【完結】もう結構ですわ!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
16 / 80

16.明暗を分けた二つの答え

しおりを挟む
 自室へ戻れば、すぐにレオが現れる。彼はとても機嫌がよかった。勝手にベッドに腰掛け、隣に座れとシーツを叩く。甘やかし過ぎるのはよくないけれど、仕方ないわね。

 何か内緒話があるのだろう。表情から察して、隣に腰掛けた。頭の上に獣耳の幻影が見えるわ。ぺたんと倒して、すごくご機嫌っぽい。ちなみにこれは兄限定で察してしまうけれど、能力ではないのよ。

「仕掛けはきちんと生きたね」

「ええ」

 ジュアン公爵家は、国王アシルが認める王女の後見人に立候補するだろう。オータン子爵から奪う機会を、ずっと待っていた。預かるという名目であっても、切り札になる子を手放した子爵家のミスよ。

 まあ、手元に置いても切り札かどうかは……保証できなけれどね。

「証拠は揃っているわよね」

「もちろんだ。証人もきちんと確保しているさ」

 私の銀髪を一房手に取り、口元に寄せてうっとり目を細める。美形でも許されるギリギリの線よ。匂いを確かめても、レオと同じ薔薇の香りしかしないと思うけれど。

「いつでも使えるようにしておいて頂戴」

「完璧に整えておく」

 嬉しそうなレオの、私よりやや暗い銀髪を撫でる。腹に顔を埋める形で抱きつき、幸せだと呟くレオの好きにさせた。ちょっと、くんくん嗅がないで頂戴! 焦るじゃないの。ぽかっと頭を叩いて顔を上げさせる。

「死人は何も話せない。都合がいいけれど……誰が事故を起こしたのかしらね」

 ル・フォール大公家は命じていないし、動かなかった。ルフォルの貴族か、それとも別に利害関係がある一族か。

 国王アシルは表面上、オータン子爵家を援助しなかった。でもそれは、表に出る部分だけ。彼は子爵令嬢の地位に見合わぬ宝飾品やドレスを贈っていた。私財から出したから、バレないと思ったのかしら。

 ドレスや宝飾品の注文を受ける店は、王家からの発注を嬉しそうに話してくれたわ。王家より少し高額な買い物をしただけなのに、ね。その後も情報は入っていた。

「悪い顔をしているね、シャル」

「あら、そういう私も好きでしょう?」

「もちろんさ。話は変わるが……彼を呼び寄せておいた」

 我がル・フォール大公家は海に近い領地を持つ。その広大な領地に置いた管理人は、元騎士だった。自ら先頭に立って戦うことができ、民の信頼も厚い。その上、この地を離れて本国へ戻りたくない理由があった。

 本国での騎士爵を返上した彼を、ル・フォール家が匿う。それはリスクしかないけれど、お父様だけでなく家族全員が賛同した。

「いつ到着するの」

「明日には来ると思うよ。最優先で伝令を出した。仕事の引き継ぎなんて、一日もあれば終わるだろう」

 俺なら一日以上かけない。すぐに馬に乗って飛んでくる。言い切った兄の顔を見ながら、納得してしまった。同じタイプなのよね、あの騎士様。

 セレーヌ叔母様の喜ぶ顔を思い浮かべながら、私は口元を緩めた。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

白い結婚がいたたまれないので離縁を申し出たのですが……。

蓮実 アラタ
恋愛
その日、ティアラは夫に告げた。 「旦那様、私と離縁してくださいませんか?」 王命により政略結婚をしたティアラとオルドフ。 形だけの夫婦となった二人は互いに交わることはなかった。 お飾りの妻でいることに疲れてしまったティアラは、この関係を終わらせることを決意し、夫に離縁を申し出た。 しかしオルドフは、それを絶対に了承しないと言い出して……。 純情拗らせ夫と比較的クール妻のすれ違い純愛物語……のはず。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?

蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」 ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。 リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。 「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」 結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。 愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。 これからは自分の幸せのために生きると決意した。 そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。 「迎えに来たよ、リディス」 交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。 裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。 ※完結まで書いた短編集消化のための投稿。 小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

処理中です...