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39.聖獣の加護って何? 聞くは一時の恥

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 貴族からの贈り物は、急遽用意したとは思えない量だった。最初は頭を下げられたり物を貰うたびに会釈したんだけど、アゼスに止められた。皇族は頭を下げないんだとか。偉そうな種族だと心の中で呟いたら、全員が一斉に笑った。

「サラの独特な考え方は楽しいな」

「素敵な主人に出会えて幸せよ」

「そうだな、ついでに加護も山盛りにしておこう」

 エルやリディの言葉は分かるけど、最後のアゼスは何か違う。彼は何か力を込める仕草をした後、私の上に光る粉を振り撒いた。両手で私を包むように辿ると、キラキラ光る。光の色は緑色だった。凄く綺麗だけど、それを見た3人も騒ぎ始める。

「次は私よ」

 同じ仕草をしたリディは、オレンジ色の光。赤に近いけどもっと金色っぽい感じだった。彼女の説明だと、属性で色が違うのだとか。魔力というか、魔法の属性が色で分かったら戦闘で不利じゃない? 色がなければ何の攻撃されるか分からないけど、色がついてたらバレちゃう。

「うふふ、面白い考えだわ。私達聖獣の魔力に勝てるのは、主人であるサラちゃんだけなの。だから色がついてても関係ないのよ。見えてて分かってても防げないから」

 えげつない火力攻撃というわけ? あ、リディは炎だからそのまま火力だった。

「僕も僕も!」

 エルの場合は美しい青色だった。ひんやりした感じもある。

「ねえ、どうして空を飛ぶアゼスが風じゃないの?」

 鳥が風属性なら理解しやすいけど、黒豹が風属性だよね。狐は狐火があるからまだイメージできる。熊は水より大地のが似合いそう。水だと泳げる動物がいいんじゃないかな。首を傾げる私に、聖獣達も一斉に首を傾げた。

「なるほど、サラの世界は変わった概念があるのか」

「この世界で熊って言ったら水だよ」

 アゼスやエルに不思議そうな顔をされる。

「分かった、丸暗記する」

 よくわかんないけど、この世界の常識は丸暗記で対応だ。考えたら負けだし、前の世界と同じならラッキーくらいの感覚じゃないと疲れる。毎回尋ねるのもいいけど「子どものどうして」は返事を考えるのも大変だからね。

「聞いてくれて構いません。もう少し心での会話が上達すれば、私達の考えや知識も共有できるでしょう」

 ふと気づくと、こんな会話の最中も挨拶が続いていた。日本なら大変な失礼だが、彼らは気にした様子がない。聞いてなくても「挨拶したよ」という形があればいいみたい。

「ふふっ、贈り物に送り主のカードが入っているから、後で読んでもらえばいいと考えるの。だって口で説明されても、全員覚えるのは難しいじゃない? 他国の王族なんて最初から挨拶を省く国もあるくらいよ」

 おうふっ、それは……私を召喚した国がそれっぽいな。途端に、アランとエルがびくりと肩を震わせた。何か隠してる? じっと見つめると、笑顔のアランが私に加護をくれた。アランの色は白。乳白色じゃなくて、銀色っぽい白だ。雪が光る感じに近い。

「みんな、ありがとう」

 何かを貰ったらお礼を言う。貴族達に向かってお礼を口にして微笑んだ。わっと会場中が喜びに湧く。善良な人が多いのかな。宮廷はドロドロした怨念と嫉妬や羨望が渦巻く伏魔殿かと思ってた。

「アゼス、リディ、エル、アラン。加護をありがとう……で、加護って何?」

 そのまま受け止めるには、最低限の知識が必要みたい。何もわからないと、結局聞くしかなくて。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だもんね!
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