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284.秘密で尋ねてきたお客さん
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お昼を過ぎた頃、フェリクスお兄さんが遊びに来た。赤い鱗に似合うから黒いリボンにしたの。細い銀の糸が入ってて、お兄さんも喜んでくれた。角に巻いたら、自分で魔法をかける。あと渡してないのは、エルランドお兄さんとゲリュオン達だね。残ったリボンを見つめる。
「ゲリュオンは遠いから、先にエルランドかな」
明日、フェリクスお兄さんに乗せて行ってもらう。お父さん達は山を直してる途中だし、お母さんも手伝うからね。ボリスはフェリクスお兄さんと一緒に飛ぶと言ったけど、お母さんがダメだと止めた。まだ不安定だから、落ちたら危険だし。
しょんぼりしたボリスを撫でて、一緒にお昼寝したら機嫌は直ったけど。明日の朝、また泣いちゃうかも。僕はボリスのお兄ちゃんだけど、あまりしてあげられることはない。抱っこもボリスの方が大きいし、飛べるし、強いのもボリスだ。でも撫でたり、細かい仕事を手伝うのは出来る。
フェリクスお兄さんがお土産に捕まえたグリフォンを捌いて、また羽毛を回収する。ボリスと夢中になって拾った羽毛を袋に詰めて、セティが収納した。お父さんが捌いた肉を受け取り、ボリスと一緒に鍋に入れていく。今日は大きい鍋なの。僕が入ってゆだっても平気なくらいだよ。セティも一緒に入れそう。
お父さんやお母さんが嬉しそうで、どうしたのかと聞いたけど秘密なんだって。もうすぐ分かるみたい。お父さんとお母さんは時々頬をすり寄せて、何かひそひそとお話してた。僕やボリスには秘密なのかな? セティは何か気づいた顔で、でも教えてくれない。
「そうだな、鍋が煮える頃には分かるさ」
寝る前には教えてくれるみたい。大きなお鍋はまだ湯気が少なくて、時間がかかりそう。
「おう、少し離れてろ」
フェリクスお兄さんが勢いよく火を噴いた。ぶくぶくと鍋のお湯から湯気が出る。凄い! 手を叩いて喜んだら、横からお母さんが鍋に氷を入れちゃった。折角お湯が沸いたのに。
「どうしてダメなの?」
叱られてるフェリクスお兄さんが可哀想だよ。尋ねたら、大笑いしたセティに鍋の中を見せられる。覗いた中に、僕やボリスが入れた肉とセティが用意した野菜が沈んでいた。
「これが柔らかくなるまで、時間をかけて煮るんだ。だから一気に沸騰させたら、肉が硬くなるだろう?」
フェリクスお兄さんが沸かしたお湯は、お母さんが冷ました。またゆっくり煮ていくんだね。美味しくなりますように、とお願いしながら香草玉を3つも入れた。これでも足りないから、後でまた追加するの。あと、セティが仕事をくれた。大きな石の上で小麦の粉を捏ねる。
これを丸めて千切って入れるの。入れる時はボリスも手伝ってもらうけど、捏ねるのは僕とセティのお仕事になった。途中で鼻がむずむずしてくしゃみをしたら、粉が僕やセティに降ってきた。真っ白になった僕をボリスが舐めて変な顔をする。生の粉を食べたらお腹痛くなるよ。
お鍋が煮えた頃、外は真っ暗だった。エルランドお兄さんとお嫁さんが飛んで来る。そう言われて、僕はお迎えに入り口で待っていた。ボリスとセティも一緒で、心配だからとお母さんが抱っこしてくれる。丸くなったお母さんの鱗に乗って、見上げる空は星がいっぱいで綺麗だった。
「あ、見えた!」
エルランドお兄さんの鱗も綺麗だけど、お嫁さんは白いから目立つ。お母さんが僕達を連れて奥に下がった。飛び込むエルランドお兄さんが振り返り、お嫁さんを受け止める。久しぶりのお兄さんに抱き着いたら、お嫁さんが何か持ってる……卵?
「ゲリュオンは遠いから、先にエルランドかな」
明日、フェリクスお兄さんに乗せて行ってもらう。お父さん達は山を直してる途中だし、お母さんも手伝うからね。ボリスはフェリクスお兄さんと一緒に飛ぶと言ったけど、お母さんがダメだと止めた。まだ不安定だから、落ちたら危険だし。
しょんぼりしたボリスを撫でて、一緒にお昼寝したら機嫌は直ったけど。明日の朝、また泣いちゃうかも。僕はボリスのお兄ちゃんだけど、あまりしてあげられることはない。抱っこもボリスの方が大きいし、飛べるし、強いのもボリスだ。でも撫でたり、細かい仕事を手伝うのは出来る。
フェリクスお兄さんがお土産に捕まえたグリフォンを捌いて、また羽毛を回収する。ボリスと夢中になって拾った羽毛を袋に詰めて、セティが収納した。お父さんが捌いた肉を受け取り、ボリスと一緒に鍋に入れていく。今日は大きい鍋なの。僕が入ってゆだっても平気なくらいだよ。セティも一緒に入れそう。
お父さんやお母さんが嬉しそうで、どうしたのかと聞いたけど秘密なんだって。もうすぐ分かるみたい。お父さんとお母さんは時々頬をすり寄せて、何かひそひそとお話してた。僕やボリスには秘密なのかな? セティは何か気づいた顔で、でも教えてくれない。
「そうだな、鍋が煮える頃には分かるさ」
寝る前には教えてくれるみたい。大きなお鍋はまだ湯気が少なくて、時間がかかりそう。
「おう、少し離れてろ」
フェリクスお兄さんが勢いよく火を噴いた。ぶくぶくと鍋のお湯から湯気が出る。凄い! 手を叩いて喜んだら、横からお母さんが鍋に氷を入れちゃった。折角お湯が沸いたのに。
「どうしてダメなの?」
叱られてるフェリクスお兄さんが可哀想だよ。尋ねたら、大笑いしたセティに鍋の中を見せられる。覗いた中に、僕やボリスが入れた肉とセティが用意した野菜が沈んでいた。
「これが柔らかくなるまで、時間をかけて煮るんだ。だから一気に沸騰させたら、肉が硬くなるだろう?」
フェリクスお兄さんが沸かしたお湯は、お母さんが冷ました。またゆっくり煮ていくんだね。美味しくなりますように、とお願いしながら香草玉を3つも入れた。これでも足りないから、後でまた追加するの。あと、セティが仕事をくれた。大きな石の上で小麦の粉を捏ねる。
これを丸めて千切って入れるの。入れる時はボリスも手伝ってもらうけど、捏ねるのは僕とセティのお仕事になった。途中で鼻がむずむずしてくしゃみをしたら、粉が僕やセティに降ってきた。真っ白になった僕をボリスが舐めて変な顔をする。生の粉を食べたらお腹痛くなるよ。
お鍋が煮えた頃、外は真っ暗だった。エルランドお兄さんとお嫁さんが飛んで来る。そう言われて、僕はお迎えに入り口で待っていた。ボリスとセティも一緒で、心配だからとお母さんが抱っこしてくれる。丸くなったお母さんの鱗に乗って、見上げる空は星がいっぱいで綺麗だった。
「あ、見えた!」
エルランドお兄さんの鱗も綺麗だけど、お嫁さんは白いから目立つ。お母さんが僕達を連れて奥に下がった。飛び込むエルランドお兄さんが振り返り、お嫁さんを受け止める。久しぶりのお兄さんに抱き着いたら、お嫁さんが何か持ってる……卵?
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