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2.すごく適当に放り出された
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正直、魔王と戦ったり世界を救う気はない。弟に聞いた範囲で、魔王を倒した戦力が脅威とみなされ殺される勇者の話もあった。異世界から連れてきて戦わせて、そもそも人権がない。そんな状態で圧倒的武力を持ってたら、処刑される一択だ。
「帰る道は魔王が知っておる」
何が何でも魔王と戦わせる気か。ジト目になる俺だが、さすがは腐っても国王。目を逸らさない。自分達で戦うこともせず、赤の他人を無理やり拉致って戦わせるクズでも権力者だった。政治家と一緒で、平然と嘘を吐くタイプだな。
「戦う方法は?」
「勇者殿なら必ず勝てますぞ」
ん? 勇者用の武器とかないのか? 首を傾げる。何とかの剣とか、神の加護が宿った鎧とか。定番のアイテムもない? じゃあ、圧倒的チートを授かったか……ないな。神様とやらも見ないで落下したし。
うーんと考え込む間に、勝手に周囲が固められた。
「では頼んだぞ、勇者殿。戻られた暁には我が娘、そこのクラリス姫を妻として王位を継いでもらう」
あ、これは死亡フラグだ。確実に死んでこいという御達しだった。きっと魔王と戦って瀕死の重傷で勝利したら、護衛騎士に背後から刺されるやつ……。弟のお陰で蓄えた知識により、俺は絶望した。
倒しにいくフリして、途中で離脱して逃げるしかない。そう考えたのも無理はないだろう? ヤバいフラグが乱立した地雷原を歩くようなもんだ。
「勇者様のお支度を整えてください」
クラリス姫の一声で、俺は宝物庫ならぬ武器庫から普通の鎧と普通の剣を与えられた。鎧の着方なんて知らないので、騎士が着付けてくれるのを大人しく待つ。ついでに仕組みをよく確認した。西洋の鎧より、日本の甲冑が近い。関節部分を革紐で繋いでいるので、これを切断したら楽に脱げそうだ。
逃げる時に鎧は邪魔だった。走れないし、ガチャガチャ煩い。重いから脱いで逃げるのが正解だ。足の速さは……自信がない。クラスで後ろから数えるレベルだ。
着付ける騎士の手がやたら臀部を撫でたり、際どい位置を掠めるのは気のせいか? はあはあ荒い呼吸もやめてくれ。変質者みたいで怖い。
「馬と食料を用意しております。こちらへ」
やたら手際良く誘導され、馬の上に押し上げられた。ここでも別の騎士に太腿やら尻を撫で回される。上に押すだけなのに、丸く撫でるのはセクハラだろ。むっとした顔で睨んでも、何故か興奮した鼻息が聞こえただけだった。
「お気をつけて、ご武運をお祈りしております」
金髪少女クラリス姫の激励を背に受け、馬は歩き出した。え? 俺単独で行くの? 護衛もいないが、監視もいない。いいのか、これで。異世界人に重い期待を乗せてるみたいだが、俺は戦わないぞ。
首を傾げながら馬にしがみ付く。時代劇の俳優のようにカッコよく背筋を伸ばして乗りたいが、無理だった。経験はないし、高さは半端ない。鎧のせいで視界が半分近く塞がれた。ただただ怖い。馬は自分勝手に歩いていき、城の裏側にある草原で立ち止まった。
身震いした馬に振り落とされた俺は、ずり落ちる尻が地面と激突するのを覚悟した。きっと骨折するくらい痛いに違いない。体に力を入れて目を瞑り身構えたものの、落下の衝撃はなかった。
「ん?」
突然鎧の紐が切れて、全部落ちていく。がらんと乱暴な扱いに抗議する金属音が響き、俺は驚いて目を開いた。目の前にやたら美しい顔がひとつ。美形だが女には見えない。穏やかな笑みを浮かべた美形に、俺は抱き上げられていた。
「帰る道は魔王が知っておる」
何が何でも魔王と戦わせる気か。ジト目になる俺だが、さすがは腐っても国王。目を逸らさない。自分達で戦うこともせず、赤の他人を無理やり拉致って戦わせるクズでも権力者だった。政治家と一緒で、平然と嘘を吐くタイプだな。
「戦う方法は?」
「勇者殿なら必ず勝てますぞ」
ん? 勇者用の武器とかないのか? 首を傾げる。何とかの剣とか、神の加護が宿った鎧とか。定番のアイテムもない? じゃあ、圧倒的チートを授かったか……ないな。神様とやらも見ないで落下したし。
うーんと考え込む間に、勝手に周囲が固められた。
「では頼んだぞ、勇者殿。戻られた暁には我が娘、そこのクラリス姫を妻として王位を継いでもらう」
あ、これは死亡フラグだ。確実に死んでこいという御達しだった。きっと魔王と戦って瀕死の重傷で勝利したら、護衛騎士に背後から刺されるやつ……。弟のお陰で蓄えた知識により、俺は絶望した。
倒しにいくフリして、途中で離脱して逃げるしかない。そう考えたのも無理はないだろう? ヤバいフラグが乱立した地雷原を歩くようなもんだ。
「勇者様のお支度を整えてください」
クラリス姫の一声で、俺は宝物庫ならぬ武器庫から普通の鎧と普通の剣を与えられた。鎧の着方なんて知らないので、騎士が着付けてくれるのを大人しく待つ。ついでに仕組みをよく確認した。西洋の鎧より、日本の甲冑が近い。関節部分を革紐で繋いでいるので、これを切断したら楽に脱げそうだ。
逃げる時に鎧は邪魔だった。走れないし、ガチャガチャ煩い。重いから脱いで逃げるのが正解だ。足の速さは……自信がない。クラスで後ろから数えるレベルだ。
着付ける騎士の手がやたら臀部を撫でたり、際どい位置を掠めるのは気のせいか? はあはあ荒い呼吸もやめてくれ。変質者みたいで怖い。
「馬と食料を用意しております。こちらへ」
やたら手際良く誘導され、馬の上に押し上げられた。ここでも別の騎士に太腿やら尻を撫で回される。上に押すだけなのに、丸く撫でるのはセクハラだろ。むっとした顔で睨んでも、何故か興奮した鼻息が聞こえただけだった。
「お気をつけて、ご武運をお祈りしております」
金髪少女クラリス姫の激励を背に受け、馬は歩き出した。え? 俺単独で行くの? 護衛もいないが、監視もいない。いいのか、これで。異世界人に重い期待を乗せてるみたいだが、俺は戦わないぞ。
首を傾げながら馬にしがみ付く。時代劇の俳優のようにカッコよく背筋を伸ばして乗りたいが、無理だった。経験はないし、高さは半端ない。鎧のせいで視界が半分近く塞がれた。ただただ怖い。馬は自分勝手に歩いていき、城の裏側にある草原で立ち止まった。
身震いした馬に振り落とされた俺は、ずり落ちる尻が地面と激突するのを覚悟した。きっと骨折するくらい痛いに違いない。体に力を入れて目を瞑り身構えたものの、落下の衝撃はなかった。
「ん?」
突然鎧の紐が切れて、全部落ちていく。がらんと乱暴な扱いに抗議する金属音が響き、俺は驚いて目を開いた。目の前にやたら美しい顔がひとつ。美形だが女には見えない。穏やかな笑みを浮かべた美形に、俺は抱き上げられていた。
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