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300.ドラゴンの番がいっぱい
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たくさん食べてもらって、いっぱい注いでもらって。僕はセティを求めて手を伸ばす。眠っててもわかるの。今、セティが離れてる。呼んだらすぐに手を握られ、唇を重ねられた。薄く開いた目に、美しい紫が飛び込んでくる。セティの目の色、本当に綺麗。
キスの間にお水を飲んで、セティが僕を抱っこした。一緒に横になって、朝まで一緒の約束をくれる。嬉しい、約束だからね。心の中で繰り返すとセティがキスをくれた。苦しくなるくらいまでキスをして、黒髪を撫でる手が温かい。
目を閉じて、いつの間にか眠っていた。
テントの外から音がして、ぎしっと押されたみたい。目を開くとテントの間から、お父さんが鼻先を突っ込んでた。えいっと抱き着く。
「何してるの? お父さん」
ぺちぺちと鼻先を叩いたら、僕ごと鼻を抜いた。身を起こすお父さんの鼻先は高くて、うわぁと声が漏れた。すぐにお母さんが来て、後ろから僕を掴んで下ろす。
「落としたらどうするんだい!」
「ちゃんと支えて……たぞ」
お母さんの勢いに負けて、お父さんが口の中で小さく文句を言う。お父さんは強い帝なのに、お母さんの方が強いなんて変なの。叱られるお父さんの足にしがみ付いて、お母さんを見上げた。
「叱らないで、お母さん。お父さんは僕と遊んでくれたんだよ」
たぶん。そうだよね? お父さんを振り返ると、嬉しそうに舐めてくる。あ、僕まだ顔を洗ってないのに! そう言っても気にせず顔も手足も舐められた。最後には口の中に入れて全身を舐められる。大きく開いたお父さんの口に入って、擽ったくて笑った。
「おいで、イシス」
両手を広げて呼ぶセティがふわりと浮いて、僕の腕を掴んで引っ張り出した。お父さんが舌を使って牙にぶつからないようにしたから、痛くない。お礼を言った僕を、セティが魔法で浄化した。
「我らは汚れではないぞ」
「似たようなもんだ。オレの番に別の雄の臭いなんざ、邪魔でしょうがない」
お父さんとセティ、仲がいいね。そう言ったらお母さんが大笑いした。騒がしかったからか、他のドラゴンが起きてくる。ごめんね、起こしちゃった。
「おお! イシス、俺の嫁さんだ」
黄色いドラゴンを紹介してくれるフェリクスお兄さんの後ろから、茶色いルードルフお兄さんが顔を見せる。その隣に赤いドラゴンがいた。フェリクスお兄さんと同じ赤だけど、色が少し薄い。
「僕もお嫁さんを見つけたよ、ほら美人だろう?」
「フェリクスお兄さん、よかったね。ルードルフお兄さんも、お似合いだよ」
どっちも幸せそう。お父さんにお母さんがいるみたいに、僕とセティが伴侶なのと同じ。お兄さん達も番が見つかったの。普段会えないドラゴンが集まったことで、お互いに惹かれ合う。とても素敵なことだと思うよ。
セティに抱っこされた僕がお祝いを言うと、他のドラゴンもわいわい騒ぎだした。後でセティに聞いて知ったけど、別のドラゴン達もお嫁さんやお婿さんを見つけたんだって。時々みんなで集まるのは楽しいし、いいことばかりだった。また集まりたいね。
キスの間にお水を飲んで、セティが僕を抱っこした。一緒に横になって、朝まで一緒の約束をくれる。嬉しい、約束だからね。心の中で繰り返すとセティがキスをくれた。苦しくなるくらいまでキスをして、黒髪を撫でる手が温かい。
目を閉じて、いつの間にか眠っていた。
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たぶん。そうだよね? お父さんを振り返ると、嬉しそうに舐めてくる。あ、僕まだ顔を洗ってないのに! そう言っても気にせず顔も手足も舐められた。最後には口の中に入れて全身を舐められる。大きく開いたお父さんの口に入って、擽ったくて笑った。
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「我らは汚れではないぞ」
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「おお! イシス、俺の嫁さんだ」
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