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277.僕の弟は頑張り屋さん

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 仲良しのお呪いをしたけど、セティは僕を食べなかった。今日はお腹いっぱいなのかな? 首を傾げながらも抱っこされて眠る。セティの腕の中は一番安心できる場所だった。僕を虐めたり、叩いたりする人が来ないから。フェルも暖かいから好き。

 ぬいぐるみのフォンを抱っこして、後ろからセティが僕を抱っこする。フェルの毛皮に包まれて、凄く気持ちよかった。

 朝は早くから荷物を片付けて、入り口に向かう。フェルはここで一度お別れ。狼の群れも待ってるから、ボスのフェルは帰らなくちゃいけない。また会う約束をして見送った。時々振り返りながら森に入って見えなくなるまで、僕はセティと並んで手を振った。

 僕達がいる入り口とは反対の奥へ、お母さんが戻って行った。見ていると、僕達が金貨を引っ張り出した穴を塞いでいる。ごめんね、出しっぱなしにしちゃった。次からは気を付けるし、最後まで片付ける。ボリスは弟で、僕がお兄ちゃんだから悪いのは僕だね。

「でも金貨で遊ぶんだな」

 くすくす笑うセティだけど、怒ったりしてない。金貨で遊んだらいけないの? キラキラして綺麗だけど、僕とボリスの間でお金は使わない。お母さんも叱らなかったから、大丈夫だよね。入り口に蓋がなければ、奥の部屋で山登りしたかったけど。

「ボリスの背は無理だから、こっちへおいで」

 お母さんの背中に僕を押し上げたセティが後ろに乗り、しっかりと掴まる。魔法で固定するから落ちないんだ。前に僕が落ちた所為で、お母さんすごく悲しかったんだって。もう落ちないから安心して欲しい。

 ボリスが部屋の真ん中まで下がって、姿勢を低くして駆けてくる。勢いそのまま、出入り口から外へ飛び出した。落下する途中で魔力を使って浮力を作り、ばたばた翼を動かして高さを維持する。その姿を見ながら、お母さんが溜め息をついた。

「何度説明しても、鳥の真似ばかり。困った子だよ」

 そう言いながら、お母さんの声は笑ってる。ボリスはまだ翼を動かしていた。追いかける形でお母さんがふわりと舞い、セティが洞窟の入り口を閉めてくれた。昨日、セティがどこかへ消した岩をもう一度嵌めて、隙間がないのを確認してから飛ぶ。

 ボリスはまだたくさん飛べないから、休憩を入れることにした。前にも立ち寄った湖で、魚を獲って食べる。ボリスはまた全力で走った後、よたよたと飛び上がった。お母さん達はそのまま浮くのに、ボリスは飛び方が違うね。

 一生懸命頑張る弟に「頑張れ」って声を掛けながら、緑の鱗が光を弾くのを見つめた。ボリスは3番目のエルランドお兄さんと同じ色をしてる。もう鱗の色は変化しないみたい。

「次の休憩はなしで飛ぶよ」

 お母さんの言葉に、ボリスがぐぉおお! と大きな唸り声を上げた。無理なのかと心配になったけど、頑張る方の鳴き声だった。僕の弟は頑張り屋さんで偉い。褒めた僕の言葉に喉を鳴らしたボリスは、2番目のルードルフお兄さんの洞窟まで無事飛び終えた。

 洞窟の入り口に降りて、ぐたっと地面に横になったボリスの首に抱きついて、いっぱい撫でた。鱗が少し濡れてるけど、これは汗なのかな?
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