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85.可愛い部屋を用意しましょう
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ミカは迎えに来たアビーと手を繋ぐ。嬉しそうに微笑み、こちらを見て手を振った。振り返す私とラエルに、思わぬ爆弾を落として。
『新婚になるから遠慮してあげるのよ! だから時々来るだけにするわね』
機嫌よく去っていく彼女を見送り、ラエルがぼそっと呟いた。
『ミカの時々は当てにならないと思う』
「そうなの?」
『あの性格だ。来るときは一日置きくらいで、遠慮した気になるはずだよ』
あまり長く一緒にいなかったみたいだけど、通じ合ってる感じが兄妹っぽいわね。一日置きでもいいじゃない。屋敷は広いんだし、部屋を用意しておかなくちゃね。そう笑ったら、顔を引き攣らせて溜め息を吐いた。
『君がいいならいいけど……僕は手加減しないよ?』
何の手加減か分からぬまま、曖昧に微笑み返す。聞いてはいけない気がしたの。ミカのために日当たりのいい部屋を選んで、可愛い家具を揃えましょう。そうね、あの子ならピンクの天蓋付きベッドも似合うし、ドレスも用意してあげなくちゃ。
結婚式用にドレスや靴が必要だから、後で採寸のために侍女を向かわせておきましょう。あれこれ手配の手順を確認する私の隣で、ラエルも何か考えていた。
『君の父君や母君に相談があるから、少し離れるけど』
「わかったわ。私はミカの部屋を作るから」
明るく別れ、侍女達とあれこれ相談を始める。ミカはラエルの妹として屋敷に来たので、侍女も執事もミカが聖樹だと知っていた。隣大陸で焼かれこちらへ助けを求めたと曖昧に説明したこともあり、同情が集まっている。
「ミカ様なら、こちらはいかがでしょう。きっとお似合いですわ」
「あら本当! すごく可愛いわ。昨日選んだネグリジェの好みからして、レースやフリルは好きだと思うの」
女性同士なので、遠慮なく下着まで選んでクローゼットの棚に収めていく。侍女の中に裁縫が得意な子がいるので、飾りに使うレースから選んでワンピースや寝着を作る。飾り付けも工夫して、夢中になったせいで窓の外が暗いことに気づかなかった。
「あら、お嬢様。大変ですわ! もう夕食のお時間になります」
「やだっ! 私、今日の仕事終わってないわ」
慌てる侍女達に、今日はゆっくりしていいと伝えた。この屋敷は私とラエルが住む予定なので、女主人は私だ。だからお母様がいなくても許可が出せるのよ。こういうとき、すごく便利。明日はミカの準備を中断して、普通の仕事をこなす。明後日は朝から再開することを決めた。
『ここにいたの? 今日は家族皆で本宮で食べるそうだよ』
ラエルは順調に話が終わったのか。明るい表情で私を迎えにきた。本宮までは馬車に乗る距離ではない。だけど歩くと遠い。微妙な距離なので、これから支度をすると間に合わないと焦る私に、ラエルは笑った。
『平気さ、僕が連れていくからね』
言いながらパチンと指を鳴らして見せる。そうだったわ。聖樹様って魔法みたいな力が使えるのよね。一瞬で転移できる彼に移動を頼むことにして、私は慌てて晩餐用のドレスに袖を通した。
家族との食事だから、コルセットはなしで。あんな苦しいもの、外交の時だけで十分よ。髪をハーフアップにして左に流し、髪留めで押さえる。お飾りや化粧も最低限にして、廊下で待つラエルの手を取った。
『新婚になるから遠慮してあげるのよ! だから時々来るだけにするわね』
機嫌よく去っていく彼女を見送り、ラエルがぼそっと呟いた。
『ミカの時々は当てにならないと思う』
「そうなの?」
『あの性格だ。来るときは一日置きくらいで、遠慮した気になるはずだよ』
あまり長く一緒にいなかったみたいだけど、通じ合ってる感じが兄妹っぽいわね。一日置きでもいいじゃない。屋敷は広いんだし、部屋を用意しておかなくちゃね。そう笑ったら、顔を引き攣らせて溜め息を吐いた。
『君がいいならいいけど……僕は手加減しないよ?』
何の手加減か分からぬまま、曖昧に微笑み返す。聞いてはいけない気がしたの。ミカのために日当たりのいい部屋を選んで、可愛い家具を揃えましょう。そうね、あの子ならピンクの天蓋付きベッドも似合うし、ドレスも用意してあげなくちゃ。
結婚式用にドレスや靴が必要だから、後で採寸のために侍女を向かわせておきましょう。あれこれ手配の手順を確認する私の隣で、ラエルも何か考えていた。
『君の父君や母君に相談があるから、少し離れるけど』
「わかったわ。私はミカの部屋を作るから」
明るく別れ、侍女達とあれこれ相談を始める。ミカはラエルの妹として屋敷に来たので、侍女も執事もミカが聖樹だと知っていた。隣大陸で焼かれこちらへ助けを求めたと曖昧に説明したこともあり、同情が集まっている。
「ミカ様なら、こちらはいかがでしょう。きっとお似合いですわ」
「あら本当! すごく可愛いわ。昨日選んだネグリジェの好みからして、レースやフリルは好きだと思うの」
女性同士なので、遠慮なく下着まで選んでクローゼットの棚に収めていく。侍女の中に裁縫が得意な子がいるので、飾りに使うレースから選んでワンピースや寝着を作る。飾り付けも工夫して、夢中になったせいで窓の外が暗いことに気づかなかった。
「あら、お嬢様。大変ですわ! もう夕食のお時間になります」
「やだっ! 私、今日の仕事終わってないわ」
慌てる侍女達に、今日はゆっくりしていいと伝えた。この屋敷は私とラエルが住む予定なので、女主人は私だ。だからお母様がいなくても許可が出せるのよ。こういうとき、すごく便利。明日はミカの準備を中断して、普通の仕事をこなす。明後日は朝から再開することを決めた。
『ここにいたの? 今日は家族皆で本宮で食べるそうだよ』
ラエルは順調に話が終わったのか。明るい表情で私を迎えにきた。本宮までは馬車に乗る距離ではない。だけど歩くと遠い。微妙な距離なので、これから支度をすると間に合わないと焦る私に、ラエルは笑った。
『平気さ、僕が連れていくからね』
言いながらパチンと指を鳴らして見せる。そうだったわ。聖樹様って魔法みたいな力が使えるのよね。一瞬で転移できる彼に移動を頼むことにして、私は慌てて晩餐用のドレスに袖を通した。
家族との食事だから、コルセットはなしで。あんな苦しいもの、外交の時だけで十分よ。髪をハーフアップにして左に流し、髪留めで押さえる。お飾りや化粧も最低限にして、廊下で待つラエルの手を取った。
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