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12.朝から報告がいっぱい
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朝から騒々しいわ。ゆっくり眠って目が覚めたら、部屋にレオがいてびっくりした。さすがに婚約者といえど、無言でお部屋に入ってはダメと言い聞かせる。耳の垂れた大型犬みたいな表情で、くーんと甘えてくるもダメなものはダメです。
ぴしゃんと言い聞かせ、部屋から追い出した。着替えを終える頃、今度はお父様が訪ねてくる。着替え終えたところなので、食堂へ一緒に移動した。
ふっくらしたオムレツは、ナイフを入れるとチーズがとろり……美味しそう。サラダもスープもパンも、すべて文句のつけようがなかった。我が侭を言って珈琲を用意してもらう。この苦みで目が覚めるのよね。美味しく朝食を頂く私の隣で、レオがそわそわと世話を焼いた。
ルフォルの血族は、不思議な能力を持つ先祖返りが出る。かつては魔法を扱って世界を支配したご先祖様は、基本的に性格破綻者が多かった。愛した女性の手足を切って監禁したり、愛しすぎて食べてしまったり……醜聞と言っても過言でない騒動を起こす。その血がしっかり出たレオポルドも、異常者だった。
私に関することでは、とにかく狭量というか。それでいて、私の命令は最優先なのよ。どんな理不尽な命令でも、全力で叶えようとする。忠誠心の強すぎる番犬――が近いかしら。でも、絶対服従ではなかった。どこまで行っても優先に留まる。
私のためになると考えれば、本国すら滅ぼそうとするでしょうね。待てを教えても、わざと約束を破ってお仕置きを求めたこともあったわ。パンにジャムを塗り、迷ってバターはやめた。ぱくりと食べた横で、満面の笑みを向けるレオ。本当に大型犬みたい。
食堂は家族四人で、叔母様の姿はなかった。尋ねたところ、すでに食事を終えて散歩をなさっているとか。我が家が怠惰なのか、叔母様が勤勉なのか、判断に困るわ。
「ご自分の食事をなさって、お兄様」
「レオ、だ」
「自分の食事をしなさい、レオ」
訂正された通りに愛称を呼ぶ。嬉しそうに笑う顔に、暗い感情はなかった。叱られるのを愛情だと思っているフシがあって、本国のル・シャトリエ公爵家の教育を疑ったことは数えきれない。まあ、レオの兄であるアルノー様が普通だから、疑惑は早くに晴れたけれど。
「よく聞きなさい。アシルの愛人が昨夜、馬車の事故に遭った」
もう国王と呼ぶ気はない。お父様の判断にゆっくりした瞬きで応じた。恋人と称していたけれど、まあ我が家にしたら愛人よね。セレーヌ叔母様と結婚したのに、浮気相手と別れなかったんだもの。目を細めた私に、お父様は追加の情報を差し出した。
「各貴族家がオータン子爵家に黒封筒を送り付けた」
「ご命令なさったの?」
「そこまでする必要もない。自主的な判断だろう」
お父様は平然と受け流す。隣で微笑むお母様もおっとり頷いた。見た目は人畜無害そうなお母様は、柔らかな薄茶の髪に緑の瞳を持つ。箱入り娘のような風情だが、当然、ただのおっとり貴族夫人ではなかった。このお父様の妻になり、社交界でも常に人の輪の中心にいる人だもの。
ただ人であるはずがなかった。誰かを貶める発言はしないのに、お母様が僅かに表情を曇らせるとお相手の家は景気が悪くなる。商人が手を引いたり、領地で不作が続いたり。これも先祖返りの力の一部だと聞いた。今回の黒い帯付き封筒も、お母様の影響が強いでしょうね。
ぴしゃんと言い聞かせ、部屋から追い出した。着替えを終える頃、今度はお父様が訪ねてくる。着替え終えたところなので、食堂へ一緒に移動した。
ふっくらしたオムレツは、ナイフを入れるとチーズがとろり……美味しそう。サラダもスープもパンも、すべて文句のつけようがなかった。我が侭を言って珈琲を用意してもらう。この苦みで目が覚めるのよね。美味しく朝食を頂く私の隣で、レオがそわそわと世話を焼いた。
ルフォルの血族は、不思議な能力を持つ先祖返りが出る。かつては魔法を扱って世界を支配したご先祖様は、基本的に性格破綻者が多かった。愛した女性の手足を切って監禁したり、愛しすぎて食べてしまったり……醜聞と言っても過言でない騒動を起こす。その血がしっかり出たレオポルドも、異常者だった。
私に関することでは、とにかく狭量というか。それでいて、私の命令は最優先なのよ。どんな理不尽な命令でも、全力で叶えようとする。忠誠心の強すぎる番犬――が近いかしら。でも、絶対服従ではなかった。どこまで行っても優先に留まる。
私のためになると考えれば、本国すら滅ぼそうとするでしょうね。待てを教えても、わざと約束を破ってお仕置きを求めたこともあったわ。パンにジャムを塗り、迷ってバターはやめた。ぱくりと食べた横で、満面の笑みを向けるレオ。本当に大型犬みたい。
食堂は家族四人で、叔母様の姿はなかった。尋ねたところ、すでに食事を終えて散歩をなさっているとか。我が家が怠惰なのか、叔母様が勤勉なのか、判断に困るわ。
「ご自分の食事をなさって、お兄様」
「レオ、だ」
「自分の食事をしなさい、レオ」
訂正された通りに愛称を呼ぶ。嬉しそうに笑う顔に、暗い感情はなかった。叱られるのを愛情だと思っているフシがあって、本国のル・シャトリエ公爵家の教育を疑ったことは数えきれない。まあ、レオの兄であるアルノー様が普通だから、疑惑は早くに晴れたけれど。
「よく聞きなさい。アシルの愛人が昨夜、馬車の事故に遭った」
もう国王と呼ぶ気はない。お父様の判断にゆっくりした瞬きで応じた。恋人と称していたけれど、まあ我が家にしたら愛人よね。セレーヌ叔母様と結婚したのに、浮気相手と別れなかったんだもの。目を細めた私に、お父様は追加の情報を差し出した。
「各貴族家がオータン子爵家に黒封筒を送り付けた」
「ご命令なさったの?」
「そこまでする必要もない。自主的な判断だろう」
お父様は平然と受け流す。隣で微笑むお母様もおっとり頷いた。見た目は人畜無害そうなお母様は、柔らかな薄茶の髪に緑の瞳を持つ。箱入り娘のような風情だが、当然、ただのおっとり貴族夫人ではなかった。このお父様の妻になり、社交界でも常に人の輪の中心にいる人だもの。
ただ人であるはずがなかった。誰かを貶める発言はしないのに、お母様が僅かに表情を曇らせるとお相手の家は景気が悪くなる。商人が手を引いたり、領地で不作が続いたり。これも先祖返りの力の一部だと聞いた。今回の黒い帯付き封筒も、お母様の影響が強いでしょうね。
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