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1.帰る方法だけ教えてください ※微
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「やめ……っ、こんなの、おかし……ぃ!」
「諦めよ、そなたは我が贄だ」
あっという間に裸に剥かれ、豪華なベッドに押し倒される。寝具はなぜか黒一色、首輪をつけられ鎖で繋がれ、こんなのはおかしいと訴えても無視された。
「はな、せ……っ、うぅ……ふ、ぅん……ぁ」
拒絶を叫んだ唇を貪られ、甘い痺れに腰が揺れる。こんなの絶対にない。おかしい。必死で否定する俺はそのまま、黒衣の美しい異形に美味しく頂かれた。
――これは異世界でBにLされた俺の物語だ。
始まりは学校の帰り道、歌うような声が聞こえた。塾に通わずとも成績はトップクラス、進学校でのんびり帰宅部を満喫する俺は足を止める。周囲を見回すが、歌声の主は見当たらない。それどころか誰もいなかった。まだ日暮れ前の駅前交差点なのに、無人だった。こんな光景、CGでもなきゃあり得ない。
びっくりした俺の足元がぐらりと傾く。あれだ、底なし沼に落ちるように……ずぶずぶと足が飲み込まれ、膝まで埋もれて抜こうとしたら転んで尻餅付いた。これが決定打で、あっという間に両手と尻も沈んで叫んだ声ごと影の中に引きずり込まれる。
呼吸が出来なくなるかと思ったが、平気だった。すぽんと頭の先まで飲み込まれた直後、硬い地面に触れる。恐る恐る目を開くと、石造りの暗い部屋だった。
「ようこそ、異世界のお方」
「召喚に成功したぞ!」
喜ぶ人の声と手を差し伸べるお姫様らしきドレスの女性。中世ヨーロッパを思わせる内装の部屋を見回し、もしかして? と期待する。この状況は異世界転移というやつか。読み漁ったラノベ知識を披露する、弟の夕飯時の会話を思い浮かべた。
あれはトラックに轢かれるんだろう? 最近は電車だったり、社畜が倒れてそのまま……ってのも聞いた。だが、白昼の駅前交差点で生きたまま召喚はおかしい。専門用語に近い「召喚」や「異世界」の単語、「ご都合主義で言葉が通じる」のも奇妙だった。
全体におかしいが、ラノベのテンプレとやらに該当する。来てしまったなら仕方ない。最初に確認すべきは、帰還できるかどうかだ。
「あの……」
「国王陛下がお待ちです、こちらへどうぞ」
お姫様と思われる水色のドレスの金髪少女に促され、後ろをついていく。明らかに中世の世界観で、その中で現代の服を来た俺は異物だった。じろじろ見る人々も足元まで長いメイド服だったり、執事みたいな恰好だ。こんなの映画でしか見たことない。
高そうな絵画や壺が飾られた廊下を抜けて、大きな扉の前に立った。少女の合図で扉が開く。門番みたいな人が建物の中にいるとか、どこの王室映像だよ。ツッコミながら促されて入室した。金縁の刺繍がされた深緑の絨毯が真っすぐに敷かれている。突き当りの壇上に偉そうな毛皮付きマントのおっさんがいた。あれが国王か。
「召喚に成功いたしました。異世界のお方、ご挨拶を」
「え? 俺が?」
この場合、呼びつけたそっちが挨拶するべきだろ。なぜ呼ばれたかも聞いてないし、命懸けで戦えと言われるのも迷惑だぞ。眉を寄せた俺の姿に、玉座の上の国王は「よい」と大仰な手振りで許しを与えたらしい。それを発言するのは俺の方じゃん。
「長く待っておったが、ようやく条件が整う勇者殿が来られた。我らの世界を魔王から救って欲しい」
……定番中の定番だった。くそ、何で俺なんだ? 弟なら絶対に喜んで了承したが、俺は帰りたいだけだ。人生に何の不満もなく、順風満帆だった。だから真っ先に確認するのはこれだ。
「帰る方法だけ教えてください」
「諦めよ、そなたは我が贄だ」
あっという間に裸に剥かれ、豪華なベッドに押し倒される。寝具はなぜか黒一色、首輪をつけられ鎖で繋がれ、こんなのはおかしいと訴えても無視された。
「はな、せ……っ、うぅ……ふ、ぅん……ぁ」
拒絶を叫んだ唇を貪られ、甘い痺れに腰が揺れる。こんなの絶対にない。おかしい。必死で否定する俺はそのまま、黒衣の美しい異形に美味しく頂かれた。
――これは異世界でBにLされた俺の物語だ。
始まりは学校の帰り道、歌うような声が聞こえた。塾に通わずとも成績はトップクラス、進学校でのんびり帰宅部を満喫する俺は足を止める。周囲を見回すが、歌声の主は見当たらない。それどころか誰もいなかった。まだ日暮れ前の駅前交差点なのに、無人だった。こんな光景、CGでもなきゃあり得ない。
びっくりした俺の足元がぐらりと傾く。あれだ、底なし沼に落ちるように……ずぶずぶと足が飲み込まれ、膝まで埋もれて抜こうとしたら転んで尻餅付いた。これが決定打で、あっという間に両手と尻も沈んで叫んだ声ごと影の中に引きずり込まれる。
呼吸が出来なくなるかと思ったが、平気だった。すぽんと頭の先まで飲み込まれた直後、硬い地面に触れる。恐る恐る目を開くと、石造りの暗い部屋だった。
「ようこそ、異世界のお方」
「召喚に成功したぞ!」
喜ぶ人の声と手を差し伸べるお姫様らしきドレスの女性。中世ヨーロッパを思わせる内装の部屋を見回し、もしかして? と期待する。この状況は異世界転移というやつか。読み漁ったラノベ知識を披露する、弟の夕飯時の会話を思い浮かべた。
あれはトラックに轢かれるんだろう? 最近は電車だったり、社畜が倒れてそのまま……ってのも聞いた。だが、白昼の駅前交差点で生きたまま召喚はおかしい。専門用語に近い「召喚」や「異世界」の単語、「ご都合主義で言葉が通じる」のも奇妙だった。
全体におかしいが、ラノベのテンプレとやらに該当する。来てしまったなら仕方ない。最初に確認すべきは、帰還できるかどうかだ。
「あの……」
「国王陛下がお待ちです、こちらへどうぞ」
お姫様と思われる水色のドレスの金髪少女に促され、後ろをついていく。明らかに中世の世界観で、その中で現代の服を来た俺は異物だった。じろじろ見る人々も足元まで長いメイド服だったり、執事みたいな恰好だ。こんなの映画でしか見たことない。
高そうな絵画や壺が飾られた廊下を抜けて、大きな扉の前に立った。少女の合図で扉が開く。門番みたいな人が建物の中にいるとか、どこの王室映像だよ。ツッコミながら促されて入室した。金縁の刺繍がされた深緑の絨毯が真っすぐに敷かれている。突き当りの壇上に偉そうな毛皮付きマントのおっさんがいた。あれが国王か。
「召喚に成功いたしました。異世界のお方、ご挨拶を」
「え? 俺が?」
この場合、呼びつけたそっちが挨拶するべきだろ。なぜ呼ばれたかも聞いてないし、命懸けで戦えと言われるのも迷惑だぞ。眉を寄せた俺の姿に、玉座の上の国王は「よい」と大仰な手振りで許しを与えたらしい。それを発言するのは俺の方じゃん。
「長く待っておったが、ようやく条件が整う勇者殿が来られた。我らの世界を魔王から救って欲しい」
……定番中の定番だった。くそ、何で俺なんだ? 弟なら絶対に喜んで了承したが、俺は帰りたいだけだ。人生に何の不満もなく、順風満帆だった。だから真っ先に確認するのはこれだ。
「帰る方法だけ教えてください」
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