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27.初めての響きは難しいです
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巨大鳥は、鷲に似ている。でも象より大きい鳥って初めて見た。恐竜の翼竜サイズ? 絵本でしか知らないけど。
パパを自称する皇帝陛下が、混乱中の私を嘴で摘んで背中に乗せた。すごい高い! より、大事なこと!! めちゃくちゃ柔らかい。この羽毛最高!! 羽毛布団作ったら気持ちいだろうな。
「毛を毟るのは勘弁だが、いつでも乗せるぞ」
「うん、毟らない」
気を付けるね。鳥にとっての羽毛は、きっと禿げかけた人の毛髪くらい大切だと思う。そういえば、私を捨てた髪のないおじさん、私の髪が抜けろの呪いが届いたかな。
「ぷっ」
「ダメ、我慢できないっ、あははは」
聖獣達が悶えるように笑い始めた。我慢しているけど、皇帝陛下も小刻みに震えてる。
「大声で笑っていいよ」
許可を出した途端、全員が笑い転げる。リディは涙を拭きながら草の上に転がり、アランは顔を背けて隠れる始末。そんなに面白いこと考えたかな?
「皇帝陛下ではなく、アムルゼスだ」
「あるむぜす?」
笑い止んだアランの説明によると、皇帝陛下のお名前だけど鳥の名前でもある。よくわからないけど、同じ種類の鳥は他にいないみたい。この世界で空を飛べる生き物の中で、一番大きいとか。羽を広げたら、お屋敷の奥行き程度はあるみたい。ということは、25メートルの学校プールぐらいか。
「大きいね、あるむ……」
名前が覚えられない。普段発音したことない名前だし、いっそフェニックスなら良かったのに。異世界といえば鳳凰じゃないの? あ、あれは中国の風水か。いろいろ変な知識が混じってるのは、ゲームで鳳凰が出てくるからだね。
自分で納得して、柔らかすぎる羽毛に顔を埋める。ああ、気持ちいい。皇帝陛下、じゃなかった……えっと、アムルス??
「アムルゼスだ」
憮然とした口調で繰り返され、何度も心の中で呼んでみる。他人の名前を間違えるのは失礼だからね。ちゃんと覚えなくちゃ!
「アゼスと呼べ。許す」
「ありがと、アゼス。ちゃんと覚えるからごめんね」
しょんぼりした声になる。姿が子どもになってから、脳みそが縮んだんじゃないかな。心配になるほど頭が動いてない。
「仕方ないわよ、サラちゃんは向こうの世界にほとんど置いてきちゃったんだから」
慰めるようにリディが頭を撫でた。というか、いつの間にアゼスの背中に乗ったの? 人の姿で優しく抱き締められ、私はこの世の天国を見た。お顔は豊満なお胸様、手足は羽毛に包まれている。何この幸せ、これが異世界に呼ばれたご褒美かも。
「あらあら、エルとアランが拗ねるわよ」
もちろん二人も好きだよ。鷲に似てるけど、とにかく大きな皇帝陛下は自力でここまで飛んできたらしい。
「皇帝陛下って、偉い人でしょ? 護衛なしでいいの?」
「我以上の強者はおらぬ」
ばさっと羽を広げて得意げに言われると、それもそうかなと納得しちゃう。だって広かったお庭が急に狭く見えるんだもん。この大きさなら異世界特有のドラゴンが出ても勝てるよね。
「サラはドラゴンを知っておるのか」
ほう、物知りなことよ。そう返したアゼスに私は目を見開いた。え? ドラゴンもいるの!? 見たい!
パパを自称する皇帝陛下が、混乱中の私を嘴で摘んで背中に乗せた。すごい高い! より、大事なこと!! めちゃくちゃ柔らかい。この羽毛最高!! 羽毛布団作ったら気持ちいだろうな。
「毛を毟るのは勘弁だが、いつでも乗せるぞ」
「うん、毟らない」
気を付けるね。鳥にとっての羽毛は、きっと禿げかけた人の毛髪くらい大切だと思う。そういえば、私を捨てた髪のないおじさん、私の髪が抜けろの呪いが届いたかな。
「ぷっ」
「ダメ、我慢できないっ、あははは」
聖獣達が悶えるように笑い始めた。我慢しているけど、皇帝陛下も小刻みに震えてる。
「大声で笑っていいよ」
許可を出した途端、全員が笑い転げる。リディは涙を拭きながら草の上に転がり、アランは顔を背けて隠れる始末。そんなに面白いこと考えたかな?
「皇帝陛下ではなく、アムルゼスだ」
「あるむぜす?」
笑い止んだアランの説明によると、皇帝陛下のお名前だけど鳥の名前でもある。よくわからないけど、同じ種類の鳥は他にいないみたい。この世界で空を飛べる生き物の中で、一番大きいとか。羽を広げたら、お屋敷の奥行き程度はあるみたい。ということは、25メートルの学校プールぐらいか。
「大きいね、あるむ……」
名前が覚えられない。普段発音したことない名前だし、いっそフェニックスなら良かったのに。異世界といえば鳳凰じゃないの? あ、あれは中国の風水か。いろいろ変な知識が混じってるのは、ゲームで鳳凰が出てくるからだね。
自分で納得して、柔らかすぎる羽毛に顔を埋める。ああ、気持ちいい。皇帝陛下、じゃなかった……えっと、アムルス??
「アムルゼスだ」
憮然とした口調で繰り返され、何度も心の中で呼んでみる。他人の名前を間違えるのは失礼だからね。ちゃんと覚えなくちゃ!
「アゼスと呼べ。許す」
「ありがと、アゼス。ちゃんと覚えるからごめんね」
しょんぼりした声になる。姿が子どもになってから、脳みそが縮んだんじゃないかな。心配になるほど頭が動いてない。
「仕方ないわよ、サラちゃんは向こうの世界にほとんど置いてきちゃったんだから」
慰めるようにリディが頭を撫でた。というか、いつの間にアゼスの背中に乗ったの? 人の姿で優しく抱き締められ、私はこの世の天国を見た。お顔は豊満なお胸様、手足は羽毛に包まれている。何この幸せ、これが異世界に呼ばれたご褒美かも。
「あらあら、エルとアランが拗ねるわよ」
もちろん二人も好きだよ。鷲に似てるけど、とにかく大きな皇帝陛下は自力でここまで飛んできたらしい。
「皇帝陛下って、偉い人でしょ? 護衛なしでいいの?」
「我以上の強者はおらぬ」
ばさっと羽を広げて得意げに言われると、それもそうかなと納得しちゃう。だって広かったお庭が急に狭く見えるんだもん。この大きさなら異世界特有のドラゴンが出ても勝てるよね。
「サラはドラゴンを知っておるのか」
ほう、物知りなことよ。そう返したアゼスに私は目を見開いた。え? ドラゴンもいるの!? 見たい!
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