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36.強請って欲しいんだろ? ※微
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この世界に来て、どのくらい経ったのか。少なくとも10年以上は経ったと思う。経過を判断する基準は、長く伸び続ける髪くらいだ。俺の黒髪が好きだと言って切らせない男は、今日も長い髪をブラシで手入れしている。
「楽しいか?」
「もちろんだ」
嫌味に肯定が返ってくると、それ以上意地悪も出来ない。ラプンツェルのように伸びた黒髪は、さらさらと手触りもよかった。質の良い香油を使って、毎日丁寧にブラッシングされるからだ。髪自慢のクラスメートの女子より、全然触り心地がよかった。
「その女子とやらは、髪を触れ合う関係だったのか?」
「二度と会えない奴に嫉妬するなよ」
肩を揺らして笑う。少し先に置かれた鏡には、この世界に来た年齢の俺が写っていた。そう、年を取らなくなったのだ。長く生きるってことは、成長も老化もゆっくりになる。生命力が満ちている魔族は、死の直前数日で急速に老化するらしい。
アザゼルしかいない部屋で過ごすうちに、服を着るのが面倒になった。今のところ運動不足で腹が出っぱることもないし、異世界物特有の妊娠事件もない。体型が崩れないならと自堕落な生活が、すっかり身についてしまった。
外見も変化するかと心配したが、異常に髪が伸びた以外の変化はない。アザゼルの説明よれば、髪に魔力を流し込んで変化を極力抑えたという。俺の外見が気に入ってるんだとさ。まあ角が生えたり尻尾が出てきても、それはそれで愛でてくれそうだ。魔力を注がれるたびに長くなる髪は、ついに俺の身長の倍近くに伸びていた。
「ハヤト」
俺の気が逸れたのを察して、アザゼルが手を伸ばす。長い髪を引っ張られたら、逃げ場がなかった。ベッドの下まで流れる黒髪は、まるで俺を繋ぐ鎖だった。首輪の鎖が外されたのも、そのせいかも。なのに首輪は取らないんだから、独占欲は相変わらずだ。
「なに?」
「分かっていて尋ねるか」
薄い唇が距離を詰め、思わず後ずさろうとした俺を縛るように髪が張る。これ以上は動けなくて、大人しく受け入れた。これはもう日常の一部だ。まるで儀式のようだった。求めるアザゼルから、一度は逃げる。すぐに捕まって貪られるんだけど、逃げるのをやめる気はなかった。
「ん……ぅふ、あっ」
胸の飾りを指先で遊ばれ、びくりと体が揺れる。腰の奥がじんと痺れ、求めるように疼いた。でも認めてやらない。
「ハヤト、強請れ」
「やだ」
「明日、外へ連れて行ってやろう」
「……ずるい」
たまに、気まぐれのようなタイミングで訪れる外出の機会、逃したくなかった。迷ったのは一瞬だ。ここで拒んでも、無理やり抱かれるのは同じだった。なら、外出の機会を掴む方が得だ。こういう考え方、もう一生直らないだろうな。どうしても損得で計算してしまう。
「アザゼル、もっと……くれよ」
「足りないな」
くつりと喉を鳴らして笑う男の首に手を回し、ぐいっと引き倒した。唇を合わせて濡れた音を響かせ、唾液をごくりと飲み干す。アザゼルの体液は何か興奮作用があるのか、量を摂取するとおかしくなる。腹の奥が精を欲して、俺の意思を無視して暴走した。今日はそれでいい。
「ふ、ぅ……んぁ、あ」
ぴちゃりと濡れた音をさせて唇を舐め、もう一度噛み付くように口付けた。もっと寄越せ、俺が狂うくらいに。唾液を求めて舌を絡ませて吸い上げる。ごくりと喉が鳴るたびに、背筋がぞくぞくした。
「楽しいか?」
「もちろんだ」
嫌味に肯定が返ってくると、それ以上意地悪も出来ない。ラプンツェルのように伸びた黒髪は、さらさらと手触りもよかった。質の良い香油を使って、毎日丁寧にブラッシングされるからだ。髪自慢のクラスメートの女子より、全然触り心地がよかった。
「その女子とやらは、髪を触れ合う関係だったのか?」
「二度と会えない奴に嫉妬するなよ」
肩を揺らして笑う。少し先に置かれた鏡には、この世界に来た年齢の俺が写っていた。そう、年を取らなくなったのだ。長く生きるってことは、成長も老化もゆっくりになる。生命力が満ちている魔族は、死の直前数日で急速に老化するらしい。
アザゼルしかいない部屋で過ごすうちに、服を着るのが面倒になった。今のところ運動不足で腹が出っぱることもないし、異世界物特有の妊娠事件もない。体型が崩れないならと自堕落な生活が、すっかり身についてしまった。
外見も変化するかと心配したが、異常に髪が伸びた以外の変化はない。アザゼルの説明よれば、髪に魔力を流し込んで変化を極力抑えたという。俺の外見が気に入ってるんだとさ。まあ角が生えたり尻尾が出てきても、それはそれで愛でてくれそうだ。魔力を注がれるたびに長くなる髪は、ついに俺の身長の倍近くに伸びていた。
「ハヤト」
俺の気が逸れたのを察して、アザゼルが手を伸ばす。長い髪を引っ張られたら、逃げ場がなかった。ベッドの下まで流れる黒髪は、まるで俺を繋ぐ鎖だった。首輪の鎖が外されたのも、そのせいかも。なのに首輪は取らないんだから、独占欲は相変わらずだ。
「なに?」
「分かっていて尋ねるか」
薄い唇が距離を詰め、思わず後ずさろうとした俺を縛るように髪が張る。これ以上は動けなくて、大人しく受け入れた。これはもう日常の一部だ。まるで儀式のようだった。求めるアザゼルから、一度は逃げる。すぐに捕まって貪られるんだけど、逃げるのをやめる気はなかった。
「ん……ぅふ、あっ」
胸の飾りを指先で遊ばれ、びくりと体が揺れる。腰の奥がじんと痺れ、求めるように疼いた。でも認めてやらない。
「ハヤト、強請れ」
「やだ」
「明日、外へ連れて行ってやろう」
「……ずるい」
たまに、気まぐれのようなタイミングで訪れる外出の機会、逃したくなかった。迷ったのは一瞬だ。ここで拒んでも、無理やり抱かれるのは同じだった。なら、外出の機会を掴む方が得だ。こういう考え方、もう一生直らないだろうな。どうしても損得で計算してしまう。
「アザゼル、もっと……くれよ」
「足りないな」
くつりと喉を鳴らして笑う男の首に手を回し、ぐいっと引き倒した。唇を合わせて濡れた音を響かせ、唾液をごくりと飲み干す。アザゼルの体液は何か興奮作用があるのか、量を摂取するとおかしくなる。腹の奥が精を欲して、俺の意思を無視して暴走した。今日はそれでいい。
「ふ、ぅ……んぁ、あ」
ぴちゃりと濡れた音をさせて唇を舐め、もう一度噛み付くように口付けた。もっと寄越せ、俺が狂うくらいに。唾液を求めて舌を絡ませて吸い上げる。ごくりと喉が鳴るたびに、背筋がぞくぞくした。
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