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4.盗賊がでちゃった? 今の世の中で?!
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ごとごと揺れる馬車が突然、停車した。それも食事の時と違って、乱暴な感じで揺れる。びっくりした。慌てて窓から顔を出そうとしたら、奥様に止められる。
「ダメよ、盗賊がでちゃったから」
「盗賊? 今の世の中で?!」
そんなの、歴史やファンタジーの小説くらいでしか知らない。驚いた私を抱き寄せた奥様は、膝に乗せて微笑んだ。全然心配している様子はない。だから私の緊張もすぐに解れてしまった。
はふっ、動かずにいると眠くなる。幼子だからなのか、とにかく眠かった。触れている奥様が温かい。抱き着いてお胸に頬を当てる。気持ちいいな。
「金を寄越せっ! 早くしろ、中も開けて見せろ」
怒声が響いて、びくりと肩を揺らす。アランさんがノックして「どうしますか、奥様」と尋ねた。女性が中にいるって教えちゃダメじゃない。奥様が襲われたらどうするのよ!
「構わないわ、開けておあげなさい」
「えええ?!」
思わず怪訝そうな声が漏れた。アランさんを突き飛ばしたのか、乱暴に扉を開けた男はにやりと笑う。いやらしい視線がじろじろと奥様を眺めた。自分が対象じゃなくても気持ち悪い。
「へぇ、いい女じゃねえか。来い」
奥様の腕を掴んで無理やり外へ出す。見るとアランさんは剣を突きつけられていた。ケガはないみたいだけど、この状態じゃ逆らえないか。アランさんはちらりと奥様を見て、私へ視線を移した。
「ガキはいらねえ、捨てろ」
「嫌よ」
奥様は平然と答える。この人、もしかして大金持ちのお嬢様育ちなんだろうか。世間的な感覚がおかしいよね。旦那さん以外の前で裸見せるし、盗賊相手に強気だし。
アランさんを牽制するのは3人、目の前でニヤつく体の大きいのが1人、馬車を囲んだのは……10人前後かな。ちょっと勝ち目がない。それより盗賊が出る道なら、護衛や警備の人を雇うべきなのに。
「逆らうと優しくしてやれねえな」
「従っても同じでしょ」
そりゃそうだとゲラゲラ笑う男達は、自分達の勝利を確信していた。この場で殺されるのは、私とアランさんだよね。奥様は連れて行かれて酷いことをされるか、身代金要求の人質にされる。下手すると両方かも。
優しくしてくれた奥様だから、逃げて欲しい。でも……足元のヒールは高くて、とても草原を走る奥様が逃げ切れるとは思えなかった。どうしよう、こういう場面で颯爽と助けに来る人もいないの?
混乱する私は声も出なかった。奇声でも発して、助けを呼ぼうにも喉が動かない。震えるだけの私の背を撫でながら、奥様は溜め息を吐いた。
「アラン、食べちゃっていいわ」
「いいんですか?」
すごく嬉しそうに声を上げたアランさんが、剣を突きつける男の腕を……。なんて表現したらいいんだろう。食べた、が一番近いかな? ちゃんとこの目で見たのに、何が起きたのか理解できない。
「ぐわぁあああ」
「化け物だ!」
アランさんがぶわっと大きくなり、虎みたいな生き物に化けた。服がびりびりと破け、真っ黒な体は大きな猫みたい。しなやかな動きで、剣を避けて腕を噛んだ。肩まで一口で飲み込む。黒い猫は馬車より大きかった。血が噴き出す男を放置して、次の男を猫パンチ。爪で切り裂いて、また別の男に飛びかかる。
左右に跳躍するアランさんの攻撃だけ、盗賊に当たった。剣は歯が立たず、弓矢も効果なし。弓を射る人を初めて見た。外国の盗賊ってレトロな武器を使うんだ。圧倒的にアランさん優位で、私の緊張感は家出したらしい。
「このやろう! 化け物の主か」
ニヤついてた男は盗賊の頭のようで、鉈に似た武器を振り上げる。アランさんは離れた場所で戦っていて、私は奥様を庇うように両手を広げた。短いけど、体は小さいけど。奥様が避ける時間を稼ぐくらい、出来るよね!
「ダメよ、盗賊がでちゃったから」
「盗賊? 今の世の中で?!」
そんなの、歴史やファンタジーの小説くらいでしか知らない。驚いた私を抱き寄せた奥様は、膝に乗せて微笑んだ。全然心配している様子はない。だから私の緊張もすぐに解れてしまった。
はふっ、動かずにいると眠くなる。幼子だからなのか、とにかく眠かった。触れている奥様が温かい。抱き着いてお胸に頬を当てる。気持ちいいな。
「金を寄越せっ! 早くしろ、中も開けて見せろ」
怒声が響いて、びくりと肩を揺らす。アランさんがノックして「どうしますか、奥様」と尋ねた。女性が中にいるって教えちゃダメじゃない。奥様が襲われたらどうするのよ!
「構わないわ、開けておあげなさい」
「えええ?!」
思わず怪訝そうな声が漏れた。アランさんを突き飛ばしたのか、乱暴に扉を開けた男はにやりと笑う。いやらしい視線がじろじろと奥様を眺めた。自分が対象じゃなくても気持ち悪い。
「へぇ、いい女じゃねえか。来い」
奥様の腕を掴んで無理やり外へ出す。見るとアランさんは剣を突きつけられていた。ケガはないみたいだけど、この状態じゃ逆らえないか。アランさんはちらりと奥様を見て、私へ視線を移した。
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アランさんを牽制するのは3人、目の前でニヤつく体の大きいのが1人、馬車を囲んだのは……10人前後かな。ちょっと勝ち目がない。それより盗賊が出る道なら、護衛や警備の人を雇うべきなのに。
「逆らうと優しくしてやれねえな」
「従っても同じでしょ」
そりゃそうだとゲラゲラ笑う男達は、自分達の勝利を確信していた。この場で殺されるのは、私とアランさんだよね。奥様は連れて行かれて酷いことをされるか、身代金要求の人質にされる。下手すると両方かも。
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混乱する私は声も出なかった。奇声でも発して、助けを呼ぼうにも喉が動かない。震えるだけの私の背を撫でながら、奥様は溜め息を吐いた。
「アラン、食べちゃっていいわ」
「いいんですか?」
すごく嬉しそうに声を上げたアランさんが、剣を突きつける男の腕を……。なんて表現したらいいんだろう。食べた、が一番近いかな? ちゃんとこの目で見たのに、何が起きたのか理解できない。
「ぐわぁあああ」
「化け物だ!」
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左右に跳躍するアランさんの攻撃だけ、盗賊に当たった。剣は歯が立たず、弓矢も効果なし。弓を射る人を初めて見た。外国の盗賊ってレトロな武器を使うんだ。圧倒的にアランさん優位で、私の緊張感は家出したらしい。
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