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12.話し合うほど異世界人過ぎる

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 俺が脱がされた服はいつの間にか回収され、着るものがない。裸で過ごせばいいと言われて蹴飛ばしたら、アザゼルの服が提供された。股下が余ってウエストは緩いのが腹立つ。そんなに俺はスタイル悪かったか?

 上着も寄越せと強請ったら、思いの外喜んで着せられた。次に脱いだら自分で着られる気がしない。裏のボタンや留め金が複雑に入り組んでいた。マントに似た柔らかな布を羽織り、人心地つく。やっぱり現代人としては、衣服なしで過ごすのはハードルが高い。

「ハヤトの服は作らせている。少しの間は余の服を纏うがよい」

 毎日着せてやろうと言われ、遠回しに毎日脱がすと仄めかされた。風呂があるから百歩譲ったとして、二度と抱かれる気はない。

「人間の送ってくる贄が、魔王退治の名目で騙されていたのは遺憾だ。改善を求めるより、叩き潰す方が早いな」

「あ、うん」

 否定しようがない。贄は自分で承諾して身を捧げていると思っていたらしい。魔族の生活は優雅で裕福だ。実際贄となった子達も、人間の城より快適なのですぐ順応した。種族の特性なのか、美形が多い魔族に愛を囁かれ大切に守られる。その生活は確かに理想的かもしれない。問題は俺とアザゼルが同性だったことだ。

 これが妖艶な美女に押し倒されて奪われたんなら、俺だって異論はない。強引に尻をヤラれたことが問題なのだ。

「わからぬ。余が女なら良いのか?」

「俺のいた世界では恋愛は男女が中心で、男同士は少ないんだよ」

「対象として考えたことがなかったのか。ならば問題ない。すぐに惚れさせてやろう」

 絶句するくらい、自信過剰だ。もちろん顔が良くてスタイルの良い、魔王様だからだが。

「本当に魔王なのか? 複数いたりしないか」

 もう一度確認しておく。

「当代の魔王は余のみ。今回の贄の気配を感じた時から、余の伴侶であると判明したため、誰も手出しはしなかった」

 そのくらいの力量差はあると言い切られた。魔族は強さで序列が決まる。そんな魔族の頂点に立つんだから、圧倒的に強いはずだ。俺がいくら足掻いても勝てるわけがなかった。

「今度勝手に抱いたら……自殺してやる」

「ふむ。もう手遅れだぞ」

 殺してやると言っても効果がないので、自殺すると脅した。俺に執着しているなら効果的なはず……手遅れ、とは? 疑問が顔に出たようだ。俺を抱き上げてベッドに運びながら、アザゼルは柔らかく笑った。その手が意味ありげに腹を撫でる。

「性交を終え、そなたのここに精を馴染ませた。あと数時間で、余とハヤトの命は同化する」

 あれか! 魔王と同じ寿命を分け合うという話だ。焦った。あと数時間、その間に自殺しないと死ねなくなる。抱かれたくないだけで、死にたいわけじゃない。俺の葛藤を見抜いたアザゼルは、黒いシーツの上へ降ろした俺を鎖で拘束した。

 じゃらりと重い音を立てる鎖を纏い、アザゼルを睨みつけた。

「その目がよい。屈服させたくなるではないか」

 歪んだ性癖を暴露された。動けない俺の胸や腰を撫でながら、アザゼルが微笑む。

「同化が終わるまで……快楽に耽るか、意識を沈めるか。どちらを選ぶ?」

 俺が希望する「解放して放置」は選択肢になかった。
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