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外伝

外伝2−6.やはり理解していませんね

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 意外なほどあっさり、検査は終わった。アランとエルが作った膜を潜るだけ。胎児の様子は隣にある水鏡に映し出される仕組みだった。レントゲンに似てるわね。

 ぎくっとしたエルの様子から、私が思い浮かべた物をパクったみたい。別にいいわよ。聖獣じゃないと再現できないと思うから。誰でも使える新しい魔法を伝授したなら、世界のバランスとか考えちゃうけどね。この程度は大丈夫でしょ。

「サラ、もっと慎重に考えてください」

 真剣な顔のアランに言われて、小首を傾げる。二人が行う検査だから安心して任せたのに、変なことを言うのね。

「やはり理解していませんね。私達が来なければ、お腹を開いて見せる気だったでしょう? 神が関わっている以上、死ぬ心配はしませんが、障りが出ないとは限りませんよ」

 いつでも我々が助けられるとは限らない。相手が神なら、結界を突破できなかったり、居場所を特定できず手遅れになる可能性があるのだ。そう叱るアランの気持ちに思い至った。

「ごめんなさい」

 お腹の子は今は私と一体だけど、もう別の人格を持つ一人と数えないといけないわ。この子の命を危険に晒す可能性があるなら、慎重に動かなきゃ。危険な目に遭えば、アランが傷つく。私がいけなかったの。しょんぼりと肩を落としたところで、水鏡を覗いていた神様は溜め息を吐いた。

「やっぱり違う」

「サラがそう言ったでしょう?」

「うん」

 がっかりした様子の神様だけど、今回の技術で赤ちゃんの確認ができるようになって、ほっとしたみたい。大公国に落ちたのは間違いないので、赤子の健康診断という名目で妊婦さんに参加を呼びかけた。

 産む前に赤ちゃんの顔が見られると聞いて、多くの妊婦さんが足を運ぶ。健康状態もついでに確認して、今後の支援にも繋げるらしいわ。転んでもタダで起きないところ、さすが国を治める聖獣よね。

「女神様には一言申しておきたい」

 むっとした顔のエルは、自分達に内緒にして、他世界の神に自由行動させたことを怒っていた。せめて連絡はあって然るべきだ。そうしたら対応できたのに。

 妊婦切り裂き魔ならぬ切り裂きジャックの話を聞いた時、どれだけ憤ったか。文句を言いながら仕事に戻っていった。確かに、あの女神様は言葉が足りないこと多いわ。ほうれんそう、を教えておこうかしら。報告、連絡、掃除? 違うわね、最後は何だったっけ。

「サラちゃん、大変だったわね」

 帝国の皇后陛下が駆けつけた。というのも、何かの行事があって離れられなかったの。アゼスはまだ仕事が残ってるけど、先にリディだけ顔を見せてくれた。

「来てくれてありがとう、リディ」

「いいのよ。こちらが他所の世界の神様ね? サラちゃんのお腹を開けてたら、ぱくりと頭から食べるところだったわ」

 真っ赤に染めた爪で指差し、ぷんぷんと怒ったリディは華やかなドレス姿で、少年に詰め寄る。ぽっと頬を染めた少年に、途中で態度が和らいだ。やっぱり自分を褒める人には甘くなるわよね。

 まだ神様の片割れは見つからないけど、早く見つかるといいな。
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