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57.無事に帰港できてよかった
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帰りは速かった。船が壊れるかと思うほど、波を蹴立てて走る。行きは五日近くかかったのに、帰りは一日半。本国へ向かうには追い風だったことを考慮すると、さらに速かった計算になるわね。
向かい風をものともしないドラゴン達は、はしゃぎながら遊び半分で船を押した。適度に休んで交代していたし、途中でいなくなっては果物の木を運んでくる。それ、どこから引き抜いてきたのよ。根が付いたままの木から、豪快に実を食べていたわ。
ちなみにお裾分けをもらってしまい、手元に真っ赤な果実がある。旅の途中の楽しみと思いながら就寝したら、翌日の午後は到着していたので食べ損ねたの。
「ありがとう、リュシー。他のドラゴン達も、休んで頂戴」
湾の手前で押すのをやめてもらい、魔法道具で入港した。あのまま押されたら、激突して粉々だったかも。反対側で受け止める気はあったと説明する銀竜に、それをしたら船が砕けちゃうのよと教える。彼らの身体の強さと、船の強度は同じじゃない。
「随分と早く帰還したけれど、途中で何かあったの?」
心配そうにお母様が出迎え、叔母様の姿が見当たらない。ユーグ叔父様もいないから、察してしまった。
「心配するな、無事に片付いた」
はっはっはと豪快に笑うお父様だけど、顔色は青い。先程まで吐いてたんですもの。ドラゴンの操船は強烈で、船が木の葉のように揺れた。比喩ではなく、本当に浮いたり落ちたりしたんじゃないかしら。さすがにこの揺れは、乗船者の半数が酔った。
盛大に酔っても、危険で甲板の風に当たることもできない。さらに嘔吐物が船の中で踊りまくり、壁や床を汚した。捨てに行こうとして、廊下にぶちまけた人もいたわね。酔ってなかったけれど、その臭いに負けて吐いた人も出て。
結局、船員さんと一部の強者だけが切り抜けた。私はその一人よ。揺れで体をぶつけたりはしたけれど、嘔吐はなかったわ。可哀想なのはレオで、元々酔うタチの彼は小部屋から出てこなかった。情けない姿を見せられないそうよ。
今も下船するからと呼んだのに、身なりを整えて落ち着いてからおりると断られたの。あの男をここまで打ちのめすのは、他にないわね。
「あなた、無事で何よりですわ」
お母様とお父様がひしっと抱き合う。娘の前で何をしているのという思いより、よかったわねと祝う気持ちが大きい。あんなに派手に見送ってもらったのに、本国ではグダグダで。下ろした武器も使わずに担いで練り歩いただけ。
持って帰るのは重いし、人もたくさん乗る予定だったので、港の倉庫に置いてきた。武器なんて使わない方がいい。
港の地を踏んだら、ぐらりと揺れた。さすがに陸酔いは避けられない。あの揺れよりマシね。後ろを振り返り、手すりにもたれるレオを見上げた。船から降りたら陸酔いだけど、耐えられるかしら。私の前では吐かないと頑張っていたっけ。
よろよろと支えられながら降りてくるレオが吐いても、私の愛は変わらないわよ。笑顔で両手を広げて呼んだ。
「はやく来て、レオ!」
向かい風をものともしないドラゴン達は、はしゃぎながら遊び半分で船を押した。適度に休んで交代していたし、途中でいなくなっては果物の木を運んでくる。それ、どこから引き抜いてきたのよ。根が付いたままの木から、豪快に実を食べていたわ。
ちなみにお裾分けをもらってしまい、手元に真っ赤な果実がある。旅の途中の楽しみと思いながら就寝したら、翌日の午後は到着していたので食べ損ねたの。
「ありがとう、リュシー。他のドラゴン達も、休んで頂戴」
湾の手前で押すのをやめてもらい、魔法道具で入港した。あのまま押されたら、激突して粉々だったかも。反対側で受け止める気はあったと説明する銀竜に、それをしたら船が砕けちゃうのよと教える。彼らの身体の強さと、船の強度は同じじゃない。
「随分と早く帰還したけれど、途中で何かあったの?」
心配そうにお母様が出迎え、叔母様の姿が見当たらない。ユーグ叔父様もいないから、察してしまった。
「心配するな、無事に片付いた」
はっはっはと豪快に笑うお父様だけど、顔色は青い。先程まで吐いてたんですもの。ドラゴンの操船は強烈で、船が木の葉のように揺れた。比喩ではなく、本当に浮いたり落ちたりしたんじゃないかしら。さすがにこの揺れは、乗船者の半数が酔った。
盛大に酔っても、危険で甲板の風に当たることもできない。さらに嘔吐物が船の中で踊りまくり、壁や床を汚した。捨てに行こうとして、廊下にぶちまけた人もいたわね。酔ってなかったけれど、その臭いに負けて吐いた人も出て。
結局、船員さんと一部の強者だけが切り抜けた。私はその一人よ。揺れで体をぶつけたりはしたけれど、嘔吐はなかったわ。可哀想なのはレオで、元々酔うタチの彼は小部屋から出てこなかった。情けない姿を見せられないそうよ。
今も下船するからと呼んだのに、身なりを整えて落ち着いてからおりると断られたの。あの男をここまで打ちのめすのは、他にないわね。
「あなた、無事で何よりですわ」
お母様とお父様がひしっと抱き合う。娘の前で何をしているのという思いより、よかったわねと祝う気持ちが大きい。あんなに派手に見送ってもらったのに、本国ではグダグダで。下ろした武器も使わずに担いで練り歩いただけ。
持って帰るのは重いし、人もたくさん乗る予定だったので、港の倉庫に置いてきた。武器なんて使わない方がいい。
港の地を踏んだら、ぐらりと揺れた。さすがに陸酔いは避けられない。あの揺れよりマシね。後ろを振り返り、手すりにもたれるレオを見上げた。船から降りたら陸酔いだけど、耐えられるかしら。私の前では吐かないと頑張っていたっけ。
よろよろと支えられながら降りてくるレオが吐いても、私の愛は変わらないわよ。笑顔で両手を広げて呼んだ。
「はやく来て、レオ!」
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