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本編

102.光輝くほど闇は深くなった

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 前回は王家派に属した貴族の中に、慈善事業などを行なう一族が現れた。私財を上手に活用し、知恵を絞って孤児の救済や恵まれない人々への炊き出しに精を出した。その功績が認められ、前回の罪を清算する。

 中立派はほぼ壊滅だった。公爵家が次々と形を変える中、残された侯爵家や伯爵家も己の領地をフォンテーヌに差し出す。世界が大きく動き王家が滅亡した今、貴族の称号は価値を落とした。己の領民を思って閉じこもった前回を恥じた彼らは、自然とフォンテーヌに寄り添う道を選ぶ。

 すでに取り込まれた宰相派は、フォンテーヌの手足となって働いていた。文官が多く、政に明るい彼らは重宝される。派閥のトップに立つアルベール侯爵ジョゼフの存在も大きかった。新たな国が民を守り、平和を維持するのなら、どの派閥でも仕事をする。その覚悟を持った文官達は、新しい環境に馴染むと仕事のペースを上げていく。

 豊かな領地であっても、どこかに欠陥は存在する。その穴を埋め、新たな国主の行う政を民の為に動かす潤滑油となるべく、身を粉にして働いた。大した混乱もなく、周辺の貴族領を統合できたのは、文官の功績も大きい。

 同様にフォンテーヌ公国の建国に貢献したのは、武官達だった。オードラン辺境伯を始めとする優秀な騎士と兵士は、バシュレ子爵などの有能な指揮官を得て活躍する。大きくなっていく国の屋台骨を支え、食い荒らそうとする害虫を駆除した。治安が安定すれば民が増える。穏やかで平和な生活を夢見て流れ込む難民を、文官が適切に振り分け、武官が統制した。

 国づくりの基礎があったとはいえ、フォンテーヌ公国が国としての体面を保てたのは、彼らのお陰だった。

 だが、光差すフォンテーヌ公爵家が輝くほど、足下の影は濃くなる。不穏な動きの兆しはあれど、まだ全体像は見えなかった。後手に回ったことを悔やむのは、いつだって事件が起きてからなのだ。







「お待ちください、お嬢様!」

 騎士を振り切る勢いで駆ける愛馬リディの背で、金髪を揺らす少女は笑う。相性が良かったのか、大きなケガもなく乗馬を覚えた。お転婆の素質があったのか、コンスタンティナは自由に草原を駆け回る。

「おっと、もうお昼の支度ができましたよ」

 愛馬で追いついたカールに手綱を奪われ、少女は頬を膨らませた。

「ひどいわ、カール。もっと走りたかったのに」

「騎士が馬から降りている状態で勝手に走り回ったと知られたら、父上殿に叱られるでしょう?」

 つい先日も叱られたことを揶揄られ、ぷくりと頬を膨らませた。だが反論できない。

「ごめんなさい、戻るわ」

「そうしてください、私のレディ」

 今日はカール、昨日はリッド。明日は兄シルヴェストルが同行する。だから安心して羽目を外せた。それがとんでもない事件を招き寄せるとも知らずに。
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