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46.天罰は聖獣によって容赦なく
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備蓄を総動員したところで、せいぜい1ヵ月もつかどうか。彼らの食物自給率は、15%前後だった。すべて傷みやすい葉物ばかりだ。国は小さいのに、無駄に広い道を整備した王都を立派に見せようとした。周囲を山に取り囲まれた地形なのに、だ。その所為で貴重な平地が畑ではなく、道や広場になった。
ケイトウ国の自給率が低いのは、当然の失策だった。見栄えばかり気にした都には、立派な石造りの門や塀で守られている。他国から来る使者や商人に立派な都を自慢したいだけの、無駄遣い。散財した結果はすぐに現れた。
国民の生活は困窮していく。それでも見栄を張りたいケイトウ国王は暴挙を為した。異世界からの聖女召喚である。結果は欲しいが、貢ぎ物は勿体ない。そんな彼らが行った召喚は不十分だった。対価となる魔力が不足し、呼び寄せられたサラが中途半端な状態に置かれた。
すっぽりと入った穴の出口が、手首も通れない細さしかなかった……こう想像すれば分かるだろう。無謀に過ぎた。指先がかろうじて抜けたところで、詰まってしまう。このまま放置すれば、サラは消滅してしまう。暮らしていた世界で、彼女はすでに居場所がなかった。
召喚され応答した形になれば、過去に戻ることは出来ない。不可逆性の強い一方通行の道なら、出口を広げるだけ。無理やり引っ張り出すにあたり、どうしても通過できない部分を諦めた。代わりに不足した部分を女神が補う。己の創造物が行った不手際のツケを払うために。
――だからこそ、天罰は聖獣によって容赦なく与えられる。
主人との楽しい朝食を終え、エルとアランは貿易中立都市バーベナに戻った。仕事と言うのは嘘ではない。ただ詳しく話せないのも事実だった。
「荷物の回収は昼間のうちに。日が暮れたら動く、それでいい?」
「構いません、バラバラにしてもいいと女神の許可も出ていますし」
にやりとアランが悪い笑みを浮かべる。悪役そのものだ。しかし対するエルも大差なかった。
「すぐバラさないでね。苦しめて痛めつけて、生きてることを後悔させてやるんだから」
生まれたことも後悔してもらうが、その部分は女神の領域だ。神にとっても長い時間、苦しみを味わい続けるだろう。それでも生きている間は、聖獣の領域だった。一寸刻みか、摺り下ろすのも悪くない。エルの思考も大概ヤバイ方向に振り切っていた。
「馬鹿だね、せめてサラを大切に扱えばよかったのに」
「ですが、彼らが放り出したお陰で私達の主人になってくれたのですから、逆に感謝すべき話では? もちろん、お礼の方法はいろいろありますが」
お礼参り……? サラが聞いていたらそう呟いただろう。彼らの黒い企みは彼女に届くことはなく、おそらく知られることはない。それでよかった。聖獣達は礼を言われるために報復するのではない。
「取り返した荷物を渡す理由を考えましょう」
明るい話題に変更するアランに、エルも乗っかった。
「拾ったとかじゃなくて、返してもらったは?」
「嘘くさくありませんか?」
「じゃあ、何かと引き換えにしたってのはどうだろう」
わくわくしながら、午前中を今後の相談に当てた二人。午後の実行を残すのみだった。
ケイトウ国の自給率が低いのは、当然の失策だった。見栄えばかり気にした都には、立派な石造りの門や塀で守られている。他国から来る使者や商人に立派な都を自慢したいだけの、無駄遣い。散財した結果はすぐに現れた。
国民の生活は困窮していく。それでも見栄を張りたいケイトウ国王は暴挙を為した。異世界からの聖女召喚である。結果は欲しいが、貢ぎ物は勿体ない。そんな彼らが行った召喚は不十分だった。対価となる魔力が不足し、呼び寄せられたサラが中途半端な状態に置かれた。
すっぽりと入った穴の出口が、手首も通れない細さしかなかった……こう想像すれば分かるだろう。無謀に過ぎた。指先がかろうじて抜けたところで、詰まってしまう。このまま放置すれば、サラは消滅してしまう。暮らしていた世界で、彼女はすでに居場所がなかった。
召喚され応答した形になれば、過去に戻ることは出来ない。不可逆性の強い一方通行の道なら、出口を広げるだけ。無理やり引っ張り出すにあたり、どうしても通過できない部分を諦めた。代わりに不足した部分を女神が補う。己の創造物が行った不手際のツケを払うために。
――だからこそ、天罰は聖獣によって容赦なく与えられる。
主人との楽しい朝食を終え、エルとアランは貿易中立都市バーベナに戻った。仕事と言うのは嘘ではない。ただ詳しく話せないのも事実だった。
「荷物の回収は昼間のうちに。日が暮れたら動く、それでいい?」
「構いません、バラバラにしてもいいと女神の許可も出ていますし」
にやりとアランが悪い笑みを浮かべる。悪役そのものだ。しかし対するエルも大差なかった。
「すぐバラさないでね。苦しめて痛めつけて、生きてることを後悔させてやるんだから」
生まれたことも後悔してもらうが、その部分は女神の領域だ。神にとっても長い時間、苦しみを味わい続けるだろう。それでも生きている間は、聖獣の領域だった。一寸刻みか、摺り下ろすのも悪くない。エルの思考も大概ヤバイ方向に振り切っていた。
「馬鹿だね、せめてサラを大切に扱えばよかったのに」
「ですが、彼らが放り出したお陰で私達の主人になってくれたのですから、逆に感謝すべき話では? もちろん、お礼の方法はいろいろありますが」
お礼参り……? サラが聞いていたらそう呟いただろう。彼らの黒い企みは彼女に届くことはなく、おそらく知られることはない。それでよかった。聖獣達は礼を言われるために報復するのではない。
「取り返した荷物を渡す理由を考えましょう」
明るい話題に変更するアランに、エルも乗っかった。
「拾ったとかじゃなくて、返してもらったは?」
「嘘くさくありませんか?」
「じゃあ、何かと引き換えにしたってのはどうだろう」
わくわくしながら、午前中を今後の相談に当てた二人。午後の実行を残すのみだった。
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