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16.明暗を分けた二つの答え

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 自室へ戻れば、すぐにレオが現れる。彼はとても機嫌がよかった。勝手にベッドに腰掛け、隣に座れとシーツを叩く。甘やかし過ぎるのはよくないけれど、仕方ないわね。

 何か内緒話があるのだろう。表情から察して、隣に腰掛けた。頭の上に獣耳の幻影が見えるわ。ぺたんと倒して、すごくご機嫌っぽい。ちなみにこれは兄限定で察してしまうけれど、能力ではないのよ。

「仕掛けはきちんと生きたね」

「ええ」

 ジュアン公爵家は、国王アシルが認める王女の後見人に立候補するだろう。オータン子爵から奪う機会を、ずっと待っていた。預かるという名目であっても、切り札になる子を手放した子爵家のミスよ。

 まあ、手元に置いても切り札かどうかは……保証できなけれどね。

「証拠は揃っているわよね」

「もちろんだ。証人もきちんと確保しているさ」

 私の銀髪を一房手に取り、口元に寄せてうっとり目を細める。美形でも許されるギリギリの線よ。匂いを確かめても、レオと同じ薔薇の香りしかしないと思うけれど。

「いつでも使えるようにしておいて頂戴」

「完璧に整えておく」

 嬉しそうなレオの、私よりやや暗い銀髪を撫でる。腹に顔を埋める形で抱きつき、幸せだと呟くレオの好きにさせた。ちょっと、くんくん嗅がないで頂戴! 焦るじゃないの。ぽかっと頭を叩いて顔を上げさせる。

「死人は何も話せない。都合がいいけれど……誰が事故を起こしたのかしらね」

 ル・フォール大公家は命じていないし、動かなかった。ルフォルの貴族か、それとも別に利害関係がある一族か。

 国王アシルは表面上、オータン子爵家を援助しなかった。でもそれは、表に出る部分だけ。彼は子爵令嬢の地位に見合わぬ宝飾品やドレスを贈っていた。私財から出したから、バレないと思ったのかしら。

 ドレスや宝飾品の注文を受ける店は、王家からの発注を嬉しそうに話してくれたわ。王家より少し高額な買い物をしただけなのに、ね。その後も情報は入っていた。

「悪い顔をしているね、シャル」

「あら、そういう私も好きでしょう?」

「もちろんさ。話は変わるが……彼を呼び寄せておいた」

 我がル・フォール大公家は海に近い領地を持つ。その広大な領地に置いた管理人は、元騎士だった。自ら先頭に立って戦うことができ、民の信頼も厚い。その上、この地を離れて本国へ戻りたくない理由があった。

 本国での騎士爵を返上した彼を、ル・フォール家が匿う。それはリスクしかないけれど、お父様だけでなく家族全員が賛同した。

「いつ到着するの」

「明日には来ると思うよ。最優先で伝令を出した。仕事の引き継ぎなんて、一日もあれば終わるだろう」

 俺なら一日以上かけない。すぐに馬に乗って飛んでくる。言い切った兄の顔を見ながら、納得してしまった。同じタイプなのよね、あの騎士様。

 セレーヌ叔母様の喜ぶ顔を思い浮かべながら、私は口元を緩めた。
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