【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)

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27.早く寄越せっての!! ※微

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 アザゼルはなかなか帰って来ない。不安になって名を呼ぶと、するりと部屋に現れた。心配そうに距離を置いて俺に尋ねる。

「もう良いのか?」

 機嫌は直ったか? とも聞こえる言葉に、頬が緩んだ。ベッドでは好き勝手するのに、俺の機嫌を取る気はあるんだな。

「さっきはごめん。ちょっと動揺しちゃった」

「夢かと呟いたが」

「そう。変な夢見ちゃってさ、混乱したんだよ」

 近づく間も俺の反応を窺うアザゼルは、徐々に距離を詰めて隣に腰掛ける。どこまで大丈夫か確かめるような所作に、心の底から申し訳ないと思った。あれは八つ当たりと同じだ。

「もう平気だ。全部夢で、帰れないって納得してるんだから」

 だから過去の記憶が混じった夢程度で動揺しない。もう大丈夫だ。自分に言い聞かせた俺の頬に、アザゼルが指を這わせた。

「泣いたのではないか?」

 上から下へなぞった動きが、涙が頬を滑る軌道らしい。

「泣いてない。濡れた跡がないだろ?」

「ああ。ハヤトを泣かせたくはない。鳴いてくれるのは歓迎だが」

 またそういう性的な話にすげ替える。文句を言いかけて、真剣な目をしたアザゼルの表情に言葉を飲み込んだ。軽い話に聞こえるよう、操作しているのか。気の使い方が面倒臭い奴だな。大仰な話し言葉もそうだけど、アザゼルはいつも役を演じてる印象があった。素の状態って、俺を押し倒した時くらいだろ。

「鳴かせるのも遠慮してくれよ」

「それは我慢が効かないな。約束できない」

 睦言のように甘い声で囁いて、俺の頬にキスをした。軽く触れて離れるだけなのに、頬が熱くなる。絶対に俺の顔、真っ赤だぞ。首や耳まで赤いかも知れない。

「……ううぅ! くそっ、絆されないからな」

「宣言するなら、すでに余に傾いている証拠だ。可愛がってやろう」

 押し倒されながら、仲直りだし譲歩してやると自分に言い訳する。アザゼルの肩に置いた手を首に回し、するりと絡めた。驚いたように目を見開いた後、アザゼルの唇が優しく額や目蓋に触れる。挨拶のような軽いキスに焦れて、俺が舌を差し出すまで……アザゼルは首や耳、頬、鼻の頭に至るまで音を立てたキスを続けた。

「もぅ、くれよ」

 焦れて吐き捨てた俺が睨んだ先で、アザゼルの口元が綻ぶ。薄い唇が弧を描いて、ようやく欲しい唇を掠めた。深く絡めずに逃げようとしたアザゼルの首を引き寄せ、ねっとりと舌を擦り合わせる。

「うっ、ふぅ、ぁ」

 途端に激しくなった口付けに意識も呼吸も乱されて、俺は甘く感じる唾液を飲み込む。ごくりと動いた喉の音が、やけに耳に響いた。焦れて擦り合わせる膝を割ったアザゼルの手が、俺の肌をなぞる。

「覚悟いたせ。誘ったのはそなただぞ? ハヤト」

 うるせぇ。早く寄越せっての!!
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