私が行きますと伝えてください」
「伝えますが、納得しませんよ」
「囲まれてもみくちゃにされても構わなければどうぞ、と」
にっこり笑ったベールが嫌味を残して消える。確かに城門の外はまだ女性達が犇めいており、魔力を封じて転移が使えないルシファーが通れば、格好の的だった。
「仕方ありませんね」
どんより重い空気を纏った執務室のドアを開きながら、アスタロトは書類整理に勤しむルシファーの前に立つ。不機嫌さを隠そうとしない魔王へ、転移による送迎の提案を土産に声をかけた。
「陛下、リリス嬢のお迎えにいきましょう」
城門から見下ろす丘は見渡す限り女性達が並んでいた。幼女から老婆まで、年齢も種族もバラバラの集め方だ。手当たり次第『未婚の女』に分類される魔族を集めたような光景に、ルシファーは溜め息を吐く。
「……なぜ、余が嫁を選ばねばならぬ」
混乱しすぎて、口調が魔王陛下バージョンになったルシファーだが、この中から選べといわれても全員同じに見える。分類は出来る。角の有無、翼の有無、魔力量、種族などで分類は出来るが、嫁を取る気もないのに選べるわけがなく……。
「全部いやだ」
どれでもいいと言ったが最後、どれを押し付けられるかわからない。愛せないのに嫁がせるのは、相手に気の毒だと首を横に振った。選ぶことが出来ないなら、選ばなければいい。とんでもない理論で断ったルシファーは、その場でしゃがみこんだ。
項垂れたルシファーの姿に、大公達は顔を見合わせる。それぞれの派閥から申し出のあった未婚女性を並べたのだが、逆に『嫁なんて要らない』と拗ねさせてしまった。
「全部断る。絶対に嫌だ。嫁は要らない!」
きっぱり言い切ると、踵を返して城門を降りた。今回は嫁候補を選択させるつもりだったので、リリス嬢が保育園に通っている時間を利用した公務として時間を割いたが、完全に裏目にでた。拗ねたルシファーは執務用の仮部屋に閉じこもり、黙々と書類整理を始める。
まだ右手が痛むが、あの女性達の相手をするなら痛みを我慢する。不満を隠そうとせず不機嫌な表情で書類を引き寄せ、目を通して署名を行う。てきぱきした姿は、それだけルシファーが怒っている証拠だった。
「陛下……」
「次の書類」
執り成そうとするベールの声を切り捨てて、次の書類を捲る。内容を確かめて署名をした。次の書類は修正線を引いて書き直し、そのまま返却箱に積む。書類以外見ようとしない頑なな態度に、ベールは諦めた様子で部屋を辞した。
「どうですか?」
「書類以外を無視します」
「そこまで怒らせましたか」
溜め息をついたアスタロトは、城門の外の騒ぎを思い浮かべる。魔王の嫁取りは、国民がこぞって注目する大イベントとなっていた。騒ぎが大きすぎて、候補だけでも絞らないと収集がつかない。だが今のルシファーに無理押しすれば、魔王を降りると言い出しかねなかった。
「ベール、あなたは来春の即位記念祭の準備をしてください。そこで王妃候補の発表をします」
問題の先延ばしのようだが、アスタロトは何か秘策があるようだ。口元が僅かに笑みに歪んでいる。後を任せることにしたベールが、ふと窓の外の日差しに気付いた。かなり傾いている。
保育園はお迎えが始まっている頃だろう。リリス嬢のことを忘れるはずはないが、今日のルシファーが外出して無事に帰ってこれる保証はない。
「陛下に、今日のリリス嬢のお迎えは私が行きますと伝えてください」
「伝えますが、納得しませんよ」
「囲まれてもみくちゃにされても構わなければどうぞ、と」
にっこり笑ったベールが嫌味を残して消える。確かに城門の外はまだ女性達が犇めいており、魔力を封じて転移が使えないルシファーが通れば、格好の的だった。
「仕方ありませんね」
どんより重い空気を纏った執務室のドアを開きながら、アスタロトは書類整理に勤しむルシファーの前に立つ。不機嫌さを隠そうとしない魔王へ、転移による送迎の提案を土産に声をかけた。
「陛下、リリス嬢のお迎えにいきましょう」
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