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273.フェルは何を捕まえるのかな
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海辺の町と違って、フェルはすぐに来た。セティの話では、フェルがいる森に飛んできたんだって。すぐにセティがいることに気づいて向かうフェルは偉いよね。
「フェル、抱っこ」
両手を開いた僕に鼻を寄せて、ぺろぺろと首や顔を舐める。可愛い、大きいのに可愛いね。赤ちゃんだったトムみたい。僕が両手でフェルを抱っこしたら、後ろからセティの腕が僕を包んだ。そのまま手がフェルを撫でる。
「朝になったら、ヴルムの洞窟へ行くぞ」
「うん! お土産、持ってきてくれた?」
「もちろんだ。フェルが狩りをしてくるから、火を熾して待つか」
薪を探す。足元に生えてる薬草も、ちょっとずつ摘んだ。3本生えてたら、1本だけ採るの。それ以上摘んだら生えて来なくなるんだよ。気をつけて摘んで、セティの持ってる籠に入れた。
「ああ、そうだ。神殿を出たからこれを掛けておけ」
思い出したみたいに、セティが首飾りを出した。金の鎖と銀の鎖、片方は鱗が通してあって、もう片方は魔術師のタグなの。お父さんやお母さんの鱗を首から下げて、僕は優しく撫でた。明日会いに行くよ、って伝える。
セティと火を焚いて、大きくて平らな石の上を洗った。水はセティが出してくれるから、僕はゴシゴシ擦る。綺麗になったら、乾かした。その間に沸いたお湯でお茶を飲む。
「ガイア達、平気?」
「あいつらは元気だし、問題ない。ちゃんとドラゴンに会いに行くと言ったし」
「僕、ご挨拶してないの」
「次でいいさ。オレの兄弟なら、イシスの兄弟みたいなもんだ」
驚いた。じゃあ、ガイアもカイルも僕の兄弟でいいの? だとしたら、ボリスも一緒だ。お兄さん達も一緒で、皆が兄弟だね。
「あ、ああ? そうなるか。それは気づかなかった」
くすくす笑うセティに頭を撫でられ、長くなった髪を櫛で梳いてもらった。セティは慣れてるのか、僕の黒髪を編んでくるんと丸くする。頭にぺたんとくっついた丸に、僕は手を触れてみた。触っても壊れない。
「引っ掛けると千切れたり痛かったりするから、編んでおくと安全だ」
髪の毛も長くなると大変なのかも。僕はいろいろ知ってるセティがいるから、大変じゃないけど。
「石が乾いたか、手伝ってくれ」
「何をするの?」
大きくて平らな石の上に、セティが白い粉を置いた。風が吹くと飛んで行っちゃいそう。山にした粉の天辺に穴を開けて、中に水を入れる。最後にぱらぱらとお塩をした。
「捏ねるぞ、手伝え」
捏ねるのは初めてだけど、セティの手を見て覚える。手のひらでぐねっと押して、裏返して戻すのを繰り返せばいいんだね。手にくっ付くけど楽しい。それにセティが新しい粉を手に付けたら、段々と丸まってきた。作った白い丸いのを、セティは半分に切る。せっかく綺麗に丸めたのに。
「千切って鍋に入れるぞ。こうだ」
口に入るくらいの大きさにして、鍋に入れる。投げると熱いお湯が飛ぶから、優しく。でも近づくと火傷して痛い。難しいけど、僕も手伝った。最後まで入れたところで、香草玉も沈める。
「あとはフェルの獲物待ちだ」
フェル、何のお肉を捕まえてくるのかな? 楽しみになりながら、煮えるお鍋を見つめた。戻ってきたら、フェルにお土産の長いリボンを巻いてあげよう。僕もリボン結び出来るんだ。
「フェル、抱っこ」
両手を開いた僕に鼻を寄せて、ぺろぺろと首や顔を舐める。可愛い、大きいのに可愛いね。赤ちゃんだったトムみたい。僕が両手でフェルを抱っこしたら、後ろからセティの腕が僕を包んだ。そのまま手がフェルを撫でる。
「朝になったら、ヴルムの洞窟へ行くぞ」
「うん! お土産、持ってきてくれた?」
「もちろんだ。フェルが狩りをしてくるから、火を熾して待つか」
薪を探す。足元に生えてる薬草も、ちょっとずつ摘んだ。3本生えてたら、1本だけ採るの。それ以上摘んだら生えて来なくなるんだよ。気をつけて摘んで、セティの持ってる籠に入れた。
「ああ、そうだ。神殿を出たからこれを掛けておけ」
思い出したみたいに、セティが首飾りを出した。金の鎖と銀の鎖、片方は鱗が通してあって、もう片方は魔術師のタグなの。お父さんやお母さんの鱗を首から下げて、僕は優しく撫でた。明日会いに行くよ、って伝える。
セティと火を焚いて、大きくて平らな石の上を洗った。水はセティが出してくれるから、僕はゴシゴシ擦る。綺麗になったら、乾かした。その間に沸いたお湯でお茶を飲む。
「ガイア達、平気?」
「あいつらは元気だし、問題ない。ちゃんとドラゴンに会いに行くと言ったし」
「僕、ご挨拶してないの」
「次でいいさ。オレの兄弟なら、イシスの兄弟みたいなもんだ」
驚いた。じゃあ、ガイアもカイルも僕の兄弟でいいの? だとしたら、ボリスも一緒だ。お兄さん達も一緒で、皆が兄弟だね。
「あ、ああ? そうなるか。それは気づかなかった」
くすくす笑うセティに頭を撫でられ、長くなった髪を櫛で梳いてもらった。セティは慣れてるのか、僕の黒髪を編んでくるんと丸くする。頭にぺたんとくっついた丸に、僕は手を触れてみた。触っても壊れない。
「引っ掛けると千切れたり痛かったりするから、編んでおくと安全だ」
髪の毛も長くなると大変なのかも。僕はいろいろ知ってるセティがいるから、大変じゃないけど。
「石が乾いたか、手伝ってくれ」
「何をするの?」
大きくて平らな石の上に、セティが白い粉を置いた。風が吹くと飛んで行っちゃいそう。山にした粉の天辺に穴を開けて、中に水を入れる。最後にぱらぱらとお塩をした。
「捏ねるぞ、手伝え」
捏ねるのは初めてだけど、セティの手を見て覚える。手のひらでぐねっと押して、裏返して戻すのを繰り返せばいいんだね。手にくっ付くけど楽しい。それにセティが新しい粉を手に付けたら、段々と丸まってきた。作った白い丸いのを、セティは半分に切る。せっかく綺麗に丸めたのに。
「千切って鍋に入れるぞ。こうだ」
口に入るくらいの大きさにして、鍋に入れる。投げると熱いお湯が飛ぶから、優しく。でも近づくと火傷して痛い。難しいけど、僕も手伝った。最後まで入れたところで、香草玉も沈める。
「あとはフェルの獲物待ちだ」
フェル、何のお肉を捕まえてくるのかな? 楽しみになりながら、煮えるお鍋を見つめた。戻ってきたら、フェルにお土産の長いリボンを巻いてあげよう。僕もリボン結び出来るんだ。
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